Surface Pro 2の滑り出しも比較的好調で、クライアントOS(オペレーティングシステム)となるWindows 8.1や、サーバーOSであるWindows Server 2012 R2も正式発売され、一段落したかに見えるMicrosoft。だが、常に一歩先のコンピューター市場を席巻(せっけん)しようと多種多彩なプランを推し進める同社にとって、先行するライバル企業は気になる存在のようだ。今週はApple CEOの発言に反論するバイスプレジデントの発言や、最新のSecurity Intelligence ReportでWindows XPから最新OSへの移行をうながす同社の発言を取り上げたレポートをお送りする。

Tim Cook氏の「94パーセント」発言に反論するMicrosoft

図01 Apple CEOのTim Cook氏

先週お伝えしたように、Apple CEOのTim Cook(ティム・クック)氏による発言に、Microsoftの幹部はブログで反論していたが、その攻撃ならぬ"口撃"はまだ収まらないようだ。今度は第4四半期収益発表後の発言、「locked up 94 percent of the tablet market」に対してである。意訳すると"タブレット市場の94パーセントで成功している"と述べており、iPadの売上高が22パーセント増加したことに関して、こぼれ出た発言だ(図01)。

だが、その発言をひも解くとCook氏はタブレット市場全体ではなく、「教育用タブレット市場」と発言したことがCNET Newsの記事で確認できる。しかし、新モデルをリリースしたばかりのSurfaceシリーズで、今後のタブレット市場に挑もうとしているMicrosoftとしては、決して面白い発言ではない。

図02 MicrosoftのAnthony Salcito氏

ワールドワイドエデュケーション担当バイスプレジデントのAnthony Salcito(アンソニー・サルチート)氏は、自社ブログに「No victory lap: In education, we all have work to do」と題した記事を投稿した(図02)。

Salcito氏は「毎日我々は、教育者の目前に迫る多くの挑戦について聞かされている。それが予算不足だ」と前置きし、Cook氏の発言を引用して、"教育向けたブレット市場において勝者はいない"という意味を込めたタイトルを付けたのだろう。同氏が述べているように「この数字はデバイスのマーケットシェアではなく、(Appleが学生向けにタブレットを割り引き販売し、利用したユーザーが)卒業した後も使い続けているパーセンテージである」と説明している。

教育分野と言えば、Motorola 680x0時代のMacintoshは米国の教育分野でよく利用されていたという。当時のMacintoshは既に市場を形成していたDOSマシンに対抗するアドバンテージが強くなかったため、教育分野でのシェア獲得を目指していた経緯がある。改めて述べるまでもなく、学生時代に使ったコンピューターに一度馴染(なじ)んでしまえば、社会人になってからも同じコンピューターを使いたがるのは珍しい話ではない。筆者の周りにも大学でMacintosh(OS X)を使っていたため、そのままMacBookを使い続けている編集者も少なくない。

このようにAppleが以前から教育分野に注力してきたのは有名ながらも、同様の施策はMicrosoftも行ってきた。Salcito氏も述べているように、若者の機会創出を支援する「YouthSpark(ユーススパーク)」や、主に学生を対象とした技術コンテスト「Imagine Cup(イマジンカップ)」を主催し、アピールを繰り返している最中である。

Salcito氏は「MicrosoftはAppleのように、教育セクターを対象にデバイスとソフトウェアを売り、市場的成功を収めている。しかし、数十億もの学生や教育関係者が本当に役立つプログラムを選択したい」と、記事を結んでいる。そもそもCook氏の発言は海外メディアで大きく取り上げられているが、オフィシャルなコメントではなく、数字が先走りした一例と見るのが正しいだろう。その一方でSalcito氏はユーザーに対し、誤解を招かないように記事を投稿したはずだが、タブレット市場における劣勢具合を示しているように見える。

パーソナルコンピューター市場が縮小傾向にあり、タブレットが席巻しつつあるのは、各調査会社が結果を発表しなくとも読者も肌身で感じていることだろう。それでも現状は"ポストPC時代"とは言いがたく、いまだ"PCプラス時代"と表現するのが適切だ。数年内もしくは近い将来、タブレット市場の王者として輝いているのはAppleなのかMicrosoftなのか、もしくはGoogleだろうか。今後も動向を追いかけつつ、本レポートで逐一ご報告する。