キヤノンは5月27日、初めて非球面レンズを採用した交換レンズ「FD55mm F1.2AL」の発売から50周年を迎えたと発表しました。メリットの多い非球面レンズは、レンズ交換式カメラの交換レンズだけでなく、放送用のレンズや天体望遠鏡、半導体露光装置など、幅広く用いられるようになっています。
一般的な球面レンズはレンズ面が球面であるため、レンズを通過する光を完全な形で1点に収束できない「球面収差」が発生し、像がぼやける原因になります。球面収差を補正するには、複数枚の球面レンズを組み合わせる必要がありますが、非球面レンズは1枚用いるだけで複数枚の球面レンズを用いるのと同程度の補正効果を持つのが特徴です。
キヤノンは、当時「夢のレンズ」とも呼ばれた非球面レンズの開発に1963年から取り組み、量産技術を確立。1971年3月に、研削非球面レンズを搭載したFD55mm F1.2ALを発売しました。その後は、ガラスモールド非球面レンズやプラスチックモールド非球面レンズの成形技術を開発し、非球面レンズの大量生産を可能にしています。
キヤノンが自社で開発したレンズの加工機では、高い精度の非球面レンズの製造を可能にしました。加工後の形状誤差は0.1マイクロメーター以下で、レンズ面の大きさを東京ドームの屋根(直径は約244m)とすると、誤差はシャープペンシルの芯の太さに相当する0.5mm以下に抑えているといいます。