渡辺明棋王への挑戦権を争う第47期棋王戦(主催・共同通信社)の挑戦者決定戦第1局、永瀬拓矢王座―郷田真隆九段戦が12月21日に行われました。結果は114手で永瀬王座が勝ち、渡辺棋王への挑戦権を獲得しました。

本局は振り駒の結果、郷田九段の先手番となって相居飛車に進みます。オーソドックスな矢倉からさらには穴熊に組み替えて堅陣で玉を守る郷田九段と、中住まいから盤面の左右でバランスの良い陣形を作った永瀬王座、お互いの陣形の対比が序盤の注目点でした。

■トリッキーな手順で優位を築く

中盤、△8六歩▲同歩と突き捨ててから△3五歩▲同歩△同角とこちらで歩交換をした永瀬王座の動きが機敏でした。次に△3六歩を打たれてはまずいので▲3六歩と受けますが、△4四角と引かれてみると△8五歩▲同歩△同桂の攻め筋が生じています。▲8八銀と桂馬の当たりを先にかわして、以下△8六飛▲8七歩△8一飛▲7七銀右と進みますが、ここで△3四歩と打ったのが面白い順でした。自ら交換した歩を打つのでは手損のようですが、一連の順で後手は8筋の歩交換に成功しています。これは次の△9六歩▲同歩△9七歩▲同銀△8五桂の攻め筋を用意したものです。本譜もその端攻めが実現して、後手が優位に立ちました。

■永瀬王座が渡辺棋王へのリベンジマッチに臨む

以下は永瀬王座が的確に先手の穴熊を崩していきます。終盤で△7七角成と切り、▲同桂に△7八金と打ったのがトドメになりました。先手玉は風前の灯火なのに対し、後手玉は有効な王手がかからない形です。以下は郷田九段の粘りを振り切った永瀬王座が、最後は先手玉を即詰みに切って落としました。

永瀬王座の棋王挑戦は第43期以来、2度目となります。最初の挑戦でも相手は渡辺棋王でした。局後の囲み取材では「前回のスコアは2-3ではあったんですが、かなり実力差がある内容と思いましたので、今回は少しでもその差を縮められるようにしたいなと思います」と語っています。来年の2月から始まる五番勝負の行方は果たしてどうなるでしょうか。注目です。

相崎修司(将棋情報局)

渡辺棋王への挑戦を決めた永瀬拓矢王座(写真は第69期王座戦第4局のもの 提供:日本将棋連盟)
渡辺棋王への挑戦を決めた永瀬拓矢王座(写真は第69期王座戦第4局のもの 提供:日本将棋連盟)