今回の本題ではないのだが、エクスプローラーの広告問題に触れておきたい。とあるユーザーがTwitterへ、アドレスバー下部にMicrosoft製品の広告が表示されたと投稿した。Microsoftは即座に「誤りだった」とミスを認めたものの、同種の取り組みは初めてではない。2016年~2017年にはエクスプローラーにOneDriveの利用をうながす広告を表示し、消費者から多くの非難を浴びた。
これらはMicrosoftの自社機能の告知であり、利便性向上を目的としているため、広告と判断するのは早計という見方もある。ただ、日常的に使用するエクスプローラーに対する不要な情報提示は、ユーザーの利益を損なう。前回の記事で高く評したように、エクスプローラーの利便性向上に取り組む一方で、ユーザーを不快にさせるような機能を盛り込むのであれば、エクスプローラーの本格的なボイコットにつながりかねない。代替アプリの開発も加速するだろう。筆者はWindows 9x時代のように、Explorer.exe以外のシェルを選択する判断も正しいと考えている。上記の「ミス」については、Microsoftには真摯に反省してもらいたいものだ。
さて、気分を変えて本題。Windows 11 Insider Previewの「March 2022 Bug Bash」だ。Windows Insider Program参加者にはおなじみだが、Microsoftは定期的にバグを洗い出して報告を求めるイベントを開催してきた。Windows 11 バージョン22H2のリリースを控え、Windows 11 Insider Previewで実装・変更した機能のバグ洗い出しをプログラム参加者に求めている。今回は久しぶりに日本語による告知も行われた。なお、実施期間は日本時間の3月23日までだ。
詳細は「Japan Windows Blog」をご覧いただきたいが、筆者が注目しているのは音声入力である。近年のMicrosoftはAzure Cognitive Servicesの拡充に伴い、各製品に音声入力機能を展開してきた。
クラウドサービスのAzure Video Analyzerや、Microsoft 365 Appsのディクテーション、Web版Microsoft Wordのトランスクリプトもその一つ。同種の機能をWindows 11の標準機能として取り込み、文字入力の負担を軽減させるのは正しい取り組みだ。
文章認識力は録音状況やマイク品質など多くの要素に左右されるとはいえ、日ごろ多くのオンライン発表会やウェビナーに参加していると、一連の機能が業務負担の軽減につながったと強く感じている。音声入力を出社時のオフィスで利用するのは、周りに対する迷惑を考える必要もあるが、自宅からのリモートワークであれば十分に有用だ。現行のWindows 11 バージョン21H2でも利用できるので、一度試してみてはいかがだろうか。
また、MS-IME周りも、かゆいところに手が届く改良が多く加わっている(ただし抜本的な改善とは言えない)。以前、日本マイクロソフトの開発部門であるマイクロソフトディベロップメントに提案した電子辞書の実装は行われず、必要最小限の機能改善にとどまった印象を受ける。ユーザーによってIMEに求める機能に差はあるものの、入力インサイトも日本語に未対応の段階では、文章作成を仕事とする筆者はATOKとの併用が続きそうだ。
いずれにせよ、Windows 11 バージョン22H2は2022年の夏から秋に登場する予定だ。使い勝手の向上とともに、エクスプローラーやOS自身の品質アップが行われる。手元に複数のPCがあれば、サブPCをWindows Insider Programに参加させて、Windows 11 Insider Programのバグ洗い出しに参加してほしい。