NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』(毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の後半で、杉咲花演じるヒロイン竹井千代の継母・栗子役を演じた宮澤エマ(32)が存在感を放った。第78代内閣総理大臣・宮澤喜一氏の孫というサラブレッド女優だが、ミュージカル俳優としてキャリアを積み、ここへ来てお茶の間でもスポットを浴びている(以下、7日放送の第110回のネタバレを含む)。

  • 『おちょやん』栗子役を演じた宮澤エマ

栗子といえば、朝ドラ史上最凶のクズ父とレッテルを貼られたテルヲ(トータス松本)の再婚相手だった。第1週に初登場した際には、家事をまったくせず、千代を奉公に出すという完全なるヒールで、そのままフェイドアウトしたと誰もが思っていたはず。ところが、後半の20週に、千代が夫である天海天海こと一平(成田凌)に裏切られて離婚、続く21週でズタボロになった千代の前に、救世主のように現れたのが栗子だった。

しかも視聴者を驚かせたのは、脚本家・八津弘幸氏の鮮やかな伏線の回収ぶりだ。栗子が、『ガラスの仮面』の紫のバラの人ならぬ“花かごの人”で、ずっと千代の舞台を観て応援してきたことが明かされたのだ。その回では、なぜ栗子が行方をくらませた千代を見つけることができたのかも説明され、涙のダムを決壊させた人も多かったはず。

特にこの週の八津脚本はキレキレだった。栗子の孫・春子との何気ないやりとりで、栗子が字を読めないことを知った千代は、栗子も自分と同じような境遇で、波乱万丈の人生を送ってきたことを悟る。さらに栗子は、生きる希望を見失っていた千代に、春子を育てていくという生きがいまで与えていくというまさかの“恩人枠”となり、視聴者の琴線を大いに揺さぶった。

また、年老いた栗子の味わい深い演技も絶賛された。ゆっくりと穏やかに話す口調や憂いをたたえた瞳からは、人生の年輪を感じさせ、千代と同じく激動の時代をたくましく生き抜いてきた同士感まで漂わせた点がすばらしい。

そんな栗子が、7日の放送回で亡くなり、ネットでも栗子の哀悼コメントが多数上がった。それは宮澤が『おちょやん』の出演によって、女優としての知名度と人気を大幅にアップさせたことの証しでもある。

宮澤といえば、駆け出しのころは、第74代内閣総理大臣の竹下登氏の孫であるDAIGOと同じく“孫タレ”として注目されたバラエティ寄りのタレントだった。その後のDAIGOの活躍は言うまでもないが、宮澤も自身のキャリアを自ら切り開いていく。

転機となったのは、ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング ~それでも僕らは前へ進む~』(13)で女優デビューを果たしたことだろう。舞台で伸びやかな美声と華のある存在感を放った宮澤は、以降、数多くのミュージカルの舞台を踏んでいく。近年は朝ドラ『エール』でミュージカル俳優がフィーチャーされたのが記憶に新しいところだが、宮澤も今後はドラマなどにも、どんどんお声がかかっていきそうな予感。

すでに三谷幸喜脚本の2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、小栗旬演じる主人公・北条義時の妹・阿波局役を演じることが報じられている宮澤。大河初挑戦にして、重要な役どころとなりそうで、今後の宮澤からも目が離せない。

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