Dynabookの「dynabook V4/U(P1V4UPBB)」は、13.3型液晶ディスプレイが360°開閉するコンバーチブル型2in1モバイルPC「dynabook V」シリーズの新モデルだ。コンバーチブル型2in1ながら1kgを切る軽さや、公称約24時間という長いバッテリー駆動時間を実現するなど、意欲的な仕様が大きな特徴だ。
dynabook Vシリーズには従来モデルとして、CPUにIntel Core i7-1165G7を搭載した「dynabook V8」、Intel Core i5-1135G7を搭載した「dynabook V6」が存在するが、今回のdynabook V4/UはIntel Core i3-1115G4ということでラインナップが拡充された。このdynabook V4/Uをじっくり見ていきたいと思う。2021年12月上旬時点の実勢価格は178,000円前後だ。
2in1なのに軽くて頑丈!
dynabook Vシリーズは5通りの使い方ができる「5in1」と紹介されているが、基本的にはディスプレイが360°開閉するコンバーチブル型2in1モバイルノートPCだ。クラムシェル、テント、スタンド、タブレットという4通りの形状で利用でき、そこにペンを使ったペン入力スタイルを加えて5in1とされている。
デザインはコンバーチブル型2in1 PCとしてオーソドックスだが、天板のdynabookロゴとヒンジ付近のメタリックレッドの塗装が目をひく。とはいえ、ゲーミングPCのような派手な印象ではなく、ほどよい遊び心と感じるため、ビジネスシーンでも浮くことはないはずだ。
本体を手にすると軽さを強く感じる。一般的にコンバーチブル型2in1は、ディスプレイの360°開閉機構を実現するためにどうしても重量が増えるものだが、dynabook Vシリーズは重さ約979gと1kg切りを実現。13.3型の本格モバイルPCとしても十分に活躍できる。サイズも303.9×197.4×17.9mmと十分にコンパクトなので、カバンへの収納性もまったく問題ない。
合わせて、優れた堅牢性を確保している点も見逃せない。ボディ素材にはマグネシウム合金を採用し、内部にリブを加えたり、天板・キーボード面・底面のそれぞれに最適な加工法を用いたりと、軽さと強度を高レベルで両立。これによって、落下、振動、衝撃などさまざまな強度テストをクリアするだけでなく、アメリカ国防総省が制定する「MIL規格(MIL-STD-810G)」に準拠した9種類の耐久テストもクリアしているという。
実際に、ボディを強めにひねったりしてもびくともしない印象がしっかり手に伝わってくる。このような軽さと堅牢性を高いレベルで両立している点は、毎日のようにPCを持ち歩くユーザーにとって大きな魅力となるはずだ。
dynabook V4/U P1V4UPBBの主なスペック
OS:Windows 11 Home 64bit CPU:Intel Core i3-1115G4 メモリ:8GB(LPDDR4X-4266) ストレージ:256GB PCIe SSD ディスプレイ:13.3型IGZO液晶、1920×1,080ドット(フルHD)、ノングレア タッチ、ペン:10点マルチタッチ、アクティブ静電結合方式ペン Webカメラ:約92万画素フロントカメラ、約800万画素リアカメラ 無線機能:Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.2 生体認証:Windows Hello対応顔認証 本体サイズ・重さ:約幅303.9×奥行き197.4×高さ17.9mm・約979g
基本スペックは上記の通り。今回の試用機はCPUに2コア4スレッドのCore i3-1115G4を搭載するエントリーモデルだったが、上位モデルでは Core i5-1135G7やCore i7-1165G7を採用している。エントリーモデルとはいえ、メモリは8GB、内蔵ストレージは256GBのSSDと、必要十分なスペックといってよいだろう。バッテリー駆動時間が公称約24時間と長いのもdynabook Vシリーズの大きな特徴だ。このあたりは後ほどベンチマークテストで検証する。
高色純度IGZO液晶は発色に優れ、ペンも快適に利用できる
13.3型の液晶ディスプレイはフルHD(1,920×1,080ドット)で、このクラスの2in1 PCとしては標準的だ。ただ、dynabook Vシリーズはパネルに高色純度のIGZO液晶を採用している。実際に発色は非常に鮮やかで、写真や動画なども色をしっかり表現できる印象。写真のレタッチや動画編集といった作業も快適にこなせるだろう。
ディスプレイ表面は非光沢(ノングレア)処理が施されており、外光の映り込みは気にならない。文字入力が多い一般ビジネスシーンでも快適に利用できる。
ところで、コンバーチブル型2in1はディスプレイが360°開閉することで多彩な形状で使える反面、ヒンジのトルクが固かったり、ディスプレイのぐらつきが大きくキーボード入力時にディスプレイがグラグラ揺れたりといった問題を抱える場合もある。今回のdynabook V4/Uは適度なトルクでスムーズにディスプレイを開閉でき、任意の角度でしっかり止まり、ぐらつきはほとんどない。どういった形状でも安定して利用できる点は大きな利点と感じた。
ディスプレイには10点マルチタッチ対応のタッチ機能を内蔵するとともに、ペン入力にも対応しており、製品にはペンが標準で付属している。このペンはワコム製のアクティブ静電結合方式で、4,096段階の筆圧検知に対応し、非常になめらかな入力が可能だ。実際に試してみても、ペン先の動きにしっかり入力と画面描画が追従してくれる。ペンを本体に収納できるとなお良かったが、イラストや図版要素を描くのはもちろん、デジタル文書への署名や修正指示を書き込むといったビジネスシーンでも便利だ。
標準的な仕様のアイソレーションキーボードを搭載
キーボードは、アイソレーションタイプの日本語キーボードだ。主要キーのキーピッチは約19mmフルピッチを確保。ストロークは1.5mmと、薄型のモバイルノートPCとして標準的だ。ただ、Enterキー付近の一部キーはややピッチが狭くなっている。
これはキーボード面の強度を確保するために本体側面ギリギリまでキーを配置していないことと、ディスプレイの左右ベゼル幅が狭められているため本体の横幅が短いことが影響しているのだろう。とはいえタッチタイプを阻害するほどではなく、大きな不満はない。
キータッチは、柔らかすぎず固すぎない適度な固さだが、クリック感はやや弱め。ストロークの深さもあって、打鍵感は十分に満足できるものだった。また、赤色のキーボードバックライトが特徴的で、暗い場所でのタイピングもスムーズだ。
ポインティングデバイスはクリックボタン一体型のタッチパッド。パームレスト部に合わせて十分なサイズを確保しつつ、キーボードのホームポジションを中心として配置しているため、扱いやすい。
インカメラとアウトカメラの2系統のカメラを搭載
インタフェース類は、左側面にThunderbolt 4(USB Type-C)×2、HDMI出力、オーディオジャックを、右側面にmicroSDカードスロット、USB 3.1 Gen1準拠USB Type-Aを備える。ビジネスシーンでの利用を考えると、できれば有線LANも用意してもらいたかったように思うが、必要十分なポートが用意されているため、拡張性で問題となることはないだろう。
カメラは、ディスプレイ上部とキーボード上部の2カ所に搭載。ディスプレイ上部はインカメラとしてリモート会議などで利用する。キーボード上部のカメラはタブレット形状で利用する場合のアウトカメラだ。画素数はインカメラが約92万画素、アウトカメラが約800万画素となる。
生体認証機能は、インカメラがWindows Hello対応の顔認証カメラとして機能。指紋認証センサーは非搭載だが、顔認証によってセキュリティ性と利便性を両立している。
付属のACアダプタは出力65Wで、本体のThunderbolt 4ポート(USB Type-C)に接続して使う。Thunderbolt 4(USB Type-C)はいずれもUSB PD(Power Delivery)対応で、付属ACアダプタはもちろん、汎用のUSB PD対応ACアダプタを利用した給電と、内蔵バッテリーの充電が可能だ。
Core i3ながらパフォーマンスに不安なし
では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。まずはPCの総合的なパフォーマンスを計測する「PCMark 10」からだ。
結果を見ると、エントリーモデルながらかなりの高スコアが得られている。第10世代Core i7を搭載するPCとほとんど遜色ないレベルで、Core i3とはいえ第11世代Coreプロセッサの高い処理能力が伝わってくる。ラインナップ上ではエントリーモデルだが、上位クラスと比べても処理が重いと感じる場面は少ないはずだ。
続いて、3D描画能力を計測する「3DMark」の結果だが、こちらもかなり高いスコアが得られている。これも、第11世代Coreプロセッサの内蔵グラフィックス機能のパフォーマンスが優れるためだ。グラフィックス系のアプリも問題なく使えるだろう。
内蔵ストレージの速度はCrystaDiskMarkで計測。PCIe SSDとして特に高速なわけではないが、必要十分のスピードだ。SATA接続のSSDと比較しても圧倒的に高速。これだけの速度が発揮されるなら、OSやアプリの高速起動に加えて、大容量のデータコピーも高速だ。
最後にバッテリー駆動時間を。PCMark 10に用意されているバッテリーテスト「PCMark 10 Battery Profile」の「Modern Office」で計測してみた。テスト時の設定は、ディスプレイのバックライト輝度が50%、キーボードバックライトはオフだ。
結果は12時間27分と、なかなかの長時間を記録した。dynabook Vシリーズの公称値が約24時間と長いため、12時間少々というのは短く感じるかもしれないが、公称のバッテリー駆動時間は消費電力を極力抑えた状態での数字だ。実際の利用を想定したテストで12時間を超えたので、長時間駆動が可能なことは間違いないだろう。おそらく1日の外出であれば、電源を確保しなくてもバリバリと作業できるはずだ。
幅広い用途に柔軟に対応できる、魅力的な2in1 PC
dynabook V4/Uをじっくり触ってみて、見た目がオーソドックスな2in1 PCながら、触るほどに使いやすさが伝わってきた。確かに、目立つ特徴がないのも事実だが、細かな部分までしっかり作り込まれて、形状を変えても常に快適に利用できるという点は実感できた。これはビジネスシーンでの使いやすさとして重要なポイントであり、満足できる製品といってよい。2in1仕様のため、デスクワークはもちろん、ペンを活用した入力作業、外出時の作業など、幅広い用途へ柔軟に対応できる点も大きな魅力となる。
実勢価格は178,000円前後というのはやや高価だが、しっかりコストをかけて設計していることもあるだろう。スペックと作りの良さに加えて、使い勝手やペンが標準で付属していることなどを考えると、納得できる価格でもある。dynabook V4/U(を含めたdynabook Vシリーズ全般)は、快適に作業をこなせる2in1ビジネスモバイルPCとして自信を持っておすすめしたい。