なんか集まってるし……

ちなみに人間として登場するのは、ハマケンこと浜野謙太が演じる主人公・のぞみのカレだけ。あとの登場人物はすべてラブドールです。

1話目を再生すると、そのハマケンがいきなりラブドールと絡んでいるシーンからスタート。……しかもハマケンが普通にラブドールと会話しており、見てはいけないものを見てしまったような気持ちになります。

見る前は漠然と「人間がいないときだけ喋ったり動いたりするラブドールたちの物語」なのかなと考えていて、「それどんなトイ・ストーリーだよ」と思っていたのですが、どうやら「ラブトピア」のナンセンスぶりはそんなレベルをはるかに超えていたようです。

人間とごく普通にコミュニケーションをとるラブドール……何とも不思議な世界観に思えますが、そうはいっても「ラブトピア」では別にラブドールを人間として扱っているわけではありません。あくまでラブドールはラブドールですし、彼女らも自分たちをラブドールとして認識しています。

でも動くし、しゃべるし、カレに人間の女の影がちらつこうものなら「浮気よ!」と嫉妬もします。なんというか、「ラブドール」を一種の職業としてとらえているような世界観なんですよね。

ハマケンはどんな気持ちで現場に臨んだのだろうか……

そんな感じで、ハマケンとラブドールのベッドシーンという、このドラマ以外では絶対に見ることのない場面からスタートした「ラブトピア」ですが、単に「ラブドールを使うと面白いだろ」という思いつきから始まった一発ネタではないのがすごいところ。

1話、2話、3話と進むにつれて、本作の脚本が意外にも(?)きちんと練られていることに気付かされます。約10分の間に起承転結がしっかり盛り込まれており、5人の個性あふれる女性(というかラブドール)たちが人間顔負けの演技(?)を見せてくれるのです。物語の内容は、ちょっといい話からコメディ、サスペンス的なものまで実にバラエティ豊か。

いや、正直ラブドールをナメてました。性的ではない方の意味でナメてました。まさか5体のラブドールそれぞれに愛着を持ってしまう日がくるとは……。「ダッチワイフなんてどれも同じでしょ」なんて思っている人がいたら、今すぐこのDVDをオススメします。ありきたりな設定、ありきたりな内容のドラマを見るよりも、100倍人生が豊かになりますから。

何よりもラブドールって、綺麗なんですよね。ダッチワイフというと人型の風船に穴を開けただけ、みたいな低クオリティなものを想像するかもしれませんが、最近のラブドールはシリコン製で本当に精巧に作られています。詳しい人にはもはや説明するまでもないでしょうけど、20年くらい前の知識で止まっている人はぜひ「ラブドール」もしくは「オリエント工業」で検索してみてください。ちなみに公式には発表がないようですが、「ラブトピア」のラブドールたちもどうやらオリエント工業製の模様です。

それにしても、こんなわけのわからないぶっ飛んだドラマであるにも関わらず、演出や音楽、オシャレなOP映像など細かい部分までずいぶんしっかり作りこんであるなぁと思ったら、製作陣には住田崇氏やニイルセン、オークラといった『戦国鍋TV』のスタッフの名前がずらり。ああ、なるほどねと思わず納得してしまいました。こんなナンセンスドラマを、これだけ一般的にも楽しめる形で仕上げられるセンスを持っているのは彼らくらいなものでしょう。

……ま、何よりも一番すごいのは、毎回のようにラブドールとベッドシーンを演じるハマケンの演技力と、撮影現場のシュールさだと思いますけどね!