2023年4月17日、Micronの個人向けブランド「Crucial」から発表されていた、初のPCI Express 5.0 x4対応NVMe SSD「Crucial T700 PCIe Gen5 NVMe SSD」のパフォーマンスに関する情報が解禁となった。エンジニアリングサンプルを試用する機会を得たのでさっそく性能をテストしてみたい。

  • Crucial (Micron)のPCI Express 5.0 x4対応NVMe SSD「Crucial T700 PCIe 5.0 NVMe SSD」

    Crucial (Micron)のPCI Express 5.0 x4対応NVMe SSD「Crucial T700 PCIe Gen5 NVMe SSD」

リード最大12,400MB/秒、ライト最大11,800MB/秒、コントローラはPhison

2023年に入り、複数のメーカーから最近ではGen 5と表記されることも多いPCI Express 5.0 x4対応NVMe SSDが登場した。そこに新たに加わったのが、ここで紹介する「Crucial T700」だ。Micron製の最新232層TLC 3D NANDフラッシュメモリを採用、公称シーケンシャルリードは最大12,400MB/秒、シーケンシャルライトは11,800MB/秒とGen 4ではインタフェースの限界から出せない速度に到達している。コントローラは自社製ではなく、ほかのGen 5対応SSDと同じく「Phison PS5026-E26」を採用。そのほかスペックは下記の表にまとめた。

■スペック表
容量 1TB 2TB 4TB
フォームファクタ M.2 2280
インターフェース PCI Express 5.0 x4
プロトコル NVMe 2.0
NANDフラッシュメモリ Micron製232層3D TLC NAND
コントローラ Phison PS5026-E26
シーケンシャルリード 11,700MB/秒 12,400MB/秒
シーケンシャルライト 9,500MB/秒 11,800MB/秒
総書き込み容量(TBW) 600TB 1,200TB 2,400TB
保証期間 5年(制限付保証)
  • エンジニアリングサンプルであるためチップの確認はできなかったがキャッシュ用のDRAM搭載と見られる

  • ヒートスプレッダ搭載モデルも用意。山形の大型タイプでファンは備えていない

  • CrystalDiskInfo 8.17.14での表示結果。対応転送モードの欄でGen 5対応であることが分かる

【ベンチマークテスト】エンジニアリングサンプルだが公称に近い結果

まずは、CrystalDiskMark 8.0.4で最大性能をチェックしてみたい。用意したのは、Crucial T700の2TB版、比較対象としてGen 4対応で公称シーケンシャルリード6,600MB/s、シーケンシャルライト5,000MB/sとなるCrucial P5 Plusの1TBも加えた。Crucial T700とは容量も異なるので参考としてほしい。テスト環境は以下の通りだ。

【検証環境】
CPU Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)
マザーボード MSI MPG Z790 CARBON WIFI(Intel Z690)
メモリ Kingston FURY Beast DDR5 KF556C36BBEK2-32(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2)
ビデオカード NVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Edition
システムSSD Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラー Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源 Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OS Windows 11 Pro(22H2)

なお、Crucial T700はエンジニアリングサンプルであるためランダム書き込みの性能が最適化されていないという。製品版では性能が変わる可能性がある。

  • Crucial T700のCrystalDiskMark 8.0.4の結果

  • Crucial P5 PlusのCrystalDiskMark 8.0.4の結果

シーケンシャルリードは12,327.58MB/秒、シーケンシャルライトは11,536.38MB/秒とほぼ公称通りの性能を見せた。Gen 4の限界を突破する速度だ。ただランダムアクセスのうちQ32T1の結果はP5 Plusより低くなっていた。このあたりはエンジニアリングサンプルの影響だろう。製品版までには最適化されると見られる。

次は、実際のOffice系、クリエイティブ系、ゲーム系とさまざまなアプリの動作をシミュレートしてその処理性能を見るPCMark 10 Full System Drive Benchmarkを実行する。

  • Crucial T700のPCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果

  • Crucial P5 PlusのPCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果

Crucial T700の5,000を超えるスコアは強烈だ。P5 Plusの結果を見ても分かるが、Gen 4のSSDはハイエンドモデルでも3,000台が基本。アプリに対するレスポンスのよさが分かる結果と言える。製品版ではもっと向上が期待できるのではないだろうか。

【ベンチマークテスト】ゲーム性能、ランダムで速度が出にくい場面も?

続いて、ゲームの起動やロード、プレイしながらの録画などゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMark Storage Benchmarkを試そう。

  • Crucial T700の3DMark Storage Benchmarkの結果

  • Crucial P5 Plusの3DMark Storage Benchmarkの結果

4,000を超えるスコアを達成。同じくGen 4ではハイエンドでも3,000台が多いので、ゲーム用途においてもワンランク上の性能を持っていると言ってよい。

ちなみに、連続書き込み時の速度に関しても簡単にテストしてみた。1TB分シーケンシャルライトを続けたところ、約210GBまでは9,000MB/s前後の速度だったが、それ以降は3,500MB/s前後まで速度が落ちた。それでも、3,500MB/sは十分高速と言え、動画編集などで大容量ファイルのコピーが発生しても困ることはないだろう。

【ベンチマークテスト】サーマルスロットリング発生せず、製品版に期待できる

最後に温度をチェックしたい。CrystalDiskMark 8.0.4を3回連続実行した際の温度をHWiNFO64 Proで測定している。なお、今回Crucial T700はヒートシンクなしのモデルと使い、マザーボードのヒートシンクを利用している。また、テストはケースに組み込んでいないバラック状態で行った。

  • テストはMSI MPG Z790 CARBON WIFIのGen 5対応M.2スロットを使い、ヒートシンクもマザーボード付属のものを使っている

  • グラフ: SSD温度

Crucial T700は最大72℃まで上昇しているが、3回目でもCrystalDiskMarkのスコアに変化はなく、サーマルスロットリングの発生はなかったようだ。Gen 5対応のSSDはその速度から温度が非常に高くなると言われているが、マザーボード側もGen 5対応M.2スロットには厚みのあるヒートシンクを採用していることが多く、十分それで対応できると言える。

Gen 5の帯域を使い切るほどの速度ではないが、Gen 4のSSDを大きく上回る、速度、使用感があるのは間違いなく、Gen 5環境を持っており、“現役最速”を目指すなら注目の製品になるだろう。今回はエンジニアリングサンプルだったので、製品版登場後にSLCキャッシュの挙動も含め、改めてテストしてみたいと思う、