持ち運べる大きさと重さの4K/HDRプロジェクター

ベンキュージャパンから、4K/HDR対応ホームプロジェクター「HT2550」が発売されました。価格はオープンプライスですが、2018年2月中旬の時点では、198,000円前後(税込)で販売されているようです。発表にあわせて開催されたメディア向け説明会では、来日したベンキューアジアパシフィックのJeffrey Liang社長がプロジェクター分野における戦略を語りました。

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    4K/HDR対応プロジェクター「HT2550」

薄型テレビが先行している「4K」ですが、プロジェクターの分野でも勢いを増しています。横1,920×縦1,080ピクセル(207万画素)のフルHDに比べ、4Kは横3,840×縦2,160ピクセル(830万画素)と4倍の画素数があるため、投写により描画を行うプロジェクターでは、画素ピッチをより微細化する必要があります。

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    BenQのプロジェクターへの取り組み

ベンキューが家庭向けに展開するプロジェクターは「DLP」と呼ばれる方式が中心で、同社はDLPプロジェクターにおいては世界シェアNo.1です(出典:フューチャーソース社)。フルHDと4Kを合わせた統計データでも、欧州のホームシアター市場ではシェアNo.1、北米と中国でも2位という実績を持ちます。

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    BenQのプロジェクター製品ラインナップ

今回発売されたHT2550は、4K解像度のDLP方式プロジェクターです。0.47インチの新しい4K対応DMD(デジタル・ マイクロミラー・デバイス)チップを採用し、4Kプロジェクターとしては初の質量4Kg台を実現しました。DMDチップ自体の解像度はフルHD(1,920×1.080ピクセル)ですが、これを4倍速駆動し、生成した4枚の画像をずらして重ねることで、4K(3,840×2,160ピクセル)の解像度を実現しています。

明暗差を10ビット(1,024段階)で表現する映像関連規格「HDR10」に対応し、Ultra HD Blu-rayや各種VODサービスの4K/HDR映像を忠実に再生できることも特長です。ベンキュー独自の「CinematicColor」技術により、BT.709(Blu-rayやハイビジョン放送の映像信号における色空間の規格)の色域を96%カバーと、色再現性も向上しています。

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    HT2550のレンズ構造

HT2550の輝度は2200ルーメン、コントラストは10,000:1です。画面サイズは60~300型で、投射距離は80型が2.60~3.11m、100型が3.25~3.90mとされています。光学系の機能では、独自の低分散レンズコーティングを施した1.2倍の光学ズームレンズを搭載するほか、自動台形補正機能を備えており、設置の自由度もあります。

4K/HDRの「ゲームチェンジャー」

HT2550の発表会は、秋葉原にある富士ソフトアキバプラザ内「アキバシアター」で開催されました。このシアターには320インチのスクリーンが張られており、THX認証(ジョージ・ルーカスが設立したTHX社による高品質映像の認定プログラム)を取得している本格派です。発表会では4K/HDR対応の上位機「HT8060」の試写もあわせて実施され、どちらの製品もハイクオリティーな映像を披露していました。

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    参考展示されたハイエンド4K/HDR対応プロジェクター「HT8060」

発表会後、ベンキューアジアパシフィックのJeffrey Liang社長とベンキュージャパンの菊地正志社長に、ベンキューのプロジェクター製品について、特に4K/HDRなど高画質化への取り組みについてお話を伺いました。

―― 日本市場では昨年(2017年)あたりから4K/HDR対応プロジェクターが増えています。

菊地氏 : 弊社の4K/HDR対応プロジェクターについては、ハイエンドモデルを昨年から展開しています。今年はそのラインナップを拡充していこう、ホームシアター向けにも4K大画面の裾野を広げていこうという考えです。そのために、もう少しお求めやすい製品を準備しています。

―― HT2550はDLP方式のプロジェクターですが、LCD方式と比較して有利な点は?

Liang氏 : 世界市場全体で見ると、LCD方式とDLP方式※のシェアは半々ですが、家庭用だけで見るとDLPのほうが高くなっています。理由のひとつは、描画に持続性・永続性があることでしょう。

光源などを適切にメンテナンスすれば、今日見ている色と同じ色を数年後にも楽しんでいただけます。色精度の正確さも大きな特長で、HT2550がTHX認証を得られたことはその証明でしょう。高いコントラスト比も、DLPの得意とするところです。

※ : LCD方式(透過型液晶方式)は、ランプやレーザーなどの光源が発した光を液晶に透過させ、カラーフィルターを通して映像をつくり出します。DLP方式は、DMD素子上に配置された数百万もの微細なミラーで光源が発した光を反射させ、カラーホイールと呼ばれるフィルターを通して映像を実現します。

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    ベンキューアジアパシフィック Jeffrey Liang社長(写真左)、ベンキュージャパン 菊地正志社長(写真右)

―― 薄型テレビの大画面化が進む現在、HT2550ならではの部分はなんでしょう?

Liang氏 : HT2550は4Kモデルとしてはとてもコンパクトで、リビングでも自分の部屋でも大画面で4K画質をお楽しみいただけます。その意味でHT2550はホームシアター市場における「ゲームチェンジャー」になりうると考えています。

―― ホームシネマ以外の用途で、どのように活用されると考えていますか?

Liang氏 : 場所を選ばず使えるということもありますが、日本のゲーム市場の大きさに期待しています。DLP方式は描画が速く、信号出力から実際の映像を得るまでのレイテンシも短いですから、ゲームに適しています。サッカーなどのスポーツ番組を見るときにも、HT2550の描画スピードは有利に働くことでしょう。

―― 大画面テレビに対するプロジェクターの有利な点はどこでしょう?

Liang氏 : まず、テレビとプロジェクターは競合するものではないと考えています。80インチを超えるような大型画面のテレビを室内に搬入するのは、大変ですよね? 一方、なにか飲みながらニュース番組を見るなどカジュアルな用途には、テレビのほうが適しています。

やはりテレビとプロジェクターでは用途が違うのでしょう。実際、テレビは大画面化が進み安価になってきていますが、プロジェクターの売り上げが減っているわけではありません。テレビがあってプロジェクターがあるという家庭は、ここ日本でも今後増えていくのではないでしょうか。