Acronisクラウドの容量無制限を断念した理由

―― True ImageからAcronisクラウドへのバックアップは当初、容量無制限でした。最新版のTrue Image 2017からはサブスクリプション制(有料)になりましたが、その理由は?(クラウドストレージをそれほど使わないユーザーにとっては、True Image自体の価格が下がっているため、実質的には値下げ)

マグダヌロフ氏「ユーザーの皆さんも驚いていた(笑)。マーケットで最も安価なクラウドサービスとなり、我々が唯一、真の無制限ストレージを提供していました。ただ今回、それまで無制限ストレージサービスを利用していたお客さまには、今後も最大2年間、無制限で使っていただけます。それ以外のお客さまには、ギガバイトあたり、テラバイトあたりのストレージを買っていただくことになりました。

データの使い方を見ていると、9割方のお客さまが平均250GBを利用しています。したがって我々の新しいソリューションは、大多数のお客さまにとって、無制限の時代よりも安い価格でご利用いただけるわけです。

では、大量のクラウドストレージを利用していた人はどんな用途だったのか。我々は、お客さまが使う容量は分かりますが、データの中身は分かりません。そこで、大容量をご利用いただいているお客さまに直接、ヒアリングしました。私自身、日本のお客さまに聞く機会がありました。

結果として、ほとんどは動画なんですね。さらに『クラウドからローカルに復元(ダウンロード)することはまずない』と。バックアップ用途としては有効活用いただけていないので、我々としても厳しい意志決定をしました(編注:容量無制限をやめる)。とはいえ、クラウドストレージの価格を下げる努力は、今後も続けていきます」

True Image 2017は「ライセンス版」と「サブスクリプション版」を提供

ボックス版の価格

オンライン(ダウンロード)版の価格

―― スマートフォン(iOS/Android)のバックアップについてお聞きします。True Imageのバックアップ機能は、基本的にスマートフォンの各種データをバックアップしますが、Windows PCやMacのように、OSを含めて丸ごとバックアップするのは不可能なのでしょうか。

マグダヌロフ氏「可能か不可能かでいえば、フルイメージバックアップは可能です。しかし実現するには、システムをクラッキングする必要があります。俗にいう、iOSなら『脱獄』、Androidなら『ルート化』ですが、これはやりません。我々としては、開示されているAPIを使ってバックアップを取る方法を考えています。

WindowsやMacなら、ハードウェアレベルでストレージにアクセスし、書き込まれているデータをバックアップできます。しかしモバイルデバイスの場合は、セキュリティ上の問題から強くブロックされています。Android、iOS、Windows Mobileのすべてにいえることで、悪意あるマルウェアから守る手段なのです。もちろん完全ではありませんが……」