アメリカのスピーカーブランド・Sonos(ソノス)が2021年春に発表した軽量・コンパクトなポータブルワイヤレススピーカー「Sonos Roam(ソノス ローム)」が日本に上陸します。発売前に実機を試すことができたので、使い勝手やサウンドをレポートします。

  • IP67の防塵・防水仕様でアウトドア対応も実現したSonosのポータブルワイヤレススピーカー「Roam」

Sonos初、500mlボトルサイズの小型ポータブルスピーカー

Sonos Roam(以下、Roam)は、無線LANとBluetoothによるワイヤレス接続機能とバッテリーを搭載したポータブルスピーカーです。本体はIP67相当の防塵・防水仕様なので、屋内・屋外を問わずスピーカーが水に濡れそうな環境でも気兼ねなく使えます。8月30日に公式サイトとヨドバシカメラで先行発売し、価格は23,800円です。

Sonosは2020年春に「Sonos Move」というバッテリー内蔵のポータブルワイヤレススピーカーを発売していますが、Roamのように500mlペットボトルとほぼ同じサイズと重さ(約430g)にまで小型化・軽量化した製品は同ブランド初となります。

  • タテヨコどちらの方向に置いても、同じ音質でリスニングが楽しめる

  • Roamの本体サイズは、500mlペットボトルよりも少し小さめ

無線LAN機能は5GHz帯と2.4GHz帯のデュアルバンド対応で、規格はIEEE 802.11a/b/g/n/acまでサポート。最大6つのアクセスポイントと6台までのBluetoothオーディオ機器を登録して使い分けられます。

スリムな本体にはスムーズな中低音域を引き出す楕円形ウーファーと、高音域用のドーム型ツイーターを1基ずつ搭載。高効率なクラスHデジタルアンプでパワフルに駆動します。無数の細かい孔を設けたパンチグリルの奥に透けて見えるハニカム構造(ハチの巣形状)の音響フレームが、2基のドライバーから出力される音に心地よい広がりを生み出します。

  • スピーカーグリルから透けて見える、ハニカム構造のフレームが広がりのある音を生む

多彩な機能を設定・操作できるSonosアプリ

Roamの設定・操作は、Sonosが独自開発したiOS/Android対応アプリ「Sonos(S2)」から行います。Apple MusicやAmazon Music、Spotify、YouTube Musicなど、ユーザーが利用するさまざまな音楽ストリーミングサービスをSonosアプリに追加し、各サービスで配信されている楽曲を検索・再生できます。Apple MusicとAmazon Musicといったように、複数の音楽サービスをまたがって楽曲やアーティストの検索ができるので便利です。

  • スピーカーの設定・操作に使う「Sonos」アプリ。初期の無線LAN設定、Trueplay自動チューニングなどのセットアップ後の機能設定まで重要な役割を幅広く担う

  • Sonosアプリのセットアップ画面

  • Trueplay自動チューニングの設定画面

  • Sonosアプリには複数の音楽ストリーミングサービスを登録できる

  • キーワード検索画面。各サービスをまたいだ横断検索ができて便利

Sonosには多くのソフトウェアエンジニアが在籍しており、スピーカーによる高品位な音楽再生を実現する技術開発で手腕を振るっています。Sonosアプリにも、Roamによる音楽再生をブーストするいくつかの画期的な機能があります。そのひとつが「Trueplay自動チューニング」です。

Roamのようなポータブルスピーカーは、大型の据え置きタイプのスピーカーと違って、置き場所を変えながらさまざまな使い方をする可能性があります。フラットなテーブルから部屋のコーナーに移して聴くと音の聞こえ方が変わってくるもので、スピーカーを置くテーブルやラックの材質もまた音に影響を与えます。

SonosアプリからTrueplay自動チューニング機能をオンにすると、Roamの置き場所や向きを変えたことを本体内蔵のビームフォーミングマイクと加速度センサーが検知し、変更後の設置場所に合わせたサウンドにすばやく最適化してくれます。この機能をオンにするだけで、都度設定する必要はありません。チューニング中も音楽再生を妨げるボイスガイドや通知音が鳴ることもなく、普通にリスニングを楽しめます。

  • マイクをオンにして、Sonosアプリで「Trueplay自動チューニング」をアクティベートするだけで、常時オンの状態で利用できる

  • Trueplay自動チューニングの設定画面

  • 本体にマイクの操作ボタン(上)を備える

Roamの内蔵マイクはTrueplay自動チューニングのほかにも、さまざまな用途で活躍します。RoamはAmazon Alexa、Googleアシスタントをビルトインするスマートスピーカーでもあり、音声操作はコマンドの誤認識が少なく快適です。なお、マイクを使わないときはミュートにもできますが、Trueplay自動チューニングを利用する場合はマイクをオンにする必要があります。

Roamには、再生中の音楽を同じ無線LANルーターに接続されているホームネットワーク内のSonos製スピーカー、またはサウンドバーなどにバトンタッチして聴ける「Sound Swap」という新機能も追加されました。筆者はこの機能を試せていませんが、操作はRoamで音楽を再生中に本体の再生/一時停止ボタンを長押しするだけで簡単にできるそうです。また、Roamとペアリング登録を済ませたスマホを持ってホームネットワークの圏外に移動した場合、スマホとの接続を自動的に無線LANからBluetoothにすばやく切り換える機能も備えています。

このほかにも2台のRoamによるステレオ再生、Sonosのオーディオ機器をグルーピングしてマルチルーム再生を楽しむといった使い方もできます。

  • Bluetooth再生にも対応。スマホとの接続が完了するとLED(写真中央右)が青色に点灯する

SonosアプリでApple Music・Amazon Musicを使う

今回、筆者はSonosアプリに、日ごろよく使う音楽ストリーミングサービスのApple MusicとAmazon Musicを追加しました。Apple Musicの場合、聴きたい楽曲やApple Music 1のラジオ番組などをiPhone/iPadで探して、AirPlay 2を使ってRoamでキャスト再生できるので、とても相性が良いと思います。

  • Sonosアプリの中に組み込まれたApple Musicの画面。音楽ストリーミングサービスのアプリを別途起動することなく、Sonosアプリの中でさまざまなサービスのコンテンツがシームレスに利用できる

Roamの音声アシスタントとしてAmazon Alexaを登録することで、Amazon Musicのコンテンツを音声で検索し、呼び出して再生できるのも便利です。SonosアプリからAmazon Alexaを登録すると、直後からRoamに話しかけて天気情報やニュースを聞けました。なお、Amazon Alexaに対応デバイスとしてRoamを認識させ、音楽の再生/停止や検索などの操作を音声で行いたい場合は、Amazon AlexaアプリからSonosのスキルを設定、有効化するひと手間がかかります。

  • Amazon AlexaとSonos Roamを相互にリンク

  • Amazon AlexaアプリにSonosスキルを追加し、スピーカーのマイクに話しかけて音楽の検索・再生操作などができるように設定する

やわらかくきめ細やか、広がりも豊かなサウンド

それではRoamの音質に迫ってみます。Roamが対応するBluetoothオーディオのコーデックはAACとSBCです。今回はiPhone 12 Pro MaxとApple Musicを試聴のリファレンスとしました。

元ちとせのアルバム「語り継ぐこと」から、代表曲『いつか風になる日』をかけると、温かなボーカルの心地よい余韻に包まれます。エレキベースの低音は肉付きがとてもよく、押し出しも滑らかで安定しています。ボーカルや楽器の音像をキリッと引き締めながら、余韻はとても暖かくきめ細かな質感を描きます。三線の乾いた軽快なメロディが見晴らしの良い広々とした空間に満ちていきます。Roamは弦楽器の生っぽい音の再現力に富んでいるスピーカーだと感じました。

  • iPhone 12 Pro Maxを使い、Apple Musicの音楽をSonos Roamで聴いた

チェロのヨーヨー・マ、マンドリンのクリス・シーリー、コントラバスのエドガー・メイヤーによるアルバム『バッハ:トリオ』の「トリオ・ソナタ 第6番 ト長調 BWV530 ~第3楽章:アレグロ」も、やはりRoamによる弦楽器の艶っぽさに引き込まれる楽曲でした。チェロ、コントラバスの低音がスムーズに立ち上がって音場の奥行きをどこまでも深く描き、マンドリンの粒立ちもきれいに整っています。Roamのサウンドは演奏者の体温も感じさせます。リスニング環境の条件などに合わせて高域と低域のバランスを調整したいときは、Sonosアプリが備えるイコライザー機能を使うと効果的です。

ルーベン・ゴンザレスのアルバム「Introducing」からピアノのメロディがとても美しい楽曲『Melodia del Rio(川の旋律)』では、ゆったりとしたメロディの抑揚感、繊細な音色の変化をRoamが楽しく聴かせてくれます。楽器の音が立体的で力強く、生々しさが真に迫ります。各帯域の音がシームレスにつながる一体感の柔軟さは、Sonosの独自設計によるドライバーの素性がとても良いことを証明しています。

Trueplay自動チューニングの効果は?

Trueplay自動チューニングの実力を確かめるため、Roamで音楽を再生している間に置き場所を繰り返し変えてみました。良い意味でこの機能の“存在感”はありません。つまり、音楽の聞こえ方に変化がなく、一定の良質なリスニング体験がこの機能のおかげで保たれます。置き場所を変えるたびにマイクとセンサーによる環境スキャニングが行われますが、先述の通りビープ音が鳴ったり、音楽再生が中断されて体験を損なわれるようなことはありません。

  • Trueplay自動チューニングはいつもいい音を楽しむために欠かせない機能。コーナー置きも楽しみたくなる

ただ、Trueplay自動チューニング機能だけでカバーしきれないほど設置条件が変わると、やはり音質にはそれなりの影響があります。一例として、柔らかいマットの上、中空のカラーボックスや本棚の上などに置くと、低音がだぶついたり音像が緩んだりしてしまいます。Roamのベストな音を引き出すには、ある程度材質が強固なラックやテーブルの上に置いて使うことをおすすめします。

Roamは縦横どちらの置き方にも対応しますが、360度すべての方向へ均等に音を広げる無指向性スピーカーではありません。良い音を楽しむためには、Sonosのブランドロゴが配置されている方を正面に向けるとベストなリスニング体験が得られます。

バッテリーはフルチャージから最大10時間の連続再生に対応しています。Qi規格に対応するワイヤレス充電器はSonos純正品だけでなく汎用品も使えます。たとえばアップルのMagSafe対応バッテリーパックは、外に持ち出すときにiPhoneとRoamの双方のバッテリー切れをケアできる一石二鳥の便利なアイテムです。RoamはUSB-Cケーブルで充電しながら使えるので、自宅や仕事場など電源が確保できる場所ではバッテリー切れを心配することなく、音楽をかけっぱなしにできます。

  • iPhone 12シリーズ向けのMagSafe対応バッテリーパックでRoamを充電できた

Sonosのライバルからはもっと安価なワイヤレススピーカーも商品化されていますが、RoamはBluetoothだけでなく無線LAN機能も備えているので、多くのメリットが得られます。AirPlayが使えること、Trueplay自動チューニングなどSonosの独自機能が満載であること、音声アシスタント搭載のスマートスピーカーとしては珍しくIP67相当のアウトドア対応であることなどを踏まえれば、とてもコストパフォーマンスが高くエッジが効いている製品です。

今後もSonosアプリに新しい機能が追加されることも考えられます。Roamは購入後も長く楽しめるワイヤレススピーカーとして、きっと満足の行く買い物になると思います。