"狂犬"は「台本通り」だったのか?

そして、ぜひ聞いてみたかったのが、ネタの作り方。加藤は極楽とんぼ時代もネタ作り担当だっただけに、今回のコントライブもどんな形で作っているのかが気になる。

「ネタ作りはけっこう時間かけますね。今から4カ月くらい前に作家との雑談からはじまったんですけど、そのあと週1で会ってゼロから作っていきました。そのあと台本の1稿が上がったら稽古なんですけど、『こっちの方が良くない?』とか、みんなで言い合いながら2稿、3稿、4稿とどんどん変わっていきます。ネタを作りはじめたら最後までずっと楽しいんですよね」

ちなみに、極楽とんぼのネタ作りはどうだったのか? 特に「"狂犬"と呼ばれるほど暴れたときの台本はどこまであったのか?」が気になる。

「コンビになりたてのころは(相方と)2人で作っていましたね。そのうち僕が考えるようになって、そのあと若い作家と2人で作る形になりました。最終的に台本として仕上げてくれる人がいるので、その方がかなり楽なんですよ(笑)。もともと"結果的に狂犬になる"ようなコントがあって、それを『とぶくすり』の(演出・片岡)飛鳥さんが『もっとやろうよ』と言ってくれてやることになりました。(キレるのは台本の)流れがあったのが半分、アドリブ半分くらいかな」

ちなみに前作『イルネス共和国』でも加藤はキレて矢作兼を投げ飛ばし、「サマージャックボウル」という架空のスポーツで動き回るなど、狂犬時代を思い出す一面を見せた。ただ、本当は「恥ずかしいから、あまりやりたくない」という。それでも加藤は期待を裏切らないタイプであり、"イルネス"は「病的な、病気な」という意味だけに、今回も"結果的に狂犬になる"姿を見せてくれるのではないか。

『極楽とんぼ』最後のライブ会場

前作『イルネス共和国』は、「短いコントが実はつながっていて、最後に大オチが来る」というパターンだった。緻密に計算された設定と、小さなボケの連続、ライブらしい自由なアドリブで楽しませてくれたのだが、今回はどんな構成になるのか? そして、小木博明とマイケル富岡に次ぐゲスト出演はあるのか?

「ごめんなさい! 言いたいけどバラシになっちゃうので、言えないんですよ~(笑)。『今世紀最大の発明』というテーマだけは言えるんですけど。でも、前回とは全く違うアプローチで、全部変えたので楽しみにしていてください。ゲストはまだ決まっていません……前回もノリで決めましたから」

そう話す加藤の顔は、満面の笑み。「コントライブは同じ仕事の1個ではなくて特別」と話すように、思い入れたっぷりなのだ。ちなみに会場の東京グローブ座は、13年前に極楽とんぼが最後の単独ライブを行った場所という。思い出の場所で、「しっかりお笑いをやる場が少なくなっているのでガツッとやります」と語る加藤の目は輝いていた。

後編のテーマは、"司会者・加藤浩次"と"俳優・加藤浩次"。「MCの仕事が増えている理由」「『スッキリ!!』のリニューアル」「好きな出演ドラマ」などの話を尋ねていくので、乞うご期待。

■加藤浩次(かとうこうじ)
1969年4月26日生まれ。北海道出身。高校卒業後に上京し、東京ヴォードヴィルショーの研究生をへて1989年に『極楽とんぼ』を結成。初のレギュラー番組『とぶくすり』への出演をきっかけにブレイク。芸人としての活動に加え、MCや俳優など、さまざまなフィールドで活躍を続ける。
■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。