さて、三井倉庫箱崎ビルの熱供給プラントには、再生可能エネルギーによる省エネ以外にも利点がある。それは、水のゴミ取りだ。

近年、東京を流れる多摩川にアユが戻ってきたというように、隅田川も水質が戻ってきている。とはいえ、隅田川から取水した水をそのままヒートポンプに利用するわけにはいかない。そこで「オートストレーナー」という設備を介すことで混入物を除去。排水時にも「自動ボール洗浄」という設備を使ってゴミ取りをし、そして隅田川に戻される。

もちろん、大量の水が流れる隅田川でのゴミ取りにこの施設が果たす役割は超微々たるものだ。だが、使った水の不純物を少しでも取り除いて戻すというのは、当たり前のことといえよう。

左はオートストレーナー、右は自動ボール洗浄

立地に左右されるのがカセ

と、これまで書くと、いいことずくめのように思える河川水を使った熱供給プラントだが、やはり課題もあるのだろう。箱崎のプラント登場から30年近く経つと前述したが、現在、同様の設備は4カ所ということだ。箱崎、大阪に2カ所、そして富山にあるという。メリットを考えればもう少し多くてもよいように思える。コストについては規模によってまちまちになるだろうから、なんともいえないが、やはりビルの“立地”に左右されるのか……。豊かな水を利用できる場所にビルがないと、こうしたプラントの設置は難しい。

さて、隅田川といえば、古くから花火大会で有名。そして浅草寺があること、スカイツリーが登場したことによって、多くの観光客が集まるようになった。最近では“川床”を備えた飲食店でも話題だ。こうした観光資源のほかに、熱供給の資源としても隅田川が使われていることを、頭の片隅にでも入れておいてほしい。