最初にお話をしてくれたのは、ベテリナリー事業部の藤崎智彦さん。獣医系大学を卒業後、動物病院に臨床医として3年間勤務したあと、臨床開発モニター職を経てロイヤルカナン ジャポンへ入社して3年余り。営業職として活躍する傍ら、昨年からエリアマネージャーとして、同じく獣医師免許をもつ営業職たちのマネジメントも担当している。

ロイヤルカナン ジャポン ベテリナリー事業部 藤崎智彦さん

獣医師から営業職へ

--なぜ獣医師免許を?

藤崎さん「子供の頃からハムスターやインコ、犬を飼っていて動物が好きだったのと、4才上の姉に借りた『動物のお医者さん』というマンガの影響で、小中学生のときにはもう、獣医になろうと決めていました。受験のときも迷わず、獣医大だけ。でも、大学に入ってから気づいたのですが、獣医には、人間のお医者さんのように生涯勤務医として働く人は少なく、一生仕事を続けるならいずれ自ら病院を開業するしかないのが実状です。卒業後は3年間動物病院で働きましたが、選択肢の少なさに悩みましたね」

--営業職になった経緯は?

藤崎さん「転職活動のとき、臨床医の経験を生かせる仕事がいいとエージェントに希望を出したら、ロイヤルカナン ジャポンを紹介されたんです。でも、最初は『営業』という言葉にやや抵抗がありました(笑)。研究とか学術的なことに携わる部署の方が僕には向いているんじゃないかって。でも、面接で『獣医さんと話す仕事だ』と聞いて面白そうだな、と。以前から栄養学に興味はありましたし、そういう営業なら、現場経験も生かせるかなと考えたんです」

開放感のあるロイヤルカナン ジャポンのオフィス

営業職としての目覚め!? 動物病院での一コマ

藤崎さんの仕事のひとつは、動物病院を訪問し、獣医師や看護師に対して、栄養学のレクチャーをすること。

藤崎さん「最近、人前で話すのがちょっと楽しくなってきました。必ずウケる鉄板ネタを日々追い求めています。例えば、肥満についてのセミナーでは、最初に太ったブチ模様の猫の写真を見せます。その子がダイエット用フードを食べ続け、ダイエットに成功すると、何と! "しま柄”になっちゃうんです。太っていたときは模様が膨らんで、丸く見えていたんですね。次に黒猫の写真を見せて、『この子は模様が見せられなくて、残念!』みたいな(笑)。そういう話をして、少しでも反応がいいと、すごくうれしい。営業の仕事に目覚めていましたね…」

--獣医師免許、役に立っていますか?

藤崎さん「名刺に『獣医師』と入っていると、それだけで安心してもらえます。ときには、最前線で活躍する経験豊富な先生方から、『この症例にはどのフードがいいか』『この薬と併用していいのか』などという高度な質問を頂き、焦ることもあります。でも、そういう質問をいただけるのも、獣医師免許をもっているからだと思うとうれしいですね」

獣医さんから高度な質問をされることもあるという

日本発の柴犬用フード誕生が誕生したきっかけ

次に話をしてくれたのは、プロフェッショナル事業部の竹ノ谷剛さん。同社の営業は他業種から入ってきた人がほとんどだが、竹ノ谷さんは新卒で入社したうちの1人で、勤務年数は間もなく20年。主にブリーダーや訓練所の方々向けの営業を担当している。獣医師免許はないが、大学では畜産学科で栄養学や飼養学を学んだ。

ロイヤルカナン ジャポン プロフェッショナル事業部 竹ノ谷剛さん

--ブリーダーさんには、どんなお話を?

竹ノ谷さん「ロイヤルカナンには『バース&グロース』プログラムという、子犬の成長を母犬のお腹にいるときから考える栄養プログラムがあります。普通なら子犬用ひとつのところを、赤ちゃんのいる母犬用、赤ちゃん犬用、子犬用と3段階に分け適切なフードで子犬の成長をサポートしています。そういう細かな特徴を踏まえて、ブリーダーさんたちにそれぞれの栄養や使い方を伝えるのが、私たちの仕事です。ドッグショーやキャットショーに出る方に、『ショーに出るための筋肉をつけるには、この犬種だとこの時期にはこのフードがいい』といったアドバイスをすることもあります。それから、ときには都市伝説のような質問に答えなければならないことも…(苦笑)」

--都市伝説!?

竹ノ谷さん「そうなんです。例えば、このフードを食べるとオスばかり生まれるとか、逆にメスばかりだとか。統計的にありえないことでも、きちんと確認してお答えしないと駄目ですよね。それから、『フードに熱湯をかけ、湯通しすると油が抜けていい』と言われたこともあります。そんなことをしたら、せっかく最善のバランスで加えている栄養が壊れてしまいますよ!と」

あんなところやこんなところにも犬・猫のビジュアルが!

--お仕事の面白いところは?

竹ノ谷さん「印象に残っているのは、柴犬用フードの開発段階に携わることができたことです。今まであまり接触がなかった日本犬のブリーダーの方々とコンタクトを取るところから始まり、アンケート調査やテスト給与を経て、製品ができたときにはとてもうれしかったです。フランスのメーカーが作った日本発の柴犬専用フードですから。発売後は、日本犬のブリーダーの方々が集まるセミナーの中で講演させていただいたり、展示会へ出展しています。そのたびに柴犬専用フードを使用される方が増えていくのは充実感がありますし、やりがいを感じました。使ってくださる方からの評価も高いですし、これを食べた柴犬がショーで勝ったりすると、すごく励みになります」

竹ノ谷さんが開発に携わった「柴犬専用フード」

ペットフードを売るためではなく、犬と猫を健康にするために働く営業職。そのパッションがあれば、この国が犬と猫が健康で幸せな生活を送れる本物のペット大国となる日は近いかもしれない。