先週末、東芝とインテルが共同で主催し、プロの「実演販売員」がパソコンを売るという試みを実施した。ピンと来ないかもしれないが、巧みな話術と実演を駆使して、ミキサーや包丁、掃除用具などを販売する様子を店頭などで見かけたことがあるだろう。あの"ノリ"でパソコンを実演販売するというものだ。

仙台のヤマダ電機 LABIを会場に、パソコンの"実演販売"を行うユニークな試みが催された

会場となったのは仙台駅前のヤマダ電機、LABI仙台。パソコン関連の売り場フロアの一角に、プロ実演販売員の石田龍二氏が立った。石田氏は、普段は日用品や家電を取り扱っており、予習やプライベートでの知識はあれど、パソコンについては専門家ではない。当日は、「あまり詳しくないお客にもわかりやすいよう特徴を伝える」ことに努めると話していた。実演販売する商材は東芝の最新ノートパソコンから、スタンダードノート「dynabook T75」、高解像度の高性能ノート「dynabook KIRA V83」、多用途対応のスタイル変形が特徴の「dynabook KIRA L93」の3モデルだ。

当日はベテラン"販売士"の石田龍二氏が担当

dynabook T75

dynabook KIRA V83

dynabook KIRA L93

集まってきた見物客を前に、まずはKIRA V83を軽そうなそぶりで持ち上げると、それを「どうですか?」とお客さんに手渡しながら、「女性が持っても、男性が持っても」と掛け声をかけると、実際に持ってみたお客さんが声をそろえて「軽い!」と声を挙げる。すでに"つかみ"はオッケーな感じだ。「なぜ軽いかわかりますか? 素材がマグネシウムなんです。鉄の1/4しか(重さが)無い。だから女の子が持っても軽いんですね~」とさりげなく技術的な特徴を説明する。

石田氏がしゃべりだすと、お客さんが次々と集まってきた

「これ、とっても軽いから持ってみて~」とKIRA V83を手渡す

石田氏は矢継ぎ早に、「まだまだこだわってます。高画質そして高音質。ちょっとこの動画見てください」と動画再生のデモを開始。「絵がきれいでしょう。そして皆さん、ちょっと耳を澄ませて集まって、音を聞いてみて。いいでしょう。スピーカーがいい。さらにスピーカーの位置もちょっと変わったところにある。これが東芝さんの技術なんですね~」と、KIRA液晶の映像の良さをアピールし、さらにharman/kardon共同開発のスピーカーを、本体底面に設置し、机からの反響を利用し音質を高めているポイントまでさらりと印象付けてしまった。

「この動画、見てください。きれいでしょ~」

「シー、静かに。じゃあ今度は音を聞いてみて。これが東芝の技術です!」

「で、そんな東芝のパソコンですが、パソコンって熱いですよね? じゃあこの東芝のパソコンさわってみてください。熱くないでしょう? (お客さんが「熱くない!」と反応) そうなんです。インテルの新しいCPUは熱を出さないんです」。「バッテリーだってすごいんですよ。よく充電し忘れて、いざというときバッテリがない。困ったと。でもこのパソコン、バッテリが10時間以上持つ。充電し忘れても何とかなっちゃうくらい省電力なんです」などと、少し難しい内容でも噛み砕いて軽快に紹介しまくる石田氏。

「これ、表面触ってみて。熱くないでしょ~。これがインテルのCPU」

「そして皆さんちょっと見てて」と今度はKIRA L93を取り上げると、ここからがクライマックスだった。「3、2、1、ハイでタブレットになります!」とKIRA L93の変形機構を紹介し、集まった見物客から「おおー」と歓声。あとは畳み掛けるように「はいっ! はいっ! はいっ! はいっ! 七変化っ!」とKIRA L93を回転させたりキーボード部を着脱したりしながら、合計7つのスタイルにひと息に変形させて驚きを誘う。

「じゃあよ~く見てて。はいっ。くるりんとまわすとタブレットになっちゃいます」

タブレットのみならず、シーンにあわせて7つのスタイルに変形するKIRA L93を紹介

「はいっ! はいっ! はいっ! はいっ! 七変化っ!」と、まばたきもできない

最後にひと通り商品のお値段を発表した後、「本当に興味のある人はちょっと残ってください。(小声で)もうちょっと何とかなるかもしれないので」と締めくくった。ここまで、ほんの数分の間の出来事だった。

今回の試みの仕掛け人の一人で、インテルのマーケティング本部でパートナー事業を担当する村上雄介氏によると、これまで、「新しいパソコンを紹介する試みは今までも頻繁に取り組んでいたが、もしかしたら伝わりきらない部分もあったかもしれない。実際に店頭で商品を販売するスタッフも、わかりにくい部分を説明するのに苦労していたかもしれない」という課題を感じていたことが、今回のようなユニークな試みをやってみようというきっかけになったのだという。

最初から知識がある程度あり、目的もあるユーザーには、既存の専門スタッフが店頭で対応するやり方がある。そうではなく、本当に通りすがりのような人、まだあまりパソコンを知らないような人にまで伝える、興味を持ってもらえる、とりあえず足をとめてもらうために、「わかりやすく、楽しく、エンターテイメントで」ということを主眼としたそうだ。取り組みは実験的なものであったが、たとえば今回のものは12月6日と7日の2日間の実施で、取材をしたのは7日のことだが、その前日6日の販売では東芝のパソコンが2倍近く売れたという成果が見られたそうだ。

山場もりだくさんで聞いていて飽きることなく、内容が頭に入ってくる

今後も、今度は12月20日と21日の2日間、名古屋駅前のビックカメラで同様のプロ実演販売員によるパソコン実演販売を催す予定だそうだ。反応が良いようであれば、店舗からのニーズがあった際にしっかりサポートできる体制を、インテルとしても整備していきたい意向だそうだ。これまでは、パソコンが勝手に一般化し、放っておいても人々の生活の中に普及していたが、スマートフォンやタブレットの興隆もあり、何のアクションも無しでは、昔のような「特定の層が使うもの」へと逆戻りしてしまうなんてこともあるかもしれない。パソコンを"日用品"であるかの様にイメージさせる今回のような試みというのも、意外と"イロモノ"扱いできないのかもしれない。