トヨタ自動車の「クラウン」がまもなく15代目に進化する。日本の高級セダンの代表格でありながら、近年はユーザーの高齢化や保有台数の減少など悩みも多いという。その状況を払拭すべく、デザインもメカニズムも大胆に刷新した新型のプロトタイプをテストコースで試した。
豊田喜一郎の思いをよみがえらせる新型「クラウン」
クラウンが誕生したのは1955年1月1日。当時、多くの自動車メーカーが欧米車のノックダウン生産に従事していた中、純国産の高級乗用車として送り出された。日本人の頭と体で、世界に誇れる高級車を作るというトヨタ自動車創業者、豊田喜一郎氏の思いが形になったクルマだ。
それ以来、クラウンは常に革新に挑戦しながら60年以上の歳月を重ねてきた。例えば現行の14代目では、ピンクや空色など斬新なボディカラーを登場させた。
しかし、トヨタによれば、従来からのユーザーはついてきてくれるものの、新しいユーザーを取り込めないのが悩みだという。平均年齢は約65歳だといい、保有台数は「ゼロクラウン」と呼ばれた12代目の半分ぐらいになっているそうだ。
もう一度、豊田喜一郎氏の思いをよみがえらせ、世界を驚かせるぐらいのクルマを作らなければいけないという危機感をトヨタは抱いた。そんな中から、新型クラウンは生まれたという。
シリーズ展開は見直し、商品を一本化
トヨタはまず、従来のイメージから脱却するため、ロイヤル/アスリート/マジェスタという3つのシリーズを1つにまとめた。同じくユーザーの高齢化に悩む「カローラ」が、ハッチバックを復活させたのとは対照的だ。
その上で、スポーティモデルとして「RS」を設定した。もちろん“レーシングスポーツ”の略ではない。クラウンは伝統的に形式名に「S」を使っており、初代はR型エンジンを積んでいたので「RS系」と呼ばれた。意味は違えど、その名を現在によみがえらせたわけである。
新たな方向性を持たせたことも特徴だ。コネクティッド性能を盛り込んだこともそのひとつ。ただし、これについては全車にDCM(車載専用通信機)を搭載するという以外に情報は公開されなかった。
静岡県のテストコースで対面した新型クラウンのプロトタイプは、昨年秋の東京モーターショーで「クラウンコンセプト」としてお披露目されているものと基本的に同じだったけれど、屋外で見るとやっぱり新鮮だった。