日本AMD マーケティングスペシャリストの井戸川淳氏

日本AMDは11日、東京・秋葉原のアキバナビスペースで「MANTLE体験イベント in 秋葉原」を開催した。イベントでは2014年1月に正式発表した最新APU「Kaveri」(開発コード名)について改めて解説するほか、「Kaveri」でも対応するグラフィックスAPI「Mantle」のデモンストレーションを行った。

「Kaveri」は、SteamrollerベースのCPUコアにGCNベースのRADEON GPU Coreを統合したAPUで、前世代のRichlandやTrinity(いずれも開発コード名)と比較して、性能が大幅に強化されている。事前の評判も高く発売してから慢性的に品薄状態が続いていた。特に最上位モデル「A10-7850K」の入手が難しいといった状況だった。

日本AMDが参加した直近のイベントでは、「3月上旬を目処に品薄の状況を解消したい」と説明していたが、日本AMD マーケティングスペシャリストの井戸川淳氏によると、ようやく製品の供給も回復してきたという。

「Kaveri」の性能については、すでにマイナビニュースでもレビューをお届けしているが、イベントでもパフォーマンスの高さを強調していた。

■「Kaveri」のレビュー記事はこちら
【特集】「Kaveri」徹底検証!! - 「A10-7850K」で探る新世代APUの実力(前編)

競合製品との比較

AMD製APUは高クロックメモリへの対応も大きな特徴。特にゲームでは効果を発揮する。井戸川氏も「うちのAPUを使うときにはぜひ高速のメモリを使ってほしい」とアピールする

KaveriではGCNベースのGPUコアが統合されたので、デュアルグラフィックスもようやく現実的なレベルに

「Mantle」のデモも

さて、「Kaveri」自身の性能に加えて、AMDが猛烈にアピールするのがイベントのタイトルにもなっている「Mantle」だ。「Mantle」は、2013年10月に発表したグラフィックスAPIで、従来のDirectXで起こっていたオーバーヘッドの問題を解消し、GPUの性能をフルに引き出すことができる。「Mantle」の詳細と性能評価については、レビュー記事を参照してほしい。

■「Mantle」のレビュー記事はこちら
【レビュー】"Mantle"のパフォーマンスを確認する - 対応ゲームでどれほどの性能向上がみられるのか?

「Battlefield 4」では45%性能が向上するという

現時点で「Mantle」に対応しているゲームタイトルは、EA/DICEの「Battlefield 4」のみ。Eidos Montrealのアクションゲーム「Thief」でも、ローンチ時には間に合わなかったが、対応を表明している。AMDによると、EAだけで20タイトルを超えるゲームが対応予定だという。

対応を表明するタイトルは多い(同一のゲームエンジンを利用しているため)が、BF4やThiefではMantle版のローンチが遅れている。ユーザーとしては早く対応ゲームが増えてほしいが、どのくらいのペースで増えていくかはまだわからない

イベントでは、「Battlefield 4」の大会を運営するJCG(Japan Competitive Gaming)の花山慎一氏と、同ゲームの有名プレイヤーであるDustelBox氏が、ゲームプレイヤーから見たMantleのメリットを解説した。

JCG(Japan Competitive Gaming)の花山慎一氏。JCGではEA公認のもとで週に1回個人戦、月に1回チーム戦のオンライン大会を開催しているという

「Battlefield 4」の有名プレイヤーであるDustelBox氏。主にニコニコ生放送などでプレイ動画を配信している

花山氏によると、「Battlefield 4」のトッププレイヤーはPC本体やディスプレイなどに投資し、120fpsという高いフレームレートを維持しようとしているという。60fpsと120fpsでは視認性がまったく異なり、プレイスタイルまで変化すると説明する。

FPSでは高いフレームレートを維持することがプレイするうえで重要だという

しかし、「Battlefield 4」では壁や柵といったオブジェクトの破壊表現がリッチで、プレイする人数が増えると破壊されるオブジェクトも増えることから、負荷が増大し、フレームレートが落ちてしまっていた。Mantleを利用することで、パフォーマンスが向上し、より高いフレームが維持できるという。DustelBox氏はMantle対応版のリリース時にかなり喜んだという。

BF4は最大64人で対戦できるが、64人満員だと負荷が増大する

Mantleによって同一環境でもフレームレートをあげることができるほか、従来よりも低いコストで環境を構築できる可能性もある

実際のプレイでも最高画質の設定でも、おおむね80fps程度のフレームレートを維持しており、快適にプレイできているようだった。

DustelBox氏による実演。ネットワーク状況の都合でオンラインではなく、シングルプレイで行った

最高画質でも60fpsは優に超えている

日本AMDでは既報の通り、「AMD A10-7850K」もしくは「AMD A10-7700K」の購入者を対象に、「Battlefield 4」のダウンロードクーポンをプレゼントするキャンペーンを開始した。キャンペーン期間は2014年4月13日までだが、先着1,000名に達した時点でキャンペーンは終了するので注意したい。

イベント当日よりキャンペーンを開始

各パーツメーカーの注目製品も展示

会場には各パーツメーカーの製品を展示。中には未発表の製品も含まれていた。ここでは気になる製品を紹介したい。

ASUSTeK Computerが展示していたのは、Radeon R9 290Xを搭載した「MATRIX-R9290X-P-4GD5」。MATRIXシリーズは同社のゲーミングブランド「R.O.G」の製品で、ハイエンドゲーマーに加え、オーバークロッカーもターゲットとしている。

MATRIX-R9290X-P-4GD5

「MATRIX-R9290X-P-4GD5」は、従来のMATRIXシリーズが3スロット占有モデルだったのに対して、2スロット占有とスリムになっている。カードの側面に4ピンのペリフェラル電源コネクタを備えている。周辺に「MEMORY HEATER」のシルク印刷と何かの切り替えスイッチが確認できた。

従来よりも薄くなっている

4ピンのペリフェラル電源コネクタ

「R.O.G」のWebサイトに掲載されている製品情報によると、液体窒素を用いた極冷時のコールドバグを防ぐ「Memory Defroster」という機能が搭載されているようで、これに対して使う可能性がある。

一方で、グラフィックスカードの情報を取り込む「VGA Hotwire」のコネクタや、GPUの電圧を変化させる「TweakIt」が確認できず、これまでのMATRIXシリーズとは趣が異なっているような印象を受けた。

MSIはハイエンドグラフィックスカード「R9 290X LIGHTNING」を展示。LIGHTNINGシリーズではおなじみの3連ファンを搭載する。詳細な仕様は不明だが、補助電源が8ピン×2+6ピン×1となっていた。

R9 290X LIGHTNING。ハイエンド志向のゲーマーの中にはLIGHTNINGを待っているユーザーも多いだろう

GIGABYTEからは日本未発表のFM2+マザーボード「GA-F2A88XM-DS2」「GA-F2A88XM-HD3」を展示。APUではマイクロATXやMini-ITXを使った小型PCの人気も高いので、A88X搭載モデルのマイクロATXモデルが気になる人もいるのでは?

GIGABYTEのFM2+マザーボード

左から「GA-F2A88XM-DS2」「GA-F2A88XM-HD3」。Kaveriの品不足が解消するとのことで、マザーボードも活発に動いていくだろう