フルサービスキャリアとも共存できる

花岡氏: LCCの利用率が上ってくると、近い将来、FSCとの間でカニバリゼーションの問題が生じてくると思います。そのあたりについてどのように考えていらっしゃいますか?

J・片岡氏: 我々が就航している台北線はJALと競合していますし、カンタス航空と競合している路線もあります。ですが、利用されるお客さまの服装等を見てみると、ニーズや客層は違っているんですよね。客層のセグメントをつけられればいいと考えています。運航時間を変える、機内のプロダクトを変える等です。そうしたセグメントを設けることで、お互いにお客さまを増やすことができると考えています。

ジェットスター・ジャパンはグループ内で、180路線で週4,200便以上を運航している

P・森氏: 確かにピーチはANAホールディングスから出資を受けていますが、経営・営業的にも独立しており、経営的に相談したことは今までありません。大阪=仙台はドル箱ですから、ANAは我々が就航することに対してネガティブに感じていたでしょう。ですが実際、大阪=仙台の総需要は増えています。それはいくつかの路線で実現できています。ピーチのサービスが嫌な人はANAを選びますし、いいと思った人はピーチを使ってくれています。選択肢を増やすことにつながっています。また、ANAは中期経営計画で日本の国内市場は縮むと考えていますが、我々は拡大すると思っています。その意味でもすみ分けができるのではないでしょうか。

ピーチは拠点である関西の企業や空港等と協力することで"ビジネスアライアンス"を確立。今後、仙台でも同様のビジネスアライアンスの展開を目指している

V・山室氏: 我々もANAやピーチと競合しています。ですが、ANAから客層を奪っているとは思っていません。今まで飛行機に乗ったことがない人、海外に行ったことがない人を開拓できていると思っています。バニラとANAとの間で、お客さまは自然と分けて使っていると思います。

訪日外国人に地方の良さを伝える機会を

花岡氏: 興味深い見解をうかがえたのではないでしょうか。では今度は国際線についておうかがいします。国際線市場について、市場成長率はどうでしょうか。

S・Wang氏: 我々は国際線を運航するためにできたような会社です。日本のインバウンドがどんどん拡大していて、日本国民の生活にも直接関係してきています。ですが、アウトバウンドも拡大していかなければインバウンドは続かないと思っています。

V・山室氏: 国際線はどんどん増やしていこうと注力しているところです。実際、台北線の半分以上は台湾からの人たちですし、潜在性はまだまだあると思っています。それと同様に、多くの日本の人も、もっと海外に行ってほしい。どの路線でも海外に手が届く価格を提示することによって、選択肢が広がってきます。LCCとしてまだまだできることがあります。

P・森氏: Jナンバーを背負っている以上、まずは国内で基盤をつくることを考えています。これがまず第一です。ですが、特に沖縄線は70%がインバウンドというような状況です。日本の人にも、若いうちから海外にもっと行ってほしいですね。インバウンドの場合、関空等を見てみると、プレイヤーとなる航空会社はいろいろあります。インバウンド需要が旺盛ですので、当面、インバウンドの供給を満たすために国際線も視野に入れていきます。

J・片岡氏: インバウンド需要をフルに活用したい。その意味で、日本の地方都市にいかに誘導できるかが重要だと思います。まだまだ私たちはやるべきことがあると感じています。ただその場合、地方都市へ直接飛ばすだけでは達成できないので、東京・大阪等の大都市とつながる路線展開が必要になります。

LCCアライアンスでひとつのモデルを確立する

花岡氏: 国際線の展開て言うと、バニラ・エアは5月にLCCのアライアンス「バリューアライアンス」を発表しましたね。実際、どのような効果をもつと考えていますか?

バリューアライアンスは、バニラ・エア、セブパシフィック航空、チェジュ航空、ノックエア、ノックスクート、スクート、タイガーエア・シンガポール、タイガーエア・オーストラリアの8社が設立メンバーとなる

V・山室氏: メガキャリアにおけるアライアンスとは根本的に異なります。LCCである以上、我々自身がネットワークを張ることは難しいです。それはアジアに限定したとしても難しい。なので、それぞれのネットワークを活用することがポイントです。ひとつのサイトで2つのフライトを連続で予約ができるというメリットは、日本のお客さまだけではなく、アジアのお客さまもターゲットにできるということになります。

花岡氏: ある報道では、エアアジアのトニー・フェルナンデス氏が「絶対失敗する」と言っていましたが……。

V・山室氏: 「まぁ、見てらっしゃい」と言いたいですね。我々は初めてということでモデルケースをつくらないといけません。成功すれば、将来的にも業界に新しい形態を提示できるでしょう。

J・片岡氏: アライアンスではないですが、うちはすでにグループ間で連携しています。2~3カ国にまたがる旅行でも、同じような料金形態になっています。そうした機能をつくることは大事だと思います。

花岡氏: では最後に、自由化についておうかがいします。今後、自由化が進むと中国や韓国等との競争が必然化されます。

S・Wang氏: 成田に就航したいがために子会社を設立しました。もしもっと自由化が進んでいたら、日本支社はいらなかったのではと思っています。もっと自由化されることを期待しています。

J・片岡氏: さらなる自由化は結構ですが、日本人的な考え方かもしれませんが、段階的な規制緩和が必要になるでしょう。一気に撤廃すると安全性を担保できないまま、他社との競争関係にさらされる危険性があります。準備をし、力を蓄える必要があると思います。