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――ディーン・フジオカさんの魅力について伺います。獅子雄は、紳士的な風貌なのに突拍子もなくて変で…だけどそのハズしている部分が全然わざとらしくない、今までにない役者さんでどう形容していいかわからない魅力があるなと個人的に思っているのですが、監督にとってディーンさんはどんな俳優さんですか?

日本人の俳優さんでは珍しいんじゃないんですかね、ああいう人って。『モンテ・クリスト伯』のときもそうですけれど、海外古典をやるときに、日本の文化や環境だとちょっと力業がいる設定のときに、そんなに無理していない感じが出せるのはディーンさんくらいですよね。ディーンさんはセンスの塊だし、“モンテ”を通して信頼関係もすごく生まれました。本当に、多少のわがままは何でもやってくれるんですよ(笑)

――バイオリンを弾くシーンも印象的です。

バイオリンは原作にも得意という設定があるんです。原作に忠実にできるところはやっていこうかなって思って。ボクシングができるという設定もディーンさんは格闘技が好きで身体能力も高いということで入れました。音楽も自分で作られる方ですけれど、バイオリンは弾いたことがないと聞いていたんです。でも、今回弾いている姿というのは、この人だから様になるというか、やっぱりファンタジーを体現できる人ですよね。

――バイオリンを弾きながら事件を回想して解決していくというのは、『ガリレオ』で言うと“計算式を書く”と同様の手法ですが、あの演奏する姿がすごくディーンさんにピッタリで、ドラマの世界観にもハマっていたので、どうやって思いついたんだろうと思っていました。

自分の中では『バットマン』のイメージです。ゴッサムシティの高い所で街を見下ろして考えている様があるじゃないですか。あの画が自分の中にあって、衣装もそれをイメージしたんです。今回は「東京」をモチーフにしているので、世界貿易センタービルとか東京タワーの上とか人が立ち入れないところに彼が佇んでいても、ディーンさんだとなんでそこに入れたの?とか誰も考えないんじゃないかと(笑)。

だけど、そこで腕を組んでいるだけっていうのも面白くないですから、何かをやってほしいなと思って、最初はそこで創作ダンスをやるっていうのも考えました(笑)。そんな中、原作にバイオリンがあるなと思って、東京の和の街を舞台にバイオリンを弾いて、そのリズムの中で脳内整理されていくっていう感じにしようと思いついたんです。これは最初のだいぶ早い段階でイメージできていましたね。

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――バイオリンのシーンと同じく、『シャーロック』で名物なのが、獅子雄がタイトルを手書きするオープニングタイトルですよね。前回は文字を書いた後にコーヒーをかけてポスターを浮かび上がらせたり、第7話では若宮にタイトルを奪われたと思ったら、それを消してバーナーの炎で書くなどバリエーションが面白いです。どのような狙いであのオープニングができたんですか?

獅子雄というのは、ドラマの中で作られたキャラクターですが、実は獅子雄がこのドラマを支配している…みたいな感じが出せるといいなと思ったんです。つまり、これはお芝居としてドラマを撮っていて、ふとカメラを見たり、現実とドラマの世界とを超越した感じを出せないかなと。それでテニスとかゴルフの中継で選手がカメラレンズにサインを書くというのを見て「これだ!」と思って。

■ディーンの曲で「8割は描けた気がした」

――ディーンさんは主題歌も自ら作って歌われていますよね。

こちらから主題歌をお願いしました。“モンテ”のときはいろいろと注文もしたんですが、今回はもう信頼関係があったので、乱暴な言い方ですけど「何でもいいですよ」ってお願いしました(笑)

その中で1つだけリクエストしたのは、できるのであれば、主題歌のほかにもう1曲、メインテーマも作ってもらえませんか?ということ。主人公が謎を解いていくとき、解決に向けて動き出すときに使うまさに“盛り上がる”曲をと。1曲作るのにもすごく労力がいるところ、無理な注文だなとは思ったんですけれどね。でも、ディーンさんは快く引き受けてくれました。

そして、でき上がった主題歌の「Shelly」と、オープニングテーマにもなった「Searching For The Ghost」は、予想をはるかに超えた素晴らしすぎる楽曲でした。その2曲ができたとき、自分の頭の中でこの作品の8割は描けた気がしました。

――主役の方が主題歌を歌っているのに、それが前面に出てこない…だけど世界観にバッチリハマっているすごく良い主題歌ですよね。

そうですね。だからディーンさんはクリエイターなんですよね。