21世紀もWin32版エクスプローラーを使い続けることになりそうだ。Microsoftが米国時間2021年3月17日にリリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド21337のエクスプローラーは、GUIの構成要素にパディング(ここでは余白の意)を加える「コンパクトモード」を追加した。
Microsoftは公式ブログにて、「XAML体験との一貫性向上を目指して設計した。タッチスクリーン使用時にエクスプローラーを操作しやすくなる」と説明している。まずは、コンパクトモードの有無でどのように変化するかご覧いただきたい(下図)。
ここでは表示レイアウトを「詳細」に切り替えているが、パディングは「中アイコン」や「一覧」などにも適用される。たとえば、デタッチャブル型2in1 PCのキーボードを取り外すと、エクスプローラーの表示形式はコンパクトモードを無効した状態に切り替わり、タッチ操作しやすくなる。キーボード装着時もタッチ操作を併用するユーザーに配慮するため、「Use compact mode」を用意したのだろう。なお、Microsoftは先の公式ブログで「本設定を切り替えるUXは最終的なものではない」ことを強調している。
この連載では、過去にWindows 95時代から大きく変化しないエクスプローラーについて苦言を呈してきた。英語名のフォルダーは先頭文字のキーを押すだけで合致するフォルダーを選択できたり、日本語名のフォルダーもIMEをオンにすれば同様の操作が可能になったりと、エクスプローラーには便利な機能は多い。しかし現在、何らかの業務でPCを使うときの主役はMicrosoft WordやMicrosoft Excelといったアプリであり、エクスプローラーは必要最小限の操作で目的を達成できればよい。
そのように見ると、後方互換性を重視するMicrosoftがエクスプローラーに対して大胆な機能実装を施し、生まれ変わるのは難しいだろう。古くからPCを使っているユーザーには実感している人も多いと思うが、キーボード操作を主体とするファイラーのほうが、GUIを前提にしたエクスプローラーよりもすばやく目的を達せられる。
少し逸れるが、Microsoftは今後、WSL 2(Windows Subsystem for Linux 2)にXサーバー機能の実装を予定している。現時点では未実装のため、VcXsrvなどWindows 10で動作するXサーバーを別途インストールしなければ、画像ファイルなどを閲覧することはできない。このあたりはWSL 2開発チームに期待したいが、GPUサポートが2020年5月開催のBuild 2020で発表されたことを踏まえると、Microsoftは2021年に開催するであろうBuild 2021で何らかの進捗を示すはずだ。
話をエクスプローラーに戻して、この連載ではおなじみのWin32とUWPを統合する「Project Reunion」は、2021年度の第4四半期(Microsoftの会計年度は7月開始のため、2022年4~6月ごろ)にバージョン1.0をむかえる。すでにMSIXでパッケージ化されたデスクトップアプリは、現在のバージョン0.5でWinUI 3やテキストレンダリングをサポートし、GitHubのロードマップどおりに進捗している。
Win32アプリであるエクスプローラーに対してProject Reunionが与える影響は大きく、一時期はUWP版エクスプローラーへの移行を選択したMicrosoftが、コードや機能を見直す可能性は高い。その点とWSL 2のXサーバー実装に期待を寄せつつ、今日もエクスプローラーを使い続ける。