Siriの役割

アップルはしばしば、「音楽はアップルのDNAに組み込まれている」と語る。

アップルがMacで音楽を楽しむソフトウェアiTunesを提供し、企業を立て直すまでに成長した音楽プレイヤーiPod、世界最大の時価総額へと導いたiPhone、そしてデジタルストリーミング音楽時代のApple Music、ワイヤレスオーディオのトレンドへ踏み込むAirPodsと、重要なタイミングで、アップルの音楽関連の製品やサービスが登場してきた。

HomePodの役割を読み解くには音質重視で作られたことに注目すべき

Siriの説明についても、Apple Musicの膨大なライブラリを声で再生できる点を強調していた。ただ、HomePodのSiriが、音楽関連の機能しか扱わないわけではない。iPhoneやApple WatchのSiriに話しかけてできることの多くを、きちんと処理してくれる。

ただし、前述の通り、HomePodはまずは、きちんとした音質を誇るストリーミング時代のスピーカーとして家の中に入り込むことを主としている。その点で、家の中で日常的に使われるスピーカー、という存在を確立することを先決としており、Amazon EchoやGoogle Homeとの直接的な競合で勝っても、それはHomePodの成功ではないのだ。

Apple MusicからAIスピーカー体験を作る

今回のWWDCの基調講演を通じて、もう1つ感じたことは、iOSの体験の中で、Apple Musicが1つの指標となっている点だ。

今回、iOS 11でApp Storeが大きく刷新し、ただアプリを検索するのではなく、アプリマガジンのような編集コンテンツが増えた。アプリのハウトゥやゲームのチュートリアルなどのコンテンツが配信され、毎日楽しめる場になったのだ。

デザイン面でも、Apple Musicのデザインが「設定」アプリなどにも適用され、メリハリの付いたタイトルと、グラフィカルで分かりやすい雰囲気を前面に押し出した。

HomePodも、Apple Musicをスマホなしで、声だけで操作できるようにするデバイスとして登場した。膨大な編集されたプレイリストの中から最適なものを再生したり、より強い目的性を持ってSiriを利用することになる。

こうした初期の「目的性を持って音声アシスタントを使う」体験を作ることこそ、アマゾンやグーグルと、アップルとの違いだ。アップルは、HomePodでの音楽をテーマとした音声アシスタントの利用から、生活の中でのAI活用を拡げていく、そんな戦略を歩み始めた。