子役の時から同じ事務所に所属し、オーディションでは「役を取り合っていた」という俳優の北村匠海と中川大志がW主演を務めることで話題となっている、映画『スクロール』(2月3日公開)。学生時代に友だちだった<僕>(北村)とユウスケ(中川)のもとに、友人の森が自殺したという報せが届いたことから、2人はそれぞれ“生きること・愛すること”を見つめ直すことになる。

<僕>、ユウスケ、そして<私>(古川琴音)、菜穂(松岡茉優)といった4人の物語が並行し、交錯し合う同作は、北村・中川それぞれ主演の映画を撮っているようだったという。今回は2人にインタビューし、小学生の時の思い出から、改めて共演して感じたことなど話を聞いた。

  • 左から北村匠海、中川大志 撮影:宮田浩史

    左から北村匠海、中川大志 撮影:宮田浩史

■オシャレなシティボーイたちだった

――小学生の時から同じ事務所、オーディションで役を取り合ったこともあったというお二人ですが、その頃のことは記憶にあるんですか?

中川:けっこう覚えてますよ。レッスンの帰りによく一緒に行ったファミレスとか……もう、なくなっちゃいましたけど。

北村:なくなっちゃったね。

中川:またこれが、ませた小学生だったんです(笑)

北村:めっちゃませてました。本当に(笑)

中川:僕は後から入ったんですけど、先に事務所にいた匠海とか、その周りの事務所のメンバーとか、めちゃくちゃオシャレなシティボーイたちで……。ヒップホップ、ストリートな感じで、僕は「オシャレだな」と思って、くっついて真似してました。みんな、もうチェーンジャラジャラ下げてました(笑)

北村:キャップを斜めにかぶって、大きいTシャツを着て、ふっといチノパンのかかとをすりながら歩いて、みたいな。

中川:俺はもう田舎の小学生だったので、真似して買いに行ったもん、原宿まで! 同じような服を買いに行ったもん。ファッションリーダーですよ、北村匠海は!

――そこからの今W主演ということは、かなり感慨深いですね。

中川:そうなんです。もう25〜6歳になるってことなので、すごいよね。

北村:お互い何に染まるわけでもなく、変わらず生きて来たなって感じがする。あんまり共演がない分、思い出が飛び飛びだけど。小中学生の頃があって、高校生ぐらいの時にCMがあって、20歳ぐらいで『砕け散るところを見せてあげる』という映画をやって、5年周期ぐらいで共演していて、節々の大志の印象は変わってない。

中川:匠海とは付き合いも長いから変わりそうなものですけど、僕も匠海は全然変わっていないイメージです。

北村:お互い、変わらなくてよかった(笑)

――変わらないけどパワーアップしたなって思うようなところは?

中川:お互いに色んな現場を経験してきて、主演もやらせていただくようになったので、現場での立ち振る舞い方や、スタッフさんとの関わり方も変わってきたと思います。

北村:今回の『スクロール』は僕と大志がそれぞれ主演している世界が2つあって、スタッフさん的には違う現場みたいだったんだって。

中川:ああ、たしかに。

北村:主演でいるときの立ち振る舞いって、たぶん経験則でしか出せないものだと思うので、その違いは面白かったと思います。それがまた合わさると、不思議と2人の空間にはなるんですよね。大志とやっている芝居が1番自然というか、1番芝居をしてない感覚に近かった。大志とのシーンは、それまで撮っていた『スクロール』の続きなんだけど、また全然違う現場っぽい感覚ではあったかもしれないです。

中川:なんだが、照れくささはありましたよ(笑)。今、思い返しちゃった。

■バトンを持って走っている世代

――実際、役者として改めて互いにどのようなことを感じましたか?

北村:大志は言葉に芯がある役者だなと常々思っていて。意味がちゃんと伝わる、クリアな芝居で、大志自身の芯が通っている感じが伝わってくるのが「強いな」と思いました。僕はどちらかというと、かなりぼんやりしてるから。役者として同じ熱量を持ってるけど、タイプは本当に違うというのを、久々に一緒にお芝居して感じました。映画の中でも、2人の役が違うようで似ているという感覚と同じで、向いている方向も炎の大きさも一緒だけど、炎の色が全然違うという感覚はありましたね。小学校から仲がいいのに共演がなくて、同じ役を取り合うことが多かったという理由も、感じたかもしれない。ベクトルは違うけど同じような感覚で同じような感情を持って仕事してきたけど、歩んできた道が違うから得てきた色も違う、みたいなことは感じました。

中川:僕も昔から見ていて、匠海は映画に愛されている人だなと思っていました。映画の中の北村匠海は、やっぱりすごい。今回の「僕」という役も抽象的で、どこかつかみどころのないキャラクターで、でも映画って、すごく細かいところまで抽出するんです。改めてスクリーンで見ると、一緒に隣で芝居をしていても気づかなかったような微粒子レベルのものを放っていて、それが捉えられている。匠海はそういうものを表現できるから、「わあ、こんなところまで」と思わされました。

――今作ではハラスメントなどの社会的な問題にも触れられたりもしています。最近取材をしていると、いろんな俳優さんや映画関係者の方が「業界をよくしていきたい」ということも話されていますが、お二人はどのようなことを考えていますか?

北村:僕の世代でも、今の日本のエンターテインメント業界について考えている人は多いです。それは先輩からもらったバトンだとも思うし、まだまだ下の世代もいるから、僕らがやることってなんだろう、みたいな話もしています。この映画の中でもまさしくハラスメントが出てくるんですけど、でもたどっていくと、きっとハラスメントしてる側にも自分が受けてきた過去があったりして。僕らは多分、今、バトンを持って走っている。いろいろ試行錯誤して、それが叶ったり叶わなかったり、失敗したり成功したりする年代なのかなと思っています。

中川:いろんなことが転換期だよね。

北村:変わっていってる。

中川:肌で感じることもあるし、ニュースで見て感じることもある。撮影現場でも、最近は自分と同い年とか、それより下のスタッフの方とかがいたりして、改めて感じるのは理由を考えずに「これが当たり前だから」とやってしまうのは、怖いことなんじゃないかな、と。「やること」が全てになってしまっていることも多いけど、1回冷静に立ち止まって「本当に必要なのかな?」と、みんながそれぞれ考えることが大事なのだと思います。

北村:たしかに大志と話した記憶がある。

中川:僕たち役者は、手に持ってるものや、着てる服、靴にしても、「なんで今これを持っているんだろう」と意味を求めながら演じているんです。何事もそうやって考えるのが、重要なことだという気がしています。

■北村匠海
1997年11月3日生まれ、東京都出身。2008年に映画デビュー、2011年にバンド「DISH//」を結成し、メインボーカルとギターを担当する。『君の膵臓をたべたい』(17年)で第41回日本アカデミー賞新人俳優賞を始め数々の新人賞を受賞し、若手俳優の中で傑出した存在となる。主な映画出演作は、『ディストラクション・ベイビーズ』(16年)、『勝手にふるえてろ』(17年)、『OVER DRIVE』『春待つ僕ら』『スマホを落としただけなのに』(18)年、『十二人の死にたい子どもたち』『君は月夜に光り輝く』(19年)、『思い、思われ、ふり、ふられ』『さくら』『アンダードッグ』(20年)、『東京リベンジャーズ』『明け方の若者たち』(21年)、『とんび』(22年)など。公開待機作に映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』(4月21日公開)、『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』(6月30日公開)がある。

■中川大志
1998年6月14日生まれ、東京都出身。2010年に映画デビュー、『坂道のアポロン』『覚悟はいいかそこの女子。』(18)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。2011年のTVドラマ『家政婦のミタ』で注目され、NHK連続テレビ小説『なつぞら』(19年)で広く知られる。『GTO』(12年)、『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(18年)、『G線上のあなたと私』(19)などで人気を獲得。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22年)に出演。主な映画出演作に『四月は君の嘘』(16)、『きょうのキラ君』『ReLIFE リライフ』(17年)、『虹色デイズ』(18年)、『映画 賭ケグルイ』(19年)、『砕け散るところを見せてあげる』『FUNNY BUNNY』『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』『犬部!』(21年)、『ブラックナイトパレード』(22年)がある。