次世代の不揮発メモリ技術であるIntel「Optane」。3D XPointとも呼ばれ、不揮発メモリの王道であるNANDフラッシュメモリとは異なる技術を用いることで、転送速度の向上はもちろん、NANDフラッシュメモリの課題である書き換え回数の上限を桁違いに向上させる点に期待が持たれている。

コンシューマー向けには2017年にIntel Optane メモリーがリリースされた。16/32GBという、期待よりも小さな容量でSSDとしてではなく、まずはHDDを高速化するためのキャッシュとして登場した。

速度はまだしもNAND SSDの代替として利用したかったユーザーには肩透かしだっただろう。次いで、2017年末にはついにIntel Optane SSD 900Pが投入された。

  • Intel Optane SSD DC P4800X 750GBモデル(評価サンプルのためかブラケットが付属しなかったが、製品には付属するようである)

Intel Optane SSD 900Pのレビューをといきたいところだが、手元に来たのはOptane製品の元祖と言えるOptane SSD DC P4800Xだ。750GBモデルで、2017年末に追加登場したモデルとなる。シリーズにはHHHLとU.2と、インタフェース違いの2モデルがあるが、今回はHHHL型、つまり拡張スロットに挿して利用するモデルである。

あらかじめ、Optane SSD DC P4800XとOptane SSD 900Pとの違いを確認しておこう。まずは当然だが価格が異なる。Optane SSD 900Pはコンシューマー向けモデルのため、Optane SSDが高価とは言え、それなりに現実的な容量と価格で販売されている。

一方、Optane SSD DC P4800Xはエンタープライズ向けであるため、コンシューマー向けモデルとは価格も違えば容量も1つ大きなクラスになっている。例えば、Optane SSD 900Pは280/480GBというラインナップで、480GBモデルの価格が75,000円前後だ。Optane SSD DC P4800Xは、375/750GBというラインナップになり、一般的に店頭流通するものではないが、米国小売店での価格が1,700USD(18万円前後)あたりになる。

スペックを見ると、例えばOptane SSD DC P4800Xの375GBモデル、Optane SSD 900Pの480GBであれば、転送速度やレイテンシなどがほぼ互角なので、コンシューマーがムリにOptane SSD DC P4800Xを選ぶ理由は少ない。

ただし、消費電力のアクティブ時が異なるように、信頼性のための機能はOptane SSD DC P4800Xのほうが充実しており、書き込み上限数でもOptane SSD DC P4800Xのほうが2倍以上と優れている。

仮にコンシューマーがOptane SSD DC P4800Xを選ぶとすれば、停電時データ保護機能を求めたり、高耐性テクノロジ(HET)や書き込み上限数のように、よりいっそう信頼性を求めたりする場合、あるいは先述のとおり価格を問わず大容量を求める場合だろうか。少なくともコンシューマーであってもワークステーション用途と言えるのではないだろうか。

製品名 Optane SSD DC P4800X Optane SSD 900P Intel SSD 760p
容量 375GB 480GB 512GB
シーケンシャルリード 2400MB/s 2500MB/s 3230MB/s
シーケンシャルライト 2000MB/s 2000MB/s 1625MB/s
ランダムリード(8GBスパン最大) N/A 550000IOPS 340000IOPS
ランダムリード(100%スパン) 550000IOPS 550000IOPS 275000IOPS
ランダムライト(8GBスパン最大) N/A 500000IOPS N/A
ランダムライト(100%スパン) 500000IOPS 500000IOPS N/A
レイテンシー - リード 10μs 10μs N/A
レイテンシー - ライト 10μs 10μs N/A
消費電力 - アクティブ時 18W 14W 50mW
消費電力 - アイドル時 5W 5W 25mW
書き込み上限数 20.5PBW 8.76PBW 288TBW
MTBF 2,000,000時間 1,600,000時間 1,600,000時間
保証期間 5年 5年 5年
インタフェース PCIe NVMe 3.0x4 PCIe NVMe 3.0x4 PCIe NVMe 3.0x4
フォームファクタ HHHL HHHL M.2 2280
ハードウェア暗号化 AES 256bit AES 256bit AES 256bit
停電時データ保護機能 N/A ×
高耐性テクノロジ(HET) N/A ×
温度監視とログ N/A ×
エンドツーエンド・データ保護 N/A

実物のカードを見てみよう。今回はHHHLモデルを入手したため、PCI Exprssカード型である。高さを抑えたロープロファイル形状で、スロット端子はPCI Exprss x4のものになっている。長さについては、一般的なHHHLタイプのNAND NVMe SSDと変わらない程度だ。

  • スペック比較のなかで、NAND SSDとの大きな違いが消費電力。かなり大きな消費電力のためか、ヒートシンクの造形は本格的だ

特徴的なのがチップの配置だろう。NAND NVMe SSDでは、HHHLカード上にM.2スロットを設け、そこにM.2タイプのカードを搭載することの方が多い。Optane SSD DC P4800Xは基板にチップを直に実装しているが、そのチップの枚数もかなり多そうだ。

  • 基板裏面には3D XPointチップが14枚

  • チップの刻印。サンプルであるためかESも記載されていた

おそらくOptaneはまだ1チップあたりの容量が大きくない。どのくらいの容量のダイなのか、NANDフラッシュメモリのようにチップ内に複数枚のダイを封入する方法が採れるのかも不明だ。

  • ヒートシンクの隙間を見ても、チップが実装されていた

  • 両面、チップの配置が同じと想定すれば28チップ程度搭載しているだろう。確かに高価になるはずだ

現在20nmプロセスで製造されているようだが、今後、製造プロセスの微細化が進むのか、あるいは3D NANDのように積層枚数を増やすといった製造技術の飛躍があるまでは、コスト・容量の問題がありつづけるのではないだろうか。しばらくは、ここぞというシーン・用途で活用するストレージとなるだろう。

  • 拡張スロットの端子付近の隙間からほかとは異なる大きなチップが見える。これがコントローラチップだろう