■『ゼロ係』『下町ロケット』に出会えた

――20代でデビューされたときのことは覚えていらっしゃいますか?確かCMで注目されて、そのあとドラマに出られていて。

見るのとやるのとは違うな、と思いました。やってみたらなんて難しいんだと思ったし。今考えるとすべてにおいて甘かったところがあると思います。でも、憧れて入った世界だし、この世界にずっといたいと思ったから頑張れた。そのころは自分が連ドラの主演をできるなんて考えてもなかったですね。

――それが29歳で主演するようになったわけですが、どんな風に変化していったんでしょうか。

やっぱり夢中になれたことが大きいと思います。いろんなところにいた人が作品を通してひとつになる、そういうところを見てなんてすばらしい仕事だろうと思ったし、人が集まったときのエネルギーが大好きなので、現場にいると生きてるなという感覚があります。「現場にいたい」という気持ちがあるから、続けてこれたんだと思います。幸運にも仕事がずっとあって、そこで本物の人たちを見て、すごさを肌で感じる機会があったことで、できなかったこともできるようになっていきました。

――デビューされるときには、誰もが小泉さんのお父さんのことを知っている状態で、でもそのことで色眼鏡で見られるということもあったのではないでしょうか?

そこは、覚悟していました。でも、当時の自分もかなりKYだったんでしょうね。そういうKYなところがなかったら、総理大臣の息子が芸能界には入らない(笑)。そこをぱーんと突き抜けて、「自分はこれをやりたい、俳優・小泉孝太郎になりたい」と思って入ったので、想像通りでした。自分自身に「こんちくしょう」と思うような悔しさも必要でした。いまになって考えると、自分にKYなところがあってよかったなと思います。

――そういう声が気にならなくなったのは?

最初から、「一瞬だろうな」とは思っていました。自分が力をつければ、おそらく言われなくなるだろうなと。そのときは、そうやって都合よく解釈したのかな、とも思います。

――現在41歳になられて、これから50代、60代になったときのことを考えますか?

そこまでは考えていないです。どんな仕事が待ち受けてるんだろうと考えるくらいで。僕らの仕事は受け身なので、オファーがないと仕事ができないんです。自分をどんな風に見てもらえるんだろう、ということが面白いと思います。ただ、芸能界が好きなので、50代、60代になっても芸能関係の仕事はしていたいです。

――自分がどう見てもらえるかということでオファーが来た仕事の中で面白いなと思ったものはありますか?

20代はただ役者をやりたいと思っていたけど、いつの間にかテレ東テレビ東京で柔道の番組のMCをやってオリンピックにも行ったり、バラエティのレギュラーがあったり、情報番組でMCをしたり、予期せぬことがいっぱいあって楽しいです。自分の考えなんてちっぽけなもので、求められることに応えることが挑戦だなと。もし来年、役者の仕事がなくても、それはそれで面白い1年になるなと思えるだろうし、いい意味でこだわりがなくなってきたのかもしれません。昔は役者の仕事に集中したいと思ってたけど、バラエティの仕事がいい切り替えになったり、ストレス発散になったりね。とにかく、この仕事自体が好きだし向いてるんだなと思います。光と影はあるけれど、ここにしかない刺激や快感が確実にあります。

――今まで求められた役で、印象深いものは何でしょうか?

大きかったのは、やっぱり『ゼロ係』の小早川冬彦と、『下町ロケット』の椎名直之という悪役でしょうね。その2つの役と出会えたことで、今の自分があるんだと思います。今までやったことのなかった悪役と、冬彦のように子供みたいな役、両極端を求められるんだ、ということがわかったのは大きかったし、何かを変えてくれたと思います。

――その2つの役、時期的にはどんな感じだったんですか?

『下町ロケット』の撮影が終わった日に、『ゼロ係』のシーズン1の初日の撮影があって、僕は寝ずに現場に行ったことをはっきり覚えてます。2つの役を演じた2016年に、僕が今まで歩いたことのない道を歩かせてもらったような気がします。もし、その2つの役をやってなかったら、どうなっていたんだろう……。確実に今のような質と量で仕事ができているとは思えないです。よく、先輩の役者さんが「役とは出会いだよ」って言われることがありますけど、本当にそうだなと実感します。今もそう思いますけど、10年20年経ったら、もっと強く実感するんじゃないかと思います。

■小泉孝太郎
1978年7月10日生まれ、神奈川県出身。2001年にCMで芸能界デビューし、02年、テレビドラマ『初体験』で俳優デビュー。その後様々なドラマ・映画に出演し、NHK大河ドラマには『義経』(05)、『天地人』(09)、『八重の桜』(13)と3度出演。09年にドラマ『コールセンターの恋人』で初主演を果たし、近年は『ブラックペアン』『連続ドラマW 真犯人』『グッドワイフ』(18)と話題作に続々出演する。また、テレビ東京では「リオデジャネイロオリンピック」メインキャスターを務めるほか、『よじごじDays』金曜MCなど幅広く活躍中。