デジタルサイネージにフォーカスするイベント「デジタルサイネージ ジャパン(DSJ) 2018」が、6月13日から15日にかけて幕張メッセで開催されている。同イベントには、国内でいち早くeスポーツ事業を展開した会社・RIZeSTが初出展。古澤明仁代表取締役自らによる講演で、世界のeスポーツ市場の現状と可能性、そして紆余曲折ありながらも沸騰を続ける日本のeスポーツ市場とそこから生まれる雇用について語られた。

  • RIZeSTは「e-sports SQUARE AKIHABARA」の運営をはじめ、eスポーツ事業を総合的にプロデュースしている

    RIZeSTは「e-sports SQUARE AKIHABARA」の運営をはじめ、eスポーツ事業を総合的にプロデュースしている

性別や年齢の壁を超えるeスポーツに世界が熱狂

『eスポーツの"つくり方"』と題した講演を行った代表取締役の古澤氏はまず、「日本では『運動して汗をかかなければスポーツじゃない』と認識されがちだが、欧米や韓国、中国ではマインドスポーツも競技=スポーツとして定義されている」と言及。平昌五輪でデモンストレーション競技としてeスポーツの大会が行われていたことを伝え、今注目すべきスポーツの一つであることをアピールする。

  • eスポーツの"つくり方"』講演を行ったRIZeSTの古澤明仁代表取締役

    『eスポーツの"つくり方"』講演を行ったRIZeSTの古澤明仁代表取締役

「みなさんが知っているスポーツの中で、男女混合で行われるものはありますか? 実は平昌五輪で行われた種目の一つでは、24歳のカナダ人女性が優勝しました。eスポーツは、性別や年齢、国籍、宗教といった壁を超えて楽しめるメジャースポーツなのです」(古澤氏)

現在、世界で約3億8,000万人がeスポーツを楽しんでおり、2021年には5億5,700万人に達するだろうといわれている。世界規模で見ればすでにeスポーツはニッチな存在ではなく、スポーツのジャンルとして確立されているといえる。

  • 2018年のeスポーツ人口は競技メインの方が1億6500万人、観戦メインの方が2億1500万人ほど

    2018年のeスポーツ人口は競技メインの方が1億6,500万人、観戦メインの方が2億1,500万人ほど

競技メインのプレイヤーの男女比は7:3、観戦メインのプレイヤーは6:4で、平均年齢でみると35歳以下が7割を超える。「男女問わず若い世代がユーザーの中心となっているため、製品をアピールしたい多くの企業がeスポーツの動向に注目しており、続々と投資を始めている」と古澤氏は説明する。

  • 男女問わず多くのファンを獲得しており、その7割以上が35歳以下の若年層だ

    男女問わず多くのファンを獲得しており、その7割以上が35歳以下の若年層だ

さらに、スマートフォンの普及も人気に拍車をかけている要因だという。eスポーツの試合はプレイヤー自身がYouTubeで配信でき、スマホで観戦するのに向いている。しかも、応援の声をプレイヤーに直接届けることができ、すばらしいプレーはすぐにSNSで共有可能。テクノロジーの進化によって、他のスポーツでは得られないインタラクティブ性を実現したことも、若い世代に人気が広まった理由なのだ。

このような盛り上がりを受け、ゲームのハードウェア・ソフトウェアの売り上げを除いた純粋なeスポーツ市場は現在、約1,000億円ほどの売り上げを達成しているそうだ。2021年にはこれが約1,800億円にまで成長すると予測される。

  • 収益構成の大きな5つの要素。まさにスポーツ興行そのものと言えるだろう

    収益構成の大きな5つの要素。まさにスポーツ興行そのものといえるだろう

収益を構成するものは主に5つ。放映権、企業広告、スポンサーシップ、チケット・グッズ販売、ゲーム会社からの資金だ。この中でもとくに注目されているのが放映権。HuluやFacebook、Twitter、さらにアメリカのスポーツ専門チャンネルであるESPNなども、eスポーツへ参入しようという動きがあるという。

五輪を視野に入れて動く日本のeスポーツ

では、このような世界の潮流のなか、eスポーツは日本でどのように発展していくのだろうか。古澤氏はその第1段階として、2月1日に誕生した「日本eスポーツ連合(JeSU)」のもとで発行されるプロライセンスを挙げる。すでに70名以上にライセンスが発行されており、アスリートとして国外大会に正式に参加できるだけでなく、これまでは実現できなかった高額賞金を懸けた国内大会の開催が期待されている。

  • 日本eスポーツ連合(JeSU)によってゲーマーにも正式なプロライセンスが発行されるようになった

    日本eスポーツ連合(JeSU)によって、ゲーマーにも正式なプロライセンスが発行されるようになった

実際に国内で行われる大型大会、プロリーグの数もぞくぞくと増えている。例えば「明治安田生命e J.LEAGUE」「クラロワリーグ アジア」「Shadowverse Pro League」「PUBG JAPAN SERIES」「League of Legends Japan League」「SFV ALL-STAR LEAGUE」などだ。

さらに、2019年秋の「いきいき茨城ゆめ国体」では、全国初となる「都道府県対抗eスポーツ大会」の開催が決定している。国体ともなると、学生もeスポーツに取り組むことになるだろう。

  • 2019年秋の国体では「都道府県対抗eスポーツ大会」が開催決定

    2019年秋の国体では「都道府県対抗eスポーツ大会」が開催決定

「将来的には体育の中にeスポーツが入っても全然不思議じゃないと思っています。今日、体育の時間に雨が降ったら『体育館でバスケをしましょう』となりますが、5年後、10年後にはそこにeスポーツが入ることも現実的にはあるんじゃないでしょうか」(古澤氏)

JeSUは日本オリンピック委員会(JOC)への加盟をも目指している。なぜなら五輪開催に向け、その流れは目に見えて加速しているからだ。2022年の杭州アジア競技大会ではすでに公式メダル競技になることが決定しており、2024年のパリ五輪で正式種目とするかどうかも国際オリンピック委員会で協議中。そして2026年のアジア競技大会会場は名古屋となる。

eスポーツが生み出すさまざまな雇用

eスポーツの市場規模が大きくなることで期待されるのが、eスポーツが生み出す雇用だ。たとえば、選手のマネジメント。League of Legendsというゲームにおける韓国人プロ選手の地域別年棒平均は、北米で6,930万円、中国で5,060万円、EUで1,980万円だという。このような選手や、選手を抱えるチームは、他のプロスポーツ同様に安定した契約を求めなくてはならないだろう。

  • 海外ではすでにeスポーツのプロ選手の年棒は高騰。大手チーム間で選手の争奪戦が繰り広げられている状況だ

    海外ではすでにeスポーツのプロ選手の年棒は高騰。大手チーム間で選手の争奪戦が繰り広げられている状況だ

さらに、チームを運営する人たち、大会を運営する人たち、関連商品を開発する人たち、イベントを盛り上げる人たちと、求められる人材の幅は広い。eスポーツ業界が盛り上がるに従い、雇用の幅は大きな広がりを見せるだろう。

  • eスポーツでは、従来のスポーツ興行に求められる人材に加え、ゲーム内カメラマンなどこれまでにないスキルの持ち主も雇用機会を得らえる

    eスポーツでは、従来のスポーツ興行に求められる人材に加え、ゲーム内カメラマンなどこれまでにないスキルの持ち主も雇用機会を得らえる

「eスポーツ市場が大きくなればなるほど、新たな雇用が生みだされます。チーム運営にはオーナーやコーチが必要ですし、記録のためのスコアラーも必要になります。私どものような仕事ではプロデューサーやキャスター、カメラマン、PRのための広報なども求められるでしょう。専用施設もこれから増えていきますから、そこでも雇用は生まれます。現在はとにかく人手が足りない状況です。eスポーツ業界では、人材は常に求められているといっていいでしょう。みなさまのご参加をお待ちしています」(古澤氏)

  • ブースでは実際に格闘ゲームのリアルタイム実況放送が実施され、来場者やスタッフがフリー対戦を行っていた

    ブースでは実際に格闘ゲームのリアルタイム実況放送が実施され、来場者やスタッフがフリー対戦を行っていた