2019年に東芝メモリの社名変更により誕生した「キオクシア」。東芝のフラッシュメモリ事業を受け継ぎ、数々のストレージ製品を展開しているが、その中で個人向けのブランドとなっているのが「EXCERIA」だ。
今回は、その「EXCERIA」ブランドから発売されているNVMe SSDを検証する。現在展開しているのはハイエンドクラスの「EXCERIA PLUS」とエントリークラスの「EXCERIA」。どちらもNANDフラッシュに、定評のあるキオクシアの3次元フラッシュメモリ「BiCSFLASH」を搭載し、コントローラも自社のロゴが表示されている。(試用機はTOSHIBAロゴだが、順次キオクシアのロゴに変更となるそうだ。)フラッシュメモリのサプライヤーが開発するSSDというのは、信頼性、パフォーマンス共に安心感につながる。
「EXCERIA PLUS」と「EXCERIA」はどんなSSD?
インタフェースはどちらもPCI Express 3.0 x4。EXCERIA PLUSは、公称の最大シーケンシャルリード3,400MB/s、最大シーケンシャルライト3,200MB/sとPCI Express 3.0 x4の限界に迫るスペック。容量は500GB/1TB/2TBをラインナップしている。
■キオクシア「EXCERIA PLUS」 | |||
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容量 | 500GB | 1TB | 2TB |
実売価格 (原稿執筆時点 Amazon実売価格) |
10,500円前後 | 20,000円前後 | 41,000円前後 |
フォームファクタ | M.2 2280 | ||
インタフェース | PCI Express 3.0 x4 | ||
プロトコル | NVMe 1.3c | ||
NANDフラッシュメモリ | キオクシア製「BiCS FLASH TLC」 | ||
コントローラ | キオクシア製8chコントローラ | ||
シーケンシャルリード | 3,400MB/秒 | ||
シーケンシャルライト | 2,500MB/秒 | 3,200MB/秒 | 3,200MB/秒 |
総書き込み容量(TBW) | 200TB | 400TB | 800TB |
保証期間 | 5年 |
EXCERIAは公称の最大シーケンシャルリード1,700MB/s、最大シーケンシャルライト1,600MB/s(容量250GBモデルは、1,200MB/s)と、最近のNVMe SSDとしては高速ではないものの、それでも550MB/s前後が限界のSerial ATA接続のSSDよりはデータ転送速度はずっと上だ。容量は250GB/500GB/1TBをラインナップしている。フラッシュメモリはEXCERIA PLUSと同じBiCS FLASH TLC、キャッシュ用のDRAMも搭載と速度以外はエントリー向けとは思えないスペックだ。
■キオクシア「EXCERIA」 | |||
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容量 | 250GB | 500GB | 1TB |
実売価格 (原稿執筆時点 Amazon実売価格) |
6,000円前後 | 7,000円前後 | 12,000円前後 |
フォームファクタ | M.2 2280 | ||
インタフェース | PCI Express 3.0 x4 | ||
プロトコル | NVMe 1.3c | ||
NANDフラッシュメモリ | キオクシア製「BiCS FLASH TLC」 | ||
コントローラ | キオクシア製4chコントローラ | ||
シーケンシャルリード | 1,700MB/秒 | ||
シーケンシャルライト | 1,200MB/秒 | 1,600MB/秒 | 1,600MB/秒 |
総書き込み容量(TBW) | 100TB | 200TB | 400TB |
保証期間 | 5年 |
「EXCERIA PLUS」と「EXCERIA」の実力を試す
さて、さっそくその実力をベンチマークで見てみよう。まずは、CrystalDiskMark 8.0.1で最大性能を試す。テスト環境は以下の通りだ
■テスト環境 | |
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CPU | Intel Core i7-10700K(8コア16スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFI(Intel Z490) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2933で動作) |
ビデオカード | CPU内蔵グラフィック(Intel UHD Graphics 630) |
システムSSD | Corsair Force Series MP600 CSSD-F2000GBMP600(M.2/PCI Express 4.0 x4、2TB、※PCI Express 3.0 x4で動作) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
実測でEXCERIA PLUS(1TB)のシーケンシャルリードは3,315.26MB/秒、シーケンシャルライトは3,239.03MB/秒とほぼ公称通りの性能を見せた。Q32T16のランダムアクセス(RAND4Kの値)のデータ転送速度も優秀だ。EXCERIA(1TB)のシーケンシャルリードは1,762.79MB/s、シーケンシャルライトは1,692.30MB/秒とこちらもほとんど公称通りだ。こちらも、エントリークラスのNVMe SSDとしてはランダムアクセスが優秀だ。
次は、実際のアプリケーション処理をシミュレートするPCMark 10のStorageテストを実行する。EXCERIA PLUS(1TB)のスコア「1,781」はPCI Express 3.0 x4接続のNVMe SSDとして優秀な部類だ。注目すべきはEXCERIA(1TB)が「1,667」を出していること。一昔前のハイエンドNVMe SSDクラスのスコアで、エントリークラスながら実アプリでのレスポンスが良好と言える結果だ。
次は、HD Tune ProのFile Benchmarkを用いて、そのSLCキャッシュ容量と、そのキャッシュが切れた時の速度をチェックする。
下の画面が200GBのデータを連続して読み出しと書き込みを実行した結果だ。青色のラインが読み出し、オレンジ色のラインが書き込みだ。SLCキャッシュは書き込み時に利用されるのでオレンジ色のラインに注目してほしい。
EXCERIA PLUSは40GB付近で一気に速度が落ちたので、そこでSLCキャッシュが切れたとみられる。ただ、キャッシュ切れでも約1,500MB/秒と速いデータ転送速度を維持しているので、大容量のデータコピーでも遅さを感じることはないだろう。
EXCERIAも同様に40GB付近でSLCキャッシュが切れている。キャッシュ切れのあとは650MB/秒まで落ちている。それでもSerial ATA SSDよりは高速だ。なお、書き込み速度もブレているが原因は不明。複数回試しても同じ傾向だった。ほかのベンチマークでは問題なく速度が出ているので、アプリとの相性だろう。
最後に温度をチェックしたい。TxBENCHでシーケンシャルライト(データサイズ32GB)を5分間連続して実行した時の温度とデータ転送速度の推移をHWiNFO64で測定している。パターンは2種類で、ヒートシンクを搭載していない環境と今回のテストで使用しているマザーボード、MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFIのM.2スロットに搭載されてるヒートシンクを装着した状態で測定を実施した。なお、ケースに組み込んでいないバラック状態でテストを行っている。
EXCERIA PLUSは3,000MB/秒を超える書き込み速度を維持しながらもヒートシンクのない状態でコントローラの温度は最大59℃と十分低く、温度上昇を抑えるためにデータ転送速度を落とすサーマルスロットリングの発生もなかった。ヒートシンクがあれば、最大49℃と長時間負荷がかかる状況でも安心して運用できる。
EXCERIAは、ヒートシンクがない状態で最大で57℃と低い。ヒートシンク装着時は最大50℃とこちらはほとんど変わらない。コントローラの温度があまり上がらないのは、イコールどんなPCにも組み込みやすいということ。素直に喜ばしい部分だ。
また、キオクシアのSSDには専用のユーティリティとして「SSD Utility」が用意されており、SSDの健康状態や新たなファームウェアがないかチェックする機能が備わっている。
安定動作と信頼感が魅力のNVMe SSD
EXCERIA PLUSはPCI Express 3.0 x4接続のハイエンドNVMe SSDにふさわしい性能を備えている。それでいて高負荷時でもコントローラの温度がそれほど上がらない使いやすさも魅力だ。
しかし、筆者としてはEXCERIAに注目したい。Serial ATA SSDと変わらない価格とエントリーらしい価格設定だが、フラッシュメモリに低価格SSDに多いセル当たり4bit記録するQLCではなく、3bitのTLCを採用、ランダムアクセスを向上させるキャッシュ用のDRAMも搭載とデータ転送速度以外のコストダウンを感じさせない作り。非常にお買い得感の高いNVMe SSDだ。