iPad Proのキャッチコピーは「The biggest news in iPad since iPad(iPad登場以来、iPadに関する最大のニュース)」だった。

この日Tim Cook氏が壇上で掲げた唯一の製品がiPad Proだった。減速し始めたiPadを再び加速させる製品として期待していることが伝わってくる

iPad Proは、単純にiPadを大きくしただけのタブレットではない。Appleがより大きなタブレットを開発した背景には、同社が「デスクトップ・クラスのCPU」と表現するA9Xプロセッサの性能がある。初代iPadに比べるとCPU性能は最大22倍、GPU性能は最大360倍。これまでiPadは主にコンテンツを消費するためのデバイスだったが、A9Xなら3Dデザインの作成・レンダリングや4Kビデオのマルチストリームの編集といったPCを必要としていたタスクもタブレットでこなせるようになる。そのパフォーマンスを活かせるようにデザインした結果が12.9インチのiPad Proである。

CPUテストでは過去12カ月に出荷されたポータブルPCの80%をiPad Proが上回る、またGPUテストだと90%のポータブルPCを上回る

iPad Air、iPad Air 2、そしてiPad Proと飛躍的にCPU性能を向上させているiPad

12.9インチの画面はレターサイズの紙を広げるようにドキュメントを表示できる。短辺が2,048ピクセルであるのもポイントの1つだ。これは9.7インチのiPad Air 2の長辺と同じであり、2つのアプリを並べて使用できるiOS 9のマルチタスク機能「Split View」の片方にiPad Air 2の画面がすっぽり収まる。

12.9インチのディスプレイでは、雑誌のページを開くように写真や記事を大きく表示できるd

12.9インチディスプレイの解像度は2,732×2,048ピクセル、2,048×1,536ピクセルのiPad Air 2の画面がSplit Viewの片方(左側)に収まる

Appleはこれまで、iOSデバイスでは指のみの操作にこだわってきた。iPad Proも基本的にタッチで操作する端末として設計されている。しかし、iPad Proはコンテンツの作成や編集といったクリエイティブな作業にも適したiOSデバイスである。そこでiPad Pro用にキーボードカバー「Smart Keyboard」とスタイラスペン「Apple Pencil」を用意した。

Smart Keyboardは、ハードウエアキーボードを備えたタブレットカバーである。Smart Coverと同様、マグネットでiPad Proに接続し、折りたたみ方を変えることでカバー、スタンド、そしてキーボードとして利用できる。 iPad Proがタブレットであるメリットを損なわずに利用できるキーボードだ。

ソフトウエアキーボードもフルサイズで快適なタイピングが可能だが、ソフトウエアキーボードではアプリ画面が隠れてしまう

Smart Keyboard、誘電性ファブリックを用いたキーはわずか3.2ミリの薄さで、スプリングを用いることなく、しっかりとしたキーの感触を実現している

指で操作するように設計されたディスプレイでスタイラスペンを使うと遅延やズレが起こって使いにくい。Appleは、指に加えて、精密さと高速なレスポンスが求められるペンによるドローイングに対応できるようにiPad Proのマルチタッチ・サブシステムを設計した。iPad ProとApple Pencilの組み合わせによって、ペン先の位置、圧力、そして傾きが正確に読み取られ、遅延なく動作し、ペンや筆を使って紙に描くような自然でなめらかな表現が可能になる。

墨汁の濃淡やかすれも表現できるApple Pencil

「Adobe Photoshop Sketch」とApple Pencilを使って、水彩表現を実際に描いてみせるAdobeのEric Snowden氏