最大4.2GHzの高クロック設定

それでは、「Core i3」の特徴をさっくりおさらいしたところで、Core i3-7350Kのスペックを見ていこう。

CPU-Zから見たCore i3-7350K。最大4.2GHzの高クロック設定だgTDPは60Wと低め。そして拡張命令ではAVX2などにも対応する

定格クロックは4.2GHzとかなり高めの設定だ。例えばCore i5の最上位であるCore i5-7600KのTurbo Boost時の最大クロックに並ぶため、シングルスレッド性能ではさほど変わらないだろう(LLC容量分の違いは生じるはずだが)。マルチスレッド性能に関しては、HTTに対応するといっても先のとおり、コア数が少ない分のハンデはある。ただ、こちらも4.2GHzという比較的高クロックの設定であるので、ある程度緩和されるだろう。

比較的高クロックでありながらTDPが60Wと低めであるのはコア数やLLC容量などの要因と思われる。逆に、OCを楽しむ観点で見れば、ほかの「K」付きプロセッサが91Wであることから30W程度の余裕があると考えることができる。

統合GPUはIntel HD Graphics 630。上位のCPUと同等のスペックだ

統合GPU機能は、Intel HD Graphics 630を利用する。これは、第7世代Coreプロセッサの統合GPUとしてはGT3に相当するもので、Core i7-7700KやCore i5-7600Kと同じスペックだ。一応、3Dグラフィックス処理もCPU処理が多少関わるため、上位のCPUと同じ性能にはならないが、GPU機能単体で見れば引けを取らない。

まとめると、Core i3-7350Kは定格で運用しても普段使い用であれば十分に通じるが、OCにチャレンジすれば、CPU性能の面を強化できる。まだまだシングルスレッド性能がモノをいうアプリケーションはある。現在のCoreシリーズの定格における最大クロックは4GHz台半ばなので、これを4GHz台後半~5GHz台へと載せることができれば、より快適な動作が見込めるのではないだろうか。その視点では面白みのある製品だ。

OC狙いで重視したいパーツのツボを押さえよう

続いては、OCを目的とする場合におけるPCパーツの選び方に言及しておきたい。1つ目はマザーボード、というよりもそこに搭載されるチップセットについて。現在、倍率変更によるOCをサポートしているチップセットは、「Z」の付くモデルのみだ。Intel 200シリーズチップセットでは、Intel Z270のみとなるので、これを搭載するマザーボードであることが必須条件だ。

次に本格的なマザーボード選びとなる。OCに強いマザーボードと言っても、Core i3-7350Kは元々の消費電力(の目安となるTDP)が低いので、激安マザーボードを除けば、ほとんどのマザーボードである程度のOC性能が得られるだろう。

ただ、あえてOCに強いマザーボードの目安を1つ挙げるならば、VRM部分のフェーズ数に注目したい。フェーズ数が多ければ、より多くの電力をCPUに供給できるとともに、1フェーズあたりの負荷を下げられるため、限界に達しにくいといったメリットがある。Core i3-7350Kは、Core i5やi7のOCと比べればコア数が少ないぶん条件が緩いだろう。メインストリームモデルで標準的な7フェーズを超えていれば問題ないと思われる。

CPUクーラーとグリスもポイントになる。CPUの消費電力は、動作クロックに比例し、高クロックであればそれだけ発熱量も増える。OCにより上昇する消費電力、発熱に対し、それをキッチリ冷やせる冷却性能を持った市販のCPUクーラーを選びたい。ただ、限界を探るようなOCでなければ、3,000~6,000円台のいわゆるメインストリーム帯のCPUクーラーでも十分な性能を持っている。

10,000円を超える空冷クーラーや、水冷クーラーは、より限界に迫るOCにチャレンジするときや、OCとともに静音性も両立させたいような時に選べばよい。グリスについては、コストもそれほどかからないので、積極的に高性能なものを選んでもよいだろう。

そして電源にも注目したい。そもそも電源は、PC内の全てのパーツに電力を供給する部品であって、安定面からも妥協をするべきではないわけだが、OCのように電力が増えるシチュエーションではそれがよりシビアになる。出力には定格時以上の余裕を見たほうがよく、さらに言えば+12Vの安定性やノイズ面にも注意したほうがよい。

なお、OCといえばメモリも視野に入るが、倍率変更によるOCのみにとどめるのならば、無理にOCメモリにこだわる必要はない。もちろん、Intel XMPでOC動作させれば、CPUのOCとの相乗効果もある。また、上級者がBCLKのOCも行なうのであれば、より高クロックで動作することを保証するOCメモリが有効であることは言うまでもない。

ここまでが一般的なOC向けのパーツ選びだ。その上で今回用意した検証環境を紹介していこう。

■今回の検証環境
CPU Intel Core i3-7350K
マザーボード ASUS ROG STRIX Z270G GAMING(Intel Z270)
メモリ Crucial Ballistix BLS4K8G4D240FSA(DDR4-2400、8GB×2)
ストレージ Crucial MX300 CT750MX300SSD1(Serial ATA 3.0、3D TLC、750GB)
電源 SilverStone SST-ST55F-PT(80PLUS Platinum、550W)
CPUクーラー サイズ 虎徹
グリス Arctic Cooling MX4(8.5W/mK)

マザーボードは前述のとおりIntel Z270搭載モデルで、ATXではなくマイクロATXだがフェーズ数は多い。メモリは発売当初はOCメモリだが、DDR4-2400動作なので実質的に定格運用だ。電源は今回、統合GPUをそのまま使うため、OCをしたとしても550Wで十分に余裕がある。CPUクーラーは、まさに3,000円台の製品だ。

今回、エンジニアリングサンプルであるため故障させるわけにはいかないということで限界にまでは挑戦しないことも前提としている。グリスは、熱伝導率が8.5W/mKであればまずまずハイエンドと言える。もっとも、これは普段のベンチマークにも用いているもので、性能と価格、そして何より大容量のものが必要なのでこれを選んでいるだけだ。

このあたりが参考になるだろうか。それでは、Core i3-7350Kの定格でのパフォーマンスに移ろう。