ボーズが約4年ぶりにQuietComfortシリーズの新しいノイズキャンセリング機能搭載ワイヤレスヘッドホン「QuietComfort 45」(39,600円)を発売します。従来の「QuietComfort 35 II」や「Bose Noise Cancelling Headphones 700」と比べながら、新製品のファーストインプレッションをお伝えします。
銘シリーズ「QuietComfort」に久々のヘッドホン新登場
2000年代初頭にボーズが発売したQuietComfortシリーズは、その後20年以上にわたり進化を重ねてきました。パワフルなサウンド、安定した消音効果、そして心地よい操作性と装着感が多くのユーザーに愛され、今では世界で最も広く普及するノイズキャンセリング(NC)機能付きヘッドホンのひとつになりました。
同シリーズのワイヤレスヘッドホンは2017年秋発売の「QuietComfort 35 II」(QC35 II)以来。日本では2019年夏に発売された「Bose Noise Cancelling Headphones 700」(NCH700)を間に挟み、久しぶりにQuietComfort 45(QC45)が登場します。なお、QuietComfortの名前を冠するボーズの現行製品には、完全ワイヤレスイヤホン「QuietComfort Earbuds」(QC Earbuds)もあります。
QC45はどこが変わった? QC35 IIと比較する
QC45の外観は、QC35 IIから大きく変わってはいません。マット仕上げのブラックとホワイトスモークの2色展開。細部までチェックするとマイクの位置は少し変わりました。ヘッドバンド内側の生地はベロア調からつるっとした合皮になっています。イヤーカップ側面のブランドロゴは立体的なレリーフからプリントに変わってしまったことが少し残念です。NFCによるワンタッチペアリング機能も省略されました。
QC45はUSB-Cケーブルによるバッテリー充電に対応しました(QC35 IIはmicroUSB)。15分間の充電で連続約3時間使えるだけのスピードチャージにも対応します。
スマホとのペアリングや本体の機能設定に使う専用モバイルアプリは、従来の「Bose Connect」から、NCH700やQC Earbudsなど新しいボーズ製品と共通の「Bose Music」に変わりました。
ノイキャン効果&サウンドを聴き比べる
QC45をGoogle Pixel 5a (5G)に接続して、街に出かけて実力をチェックしました。
NC機能をオンにすると、カフェのBGMや隣で話す人の声、電車の走行音が一様にすっと消えます。コンテンツ再生を始めると、白いキャンバスのような静寂の上に、音楽や映画の色鮮やかで広がり豊かなサウンドがダイナミックな情景を描きます。
従来のQC35 IIは、アプリからNCの効果を高・低の2段階から選べる仕様でした。QC45にはその機能がなくなった代わりに、外音取り込み機能が新たに付きました。アプリ画面、もしくはイヤーカップ左側のボタンを押して、NCモード「Quiet」、または外音取り込みモード「Aware」が選べます。
Awareを選ぶと、カフェの店内BGMや屋外の環境音がヘッドホンで再生するサウンドと自然にミックスされて聞こえてきます。外音取り込みの明瞭度はNCH700とほぼ同レベルだと思います。
サウンドは力強く柔らかい中音域が印象的。膨らみすぎないタイトで安定した低音再生が音楽の緊張感を高めます。QC35 IIに比べると、QC45の方が音場の明瞭度と広がりが向上し、音像の定位が鮮やかさを増していることがよくわかります。
BluetoothコーデックはNCH700と同じSBC/AACまでになりますが、QuietComfortシリーズとして練り上げてきたサウンドはとても完成度が高く、きめ細かくスムーズにつながる音楽の一体感に不足を感じません。
QC45は、QC35 IIよりもボーカルやピアノなどメロディの輪郭をより鮮やかに描く傾向にあります。中高域のエネルギーが充実して、エレキギターのカッティング、ドラムスのスネアやハイハットが刻むリズムの粒立ちにも華やかさがあります。ただ、低音のアタックの力強さと解像度の高さは、NCH700の方が数枚上手です。
なお、NCH700のNC効果は、アプリ画面で外音取り込みモードを含む11段階から選べます。最大の消音効果に設定すると、QC45よりもさらに静かなリスニング環境が得られるように感じました。
快適な操作性・高いポータビリティを継承
QC45はイヤーカップ側面に配置するボタンにより、ペアリングしたスマホの音楽再生やハンズフリー通話を操作できます。ボタンの形状がゆるやかに丸みを帯びて押しやすくなりました。
ペアリングしたスマホの音声アシスタントの呼び出しは、右側イヤーカップのマルチファンクションボタンで行います。左に配置されているボタンは、Quiet/Awareモードの切り替えと、ハンズフリー通話時のマイクミュート操作に使います。QC35 IIとNCH700が搭載するGoogleアシスタント/Amazon Alexaとの連携機能は、QC45では省略されています。
NCヘッドホンを飛行機内に持ち込んで使う人からは、ヘッドバンドとイヤーカップの接続部を折り曲げて畳めるQC35 IIの方が、NCH700よりもコンパクトにできるので気に入っているという声も聞きます。QC45もQC35 IIのフォルダブルデザインを継承しています。ケースには有線接続用のケーブルやUSB-Cケーブル、航空機用変換アダプターなどを収納できるポケットもあって、とても機能的です。
メガネユーザーにやさしい着け心地。スタミナも十分
サウンドを再生しないまま一定時間が経つと電源を自動オフにする機能もあります。待機時間はアプリから5分〜3時間の間で一定の間隔を刻んで調整可能です。
バッテリーのスタミナは満充電の状態から約24時間を確保。15分の充電で3時間分のバッテリー容量が確保され、2時間で満充電になります。最大連続再生時間がQC35 II、NCH700の20時間より長いことにも要注目。有線接続であれば、NCオンの状態でも約40時間の連続再生が可能です。
筆者は普段の生活に眼鏡が欠かせないので、眼鏡のテンプル(つる)に触れるヘッドホンのイヤーパッドが柔らかく、圧迫感の少ないボーズのQCシリーズが重宝します。QC45もまた、メガネユーザーにやさしい着け心地のヘッドホンです。長時間再生に対応するタフなバッテリー性能と相まって、ビデオ会議のパートナーとしてQC45を活用する機会が増えそうです。
QC45とNCH700の間には実売で7,000円ほどの価格差があります(NCH700は実売46,750円前後)。その分、NCH700はNCの強度調整やタッチセンサーからのSpotifyアプリによる音楽再生の一発呼び出しなど、上位のプレミアムヘッドホンとして使える先進機能を豊富にそろえています。
シンプルに「ボーズのノイズキャンセリングヘッドホン」が楽しめるQC45との間に明快なすみ分けができ、互いを盛り立てる関係のヘッドホンになりそうです。