ソニーから6月25日に発売となった完全ワイヤレスイヤホンの新フラグシップ「WF-1000XM4」。ひと足早くじっくり使える機会があったので、前機種「WF-1000XM3」と比較しながら詳しくレポートします。
WF-1000XM4は、ソニーが独自に開発したBluetoothオーディオSoC「V1」チップを中心としたハイレベルなノイズキャンセリング機能を搭載しています。また、Bluetoothによるワイヤレス再生で最大96kHz/24bitのハイレゾ楽曲がほぼそのままの音質で聴けることにも注目です。
やはり「軽さは正義」だった
最初に外観と装着感をチェックします。WF-1000XM4(以下:1000XM4)とWF-1000XM3(以下:1000XM3)の充電ケースを横に並べると、かなり小さくなったことが写真で伝わるでしょうか? 充電ケースにイヤホンを装着した製品全体の重さを手元の計量器で計ってみると、40gほど1000XM4のほうが軽くなっていました。
筆者は本誌の速報レポートで「充電ケースは1000XM3のように大きいほうが“上位モデルの貫禄”が感じられる」と書きましたが、これはお詫びして撤回します。「軽さは正義」でした。毎日持ち歩いてみると、当然ながら1000XM4のほうが負担が少なくて快適です。ただ、NFCによるワンタッチペアリングができなくなったことはやはり残念です。もし次期モデルでNFCがカムバックを果たしてくれたら温かく歓迎したいです。
抜群のフィット感。スポーツ時も安心の防滴対応
イヤホン本体については1000XM4、1000XM3の間に大きな重さの変化は感じられません。ただ、1000XM3は装着時にイヤホンが耳から飛び出して見えるデザインです。1000XM4も耳にイヤホンを着けていることは分かる大きさですが、ルックスはかなりスマートになりました。付け加えるならば、1000XM3のよう本体の先端が口元に向かって伸びていないデザインなので、1000XM4は耳に装着したまま難なく顔が洗えました。本体はIPX4相当の防滴対応です。
1000XM3はノズルの形状がやや長く、イヤーピースを装着した先端を回しながら耳穴の奥にぐっと入れて装着します。筆者は耳穴の形状があまり1000XM3と相性が良くなかったため、付属するイヤーピースによってはベストな遮音効果がなかなか得られませんでした。
ノズルの長さが短くなった1000XM4は、外耳にハウジングが触れて支えになるので、ぴたりとしたフィット感が得られます。1000XM4を身に着けてジムで走ってみたり、自宅でYouTubeを見ながらピラティス的なことを真似て体を動かしてみましたが、イヤホンの装着感は抜群に安定していました。
耳に合うイヤーピース選びは大切。NC効果・音質に影響大
1000XM4では、「Sony|Headphones Connect」アプリからユーザーが選んだイヤーピースによる「密閉状態の自動測定」ができるようになりました。アプリを開いて、「システム」タブの中に追加された「最適なイヤーピースを判定」をタップします。
装着状態の測定テストはわずか5秒前後で完了します。筆者も測定してみたところ、1000XM4に付属する新たな「ノイズアイソレーションイヤーピース」は、両耳ともに「L」がベストという判定結果になりました。
例えば、スニーカーのサイズがすべてのメーカーで同じではないように、イヤホンのイヤーピースもある製品はMサイズが合うのに、別の製品ではLサイズが良いということも有り得ます。また、人によっては左右の耳穴の大きさが違う場合もあります。最適なサイズのイヤーピースを使えば高い遮音効果が期待できるだけでなく、その製品から最良のサウンドが引き出せます。
1000XM4のノズルは汎用性の高い形状なので、他社製のイヤーピースの中にも互換性のあるものが見つけられます。サウンドや装着感の好みに合うものをサードパーティのイヤーピースから探してカスタマイズしても良いでしょう。ただしイヤーピースの形状によっては、装着したままでは充電ケースのフタが閉められなくなる場合もあるので注意が必要です。
LDAC再生時はLDAC対応プレーヤーが必要。注意点も
1000XM4は、非可逆圧縮方式でありながらBluetoothオーディオで最大96kHz/24bitのハイレゾ再生が楽しめる、ソニーが開発した「LDAC(エルダック)」というコーデックをサポートしています。ソニーの完全ワイヤレスイヤホンの中では、1000XM4が初めてLDACに対応しました。なお、ソニーのポータブルオーディオ製品には既に、ワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」やネックバンドスタイルのワイヤレスイヤホン「WI-1000XM2」など、数多くのLDAC対応製品があります。
LDACの“いい音”を楽しむためには、スマホやオーディオプレーヤーなど音楽再生機器の側もLDAC対応であることが求められます。最新のAndroid OSを搭載するスマホなど、モバイル端末の中にはLDACに対応する製品が増えており、ウォークマンも現行モデルはすべてLDAC対応です。かたやiPhoneはLDACによるリスニングができないため、1000XM4によるハイレゾ対応のワイヤレス音楽再生も不可ということになります。
筆者が1000XM4のリスニングチェックに使ったGoogle Pixel 5はLDACによるBluetoothオーディオに対応しています。1000XM4をペアリングすると、初期状態では自動的にLDACで接続されます。接続中のコーデックとして何が選ばれているかは、スマホのBluetooth設定やソニーの専用アプリからも確認できます。
今回試した限りでは、LDAC接続による音楽リスニング時に、ごくたまに音途切れが発生したり、ノイズが聞こえることがありました。アプリの「サウンド」タブを開いて、Bluetooth接続品質を「音質優先」から「接続優先」に切り替えるとコーデックがAACに切り替わり、たいていの場合は接続状態が安定してノイズや音途切れが解消されます。
iPhoneの場合は音質優先、接続優先のどちらのモードでもAACコーデックが選ばれ、それぞれに最良のコンディションで音楽再生が楽しめます。
誤操作の少ないタッチセンサー。寝そべりながらの音楽再生も快適
1000XM4は、さまざまな音楽再生機器から左右のワイヤレスイヤホンへ同時にオーディオ信号を送り届ける方式を採用しています。今回筆者が試した製品の場合、NCとアンビエント(外音取り込み)のモード切り替え時にボイスガイドがやや聞きづらくなったり、片側のイヤホンから遅れて声が届くこともありましたが、音楽再生・動画の音声再生時には聞こえ方のバランスが崩れることもなく安定していました。
左右イヤホンの側面(大きな円形の部分)にはタッチセンサーを内蔵しています。指によるタッチ操作に対しては少し感度が高めに設定されているように感じましたが、クッションや寝具がセンサーに触れても誤操作が発生することはありません。例えば眠る前の時間、耳に1000XM4を装着したままベッドに横になりながら音楽を聴いたり、動画を見る使い方も問題なくできました。