リコです! 今回からは、転職したくなるようなストレスの原因となる、「人間関係」についてお伝えしていくわ。人間関係の悩みを抱えている人、多いのよね。

心の距離と物理的な距離は関係している!

日ごろから私たちは、家族、友達、仕事仲間、恋愛の相手など、多くの人々に囲まれて過ごしているわけだけど、これらの人間関係のキモってなんだと思う? その答えは、「距離」なの。

社会心理学では、「パーソナル・スペース」という概念があるの。これは、相手をどれくらい「物理的に自分の近くに近寄ることを許すか」を表す心理的な距離のこと。この"距離をとる”ということは、私たちが日常的に知らず知らずにやっている行動なのよね。その人との関係で心が傷付いたことがあったら、物理的に距離をとるようになったり、うれしいことをされたり親しくなったら、体がおのずと近付いていったり、その関係によって、どれだけ相手が近付いてくるのを許すかということなの。私たちはみんなこの無意識の行動により、自分の心や体を守っているのよ。例えば、最近、子供だけでなく大人も多く含まれることで話題になっている社会的な引きこもり。これもパーソナル・スペースの考え方が当てはまる面もあるわ。こんな引きこもりの状態は、ストレスや不安、そして物理的に人も遠避け、自分の心や自尊心を外部の刺激から守っている状態の一つかもしれないわ。

より近いパーソナル・スペースを許せる人間関係は、個々にはもちろん異なるけど、一般的には次の順とも言われているのよ。

1位 恋人、配偶者
2位 家族
3位 友達
4位 仕事仲間

仕事場での距離のとり方って、難しくて当たり前

仕事場での人間関係の難しさは、このパーソナル・スペースと深いかかわりがあるの。恋人、家族、友人との関係では、ある程度自分自身で物理的な距離をコントロールできるわよね。今日は会わないとか、一緒の部屋にいないようにするとか。でも職場では、自分が今日どんなにその人と会いたくなくても、一緒にデスクを並べなくてはならなかったり、仕事関係上どうしても付き合わなければならなかったりするのよね。本来ならパーソナル・スペースを広く必要とするような関係だったとしても、その人から遠ざかるわけにはなかなかいかないのが、職場の人間関係の特徴。しかも、職場の人間関係は、上下関係、横のつながり、利害関係と、さまざまな種類の要素をはらんでいて、物事をより複雑にしているのよね。

世の中には波長の合わない人や相性の良くない人はたくさんいるし、どんなにこちらが努力しても、どうしても分かり合えない部分が出てくることはあり得るわ。すべての人と仲良くなることは、やっぱり無理なこと。そういう時には、どういうふうに対処したらいいのかしら? これから伝授しちゃうわ!

人間関係の悩みを解決するには、ほかの悩みを解決するのと同じように、何について自分が悩んでいるのかを理解する必要があるの。

悪いのは相性? 人間性? それともこれってパワハラ?

職場の人間関係で問題になってくるのは、やっぱり上司とソリが合わなかったり、苦手意識を持って接してしまったりということね。でも、その苦手意識は一体どこから来るのかしら? ちょっと考えてみて! 上司との人間関係が苦手な場合、「相性が悪い」ということで解決してしまいがちだけど、実はそれだけで解決できない問題があることも。第5回で触れた「職場の困った人たち」のような上司もいるのよね。その場合、仕事の振られ方や仕事の流れにもかなりの悪影響があって、ストレスになってしまうこともあるの。

そして、上司との関係で問題になりがちなのは、パワーハラスメントの問題。実はパワーハラスメントを受けているけど、それに気がつかないこともあるのよね。パワーハラスメントとは、「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の適切な範囲を超えて、継続的に人格や尊厳を侵害する言動を行い、就労者の働く環境を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること」(「管理職のためのパワーハラスメント論」梅津祐良、岡田康子著)ということよ。

具体的には……
●身体的な暴力:実際に、殴られたり、肩を小突かれたり、書類で頭をたたかれたりということ。

●精神的な暴力:「こんなこともできないのか!」「役立たず」「バカ」などとののしったり、人格を否定するような発言をする。「嫌なら、辞めてもいいんだぞ」と脅される。無理難題を言われ、できない場合には「気合が足りない」などと言われる。自分のミスを責任転嫁する。学歴、性別などで差別する。そのほか、過大な目標や、飲みたくないのに無理やり飲み会に参加させられたりすることも、精神的な暴力になることもあるの。このほかにも、たばこや飲み物、お弁当をいつも買いに行かせるなどの行為も、パワハラに分類されることもあるのよ。

●無視をする:あいさつをしない、仕事をまったく与えない、書類を渡さない、メールを出さない、会議に呼ばないなども、パワハラに分類されるわ。

上司との関係に悩んでいる? 対策を考えよう!

パワーハラスメントは、どんどんエスカレートする特徴があるから、ずっとパワーハラスメントを受け続けてしまうと、抑うつ状態になってしまったり、心身に影響が出てしまうこともあるの。だからパワーハラスメントを受けていたら、早めにそれに気がつき、対策を練ることが大切なの。

あなたが上司との関係で何を苦手にしてるのか? どうしてその人が苦手なのかを整理できたかしら? それでは次は対策よね! パワーハラスメントの問題を含む人間関係での対策を考える時には、アサーション・トレーニングが効果的なの!

あなたはどのコミュニケーション方法をとっている?

アサーション・トレーニングは、上手な自己表現ができるようになるためのトレーニングのこと。このコラムの第4回で、面接場面で使えるコミュニケーションの技法としてお伝えしたけど、アサーションを用いたコミュニケーションは、パワーハラスメントを受けている時にも活用できるの。例えばこんな時、あなたならどうする?

あなたは、上司からパワーハラスメントを受けています。明らかに無理難題を押し付けられ、いじめられています。いつものように、ポンと資料を渡されて、「今日中にこれ整理しておいてくれ」と言われます。ほかの仕事もガンガン頼まれていて、そのうえ、どう考えてもその資料は今日明日必要なものでもなく、わざわざ置いたとしか言いようのないもので、あなたはすごくつらい状況にいます。あなたはどう対処しますか?

アサーションの概念では、以下のような返答があると想定されているわ。

1:(絶対無理…… でもまた怒られるし……)と思うが、何も言わず残業で対処。

これは【非主張的コミュニケーション】と呼ばれ、相手を優先するあまり、自分を抑えてしまう自己表現よ。このコミュニケーション方法をとることが多い人は、相手のことを気にし過ぎて、断りたいのに「No」と言えずに後悔してしまいがち。相手に対して、自分の気持ちが伝えられないため、ストレスや不満、無力感がたまりやすくなるの。

2:「そんなの無理に決まってます! 明日必要なわけがないじゃないですか!」と怒りにまかせ言う。

これは【攻撃的コミュニケーション】と呼ばれ、自分を、相手の言い分や気持ちよりも優先させる自己表現方法よ。自分の主張や言い分を尊重するあまりに、相手のことを軽んじてしまいがちになり、相手に不快な気分を与えてしまうことが多く、人間関係が長続きしない状態に陥りやすいの。

3:「昨日頼まれた仕事に掛かりっ切りになっていて、手が空かない状態です。私は、どうもこの資料は今日じゅうには無理なようで、ご期待に沿えなくてすみません。優先順位を決定していただければ助かるのですが」と聞く。

自分と相手とのバランスがとれた自己表現を

ずばり、この3の答え方が【アサーティブ・コミュニケーション】よ。自分も相手も大切にしようというスタンスで、自分の考えや気持ちを率直に、かつその場の雰囲気にふさわしい方法で相手に伝えるの。自分と相手のどちらにも一方的な負担をかけず、バランスをとった自己表現ね。

ぜひ、このアサーティブ・コミュニケーションを一度試してみて! びっくりするほどスムーズに話が進む時があるわ。しかも、自分のストレスになりにくいうえに、相手の負担も減るから、イライラ解消のための八つ当たりのモラハラも少なくなるかも! あまりにひどい場合は、会社の専門窓口と相談してね。でも、そこまでいかないケースで、うまくいかない相手とのコミュニケーションにはおすすめよ!


リコ
大学の心理学科を卒業後、大学院を経て臨床心理士に。精神科・心療内科クリニック、大学病院精神科、企業のカウンセリングルームで、悩み相談から、うつ病などの病気のカウンセリングの経験を持つ、心のエキスパート。 (情報提供・監修:株式会社ライフバランスマネジメント研究所)

キャラクターデザイン/イラストレーション:プラスプランニング 上原 ゆかり

※この記事はシゴトサプリより提供を受けています