YouTube・サブスク動画配信サービスの台頭、視聴率指標の多様化、見逃し配信の定着、同時配信の開始、コロナ禍での制作体制――テレビを取り巻く環境が大きく変化する中、最前線にいる業界の“中の人”が語り合う連載【令和テレビ談義】

第5弾は、テレビ朝日『ミュージックステーション』プロデューサーの利根川広毅氏、フジテレビ『FNS歌謡祭』『MUSIC FAIR』演出・プロデューサーの浜崎綾氏が登場。『新しいカギ』などを手がける木月洋介氏(フジテレビ)をモデレーターに、「音楽番組」のテレビ談義を、全4回シリーズでお届けする。

最終回は、番組スタッフの“音楽愛”や、サブスク・YouTube・TikTokと新たな情報発信ツールが続々と登場する中における「音楽番組」の役割について。そして、きょう24日(17:00~)に生放送される『ミュージックステーション ウルトラ SUPER LIVE 2021』の見どころなども聞いた――。

  • 『ミュージックステーション』(上段)と『MUSIC FAIR』 (C)テレビ朝日 (C)フジテレビ

    『ミュージックステーション』(上段)と『MUSIC FAIR』(C)テレビ朝日 (C)フジテレビ

■ネットでヒットしかけた曲をテレビが増幅

木月:前回話題になった音楽番組が一斉に終わったというは、世帯視聴率が獲りにくかったという背景があったと思うんですけど、今、視聴率の指標が変わってきた(※)じゃないですか。それでTBSさんも『CDTV ライブ! ライブ!』を始めたというのもありますし、この流れを前向きに捉えている部分はありますか?

(※)…フジテレビでは13~49歳男女の「キー特性」を重点指標の1つに設定

浜崎:世帯視聴率を求められていた時期は、例えばAwesome City Clubさんとか川崎鷹也さんのようなTikTokからヒットしたとか、若者の間で流行ってるアーティストの名前を挙げても「年配の人が見たら誰?ってなっちゃうよ」みたいな会議がたぶん各局で行われてたと思うんですよね。でも、今はそういう人たちこそ出していこうよという流れになってるから、作り手としてもアーティストとしても前よりはとてもムードは良いですね。でも、これがバブルかもしれないし、少し冷静に考えないとまた2014年前後のようにバタバタ終わっていくことがあるかもしれないので、そんなに楽観はできないと思ってます。

木月:この何年かはヒット曲が増えたような気がするんですが、音楽番組の面積が増えた影響もあるんでしょうか?

利根川:サブスクが一般的になって、CDを買わなくなった人たちがもう1回音楽を聴くようになったりとか、音楽の聴かれ方が変わってネットからヒットするということで出し口が増えたということかなと思いますね。音楽番組が増えたのは、その二次的な要素としてはあるかもしれないですけど。

木月:発端はネットでも、テレビで紹介することで広い世代に届くという効果があるのかなと思いまして。昔、ラジオや有線から出たヒット曲をテレビで紹介することで広がったことがあったように。

浜崎:ヒットしているムードを作り出せるというのはあるかもしれないですね。

利根川:それはあるかもしれないですね。昔はテレビが情報源で本当に源の上流だったのが、今は中流、下流の役割をすることも増えて、ネットなどのいろんな情報源からヒットしかけた曲をテレビがいいタイミングで紹介するとそこで増幅するという感じなのかな、というのはありますよね。

■カメラ・地デジ化・LEDビジョン…技術面の進化

――音楽番組の進化というのは、どんなところがあるでしょうか?

利根川:技術的な進化はものすごくありますね。カメラで言うと、昔はステディカム(=体に装着して移動の際もブレを抑えるカメラ)にびっくりしてたのに、今やワイヤレスもあるし、小型化もすごいし、照明機材も色の出方が全然変わりましたから。僕は最初画面サイズが4:3でしたから、それが地デジになって16:9になったときも歌の表現が相当変わりました。

木月:何が一番変わりましたか?

利根川:単純に横に長いので、フレーミングのパターンが増えますよね。例えば、人間はもちろん縦長なので横長の画面で撮ると、余白と相まってすごくおしゃれに映るんです。

浜崎:アップの人間を横にスライドさせていく幅が多くなるし、どこに顔を置くかというパターンが増えますよね。

利根川:LEDビジョンの進化もすごいですけど、日本は遅れてるのかなと思います。韓国やアメリカはもっときれいなビジョンを安価で多く使ったりしてますからね。

木月:そうなんですね。