10代でデビューし、ロック新世代を代表する存在として注目を集める女性4人組ロックバンド「ねごと」。昨年春にメンバー全員が大学を卒業し、晴れて「音楽社会人」となったねごとはこの3月に、彼女たち自身が「これが"ねごと第2章"の始まり」と語る最新ミニアルバム『”Z”OOM』をリリースした。第1回のインタビューでは、バンドのこれまでの歩みについて語ってもらったが、第2回となる今回は彼女たちの曲作りの裏側、そして今後の目標について話を聞いた。

写真左より藤咲佑(Ba)、蒼山幸子(Vo&Key)、沙田瑞紀(G)、澤村小夜子(Dr)

――ねごとの曲はビートの利いたダンサブルなものもあればアコースティックなバラードもあったり、とても幅が広いですよね。使っている音色もさまざまだし、1曲に込められた情報量が豊富だなという印象があります。曲を作るときは、4人揃ってスタジオでセッションをしながら作るんですか?

沙田瑞紀(Gt.):いえ、最初は黙々と机に向かう作業が多いんです。まず私がPCで曲の土台を作って、そのデータを他の3人に送ると、幸子がそこにメロディを乗っけて返してきたり、佑がベースを入れて返してきたりして、徐々に形になっていくっていう流れですね。だから最初はそれぞれバラバラで作業することが多いんですよ。4人でスタジオに入って実際に合わせてみるのはその後ですね。ただ、幸子が最初に曲と詞をもってきて始まることもあるし、必ずしも私がきっかけを作るわけじゃないんです。

――じゃあAさんがまずは詞を書いて、その次にBさんが曲を作って、みたいなきっちりとした役割や手順があるわけじゃないんですね。

沙田:例えばリハの休憩中に何気なく弾いていたフレーズから曲ができる、なんてこともあるんです。だから「おっ、いま小夜子が叩いたリズムおもしろい!」って思ったら、こっそり録音したりしています(笑)。

――他のメンバーは気が抜けないですね、休憩なのに(笑)。

沙田:やっぱり今までやったことのないビートとか、やったことのないコード進行とか、そういうものにチャレンジしたくて曲ができるっていう部分はありますね。あとは機材。変わったエフェクターの音とか新しい音色とかを聞いたりすると、それが新曲のきっかけになったりします。

――機材は積極的にいろんなものを試してみるんですか?先日もローランドの新製品発表会にゲスト出演されていましたけど。

蒼山幸子(Vo.&Key.):あのイベントで「FA-06」っていうシンセサイザーを使わせていただいたんですけど、あれはかなり気になりました。音色を作れる自由度が高いし、それに操作性も高いからライブでも使えそうだなぁって。ひそかに今後は「FA-06」に移行しようかと考えてます(笑)。

澤村小夜子(Dr.):私は今回のミニアルバム『”Z”OOM』に収録された『真夜中のアンセム』という曲のなかで、「トリガー・モジュール」という機材を使いました。生音にデジタルを重ねられるからちょっと不思議な音になるんですよね。ライブだと、やっぱり音源に近い音を再現した方がお客さんも盛り上がれると思うので、そういう視点でいろんな機材をトライするようにしています。

――そういえば沙田さんは以前ブログで「『風立ちぬ』が超絶泣けた」って書いていましたけど、映画を見てそれに触発されて曲が生まれる、なんてこともあるんですか?

沙田:ありますあります。映画を見て「こういう世界観の曲作りたいな!」とか。あとはすごくいいライブを見た後の余韻とか。そういうところから曲作りに入っていくことはありますね。特にライブは曲作りだけじゃなくてバンド全体にとって良いインプットになっている気がする。

――印象に残っているライブって何かありますか?

蒼山:なんだろう……いろいろありすぎて(笑)。ひとつ覚えているのは、まだデビューして間もない頃にASIAN KUNG-FU GENERATIONの「NANO-MUGENフェス」に呼んでもらって、そこでベン・フォールズ・ファイブのライブを見たんですね。ベン・フォールズって鍵盤を弾くのに立ち上がって演奏するじゃないですか。私、それまではステージで座って演奏していたんですけど、ベン・フォールズを見た次の日から立って弾くようになりました(笑)。

――蒼山さんのスタイルはベン・フォールズから来ていたんですね!それは意外でした。

藤咲佑(Ba.):大学生だった頃は昼間に学校へ行って夜はスタジオに入って、っていう生活だったので、どうしてもほかのアーティストのライブに行く時間や映画を見る時間が限られてたんですね。でも去年の春に大学を卒業して、100%音楽に時間を使うことができるようになった。特に、今話したようなインプットに時間をかけられるようになったことは大きいですね。

――いよいよ「音楽社会人」も2年目に突入ですが、これからどんな音楽を作っていきたいですか。

蒼山:常に思っているのは、私たちの音楽が「入口」になりたいってことなんです。

――「入口」というのは?

蒼山:大学に行ってたときは確かに音楽との両立は大変だったけど、でも普段音楽を聴かない人と友達になれたり、他の人がどういうことに興味を持っているかを知ることができたりして、それがすごく刺激になったんです。だから、これまであまり音楽を聴いてこなかった人が音楽に興味を持つ、そのきっかけに私たちの音楽がなれたらなって思うんですよね。私たちの曲を聴いて、ライブに来てくれたら嬉しいし、そこからもっと違う音楽に行ってもいい。私たちがいろんな人にとって「音楽への入口」になれたらいいなって思うんです。

撮影:石井健