日本国内でも北米から数日遅れで発売されたSurface 2/Surface Pro 2。Microsoftや日本マイクロソフトの関係者が声高に方針転換を唱えているように、同社の「デバイス&サービスカンパニー」におけるメインデバイスの1つに数えられるSurfaceシリーズへの反応や販売状況は、同社の今後を占う試金石となるだろう。

今週はSurface 2/Surface Pro 2に関する注目ポイントと、タブレット市場で火花を散らすライバル企業の1つ、AppleのCEOであるTim Cock氏の発言に応答したMicrosoftのVPであるFrank X. Shawの発言に注目したレポートをお送りする。

約半年でリニューアルしたSurfaceシリーズ

2013年10月22日(現地時間)、Microsoftは同社製デバイス「Surface 2」「Surface Pro 2」を米国を中心とした数十カ国で発売した。第1世代となる「Surface RT」は2012年10月26日(現地時間)、「Surface Pro」は2013年2月9日(現地時間)にリリースしたことを踏まえると、1年未満で新モデルにシフトチェンジしたことになる。

驚くべきは既報のとおり、日本国内でも10月25日から第2世代モデルを発売した点である。日本はSurface RTを3月15日に、Surface Proを6月7日に発売しているため、約7カ月(Surface Proは約4カ月。両者の中間を取れば約半年)でモデルチェンジに至った。

この早急な対応に対して、MicrosoftのSurface&Windows Hardwareセールス&マーケティング担当ジェネラルマネージャーであるBrian Hall(ブライアン・ホール)氏は、「日本のような素晴らしい市場に対して、できるだけ早く用意したかった。確かに(新モデルまでの)期間は短かいが、最高の製品を提供したいための判断だ」と述べている(図01)。

図01 MicrosoftのBrian Hall氏

それでは新旧モデルを比較した表をご覧頂きたい。図02および図03はMicrosoftがSurface 2/Surface Pro 2を発表時に日本国内モデルと比較した表を基に、日本マイクロソフトの発表内容に差し替えたものだ。前回述べたようにハードウェアスペックの変更が中心となり、きょう体に対して改善を行ったのはKickstand(キックスタンド)ぐらいだろう(図02~03)。

図02 Surface(旧Surface RT)対Surface 2

図03 Surface Pro対Surface Pro 2

興味深いのは第1世代となるSurface(旧Surface RT)やSurface Proを下位モデルとして販売続行する点だ。Surface RTは先日の価格改定を踏まえて3万4,800円/4万4,800円の2モデルを維持。ちょうどSurfaceの64ギガバイトモデルとSurface 2の16ギガバイトモデルが同一価格になるように調整されている。

Surface Proも価格改定を10月24日に発表し、1万円値下げの7万9,800円/9万9,800円と、同256ギガバイトモデルがSurface Pro 2の128ギガバイトモデルと同じように調整された。これは2013年12月末までも期間限定キャンペーンだが、米国のMicrosoftは北米限定で100ドルオフのキャンペーンを開催中。

もっとも128ギガバイトモデルは899ドルから799ドルに値下がりし、99.87ドルでドル円を換算すれば、日本国内の参考価格とほぼ同等になる。つまり、日本マイクロソフトが行った旧モデルの値下げは、ワールドワイドレベルのキャンペーンに足並みをそろえたものだ(図04~05)。

図04 日本マイクロソフトによるSurface Proの期間限定キャンペーン

図05 Microsoftも同じように100ドルオフの期間限定キャンペーンを実施中

Surfece 2/Surfece Pro 2の変化は主に内部的な改善が中心であり、外見的な変化が乏しいため、第1世代と比べてもピンと来ないのは致し方ない。加えてWindows 8.1へのアップデートは第1世代にも適用できるため、差別化は難しいだろう。

その一方で2013年第4四半期業績に含まれるSurfaceの在庫調整費用として計上した9億ドルを踏まえると、MicrosoftはSurfaceをどのような形でも販売しなければならないのである(蛇足だが、2014年度第1四半期の発表によれば、Surfaceは売上高4億ドルと販売台数は前期の2倍以上に成長している)。

コンピューターの在庫処分と言えば、1989年にApple Computer(現Apple)がLisaをユタ州のローガンに埋めたことを思い出す。Surface RTを埋めるぐらいなら、同社の学生支援プログラムであるMicrosoft DreamSparkの一環として無料で配った方が得策だろう。もっとも、この点もパートナー企業の関係性を踏まえると現実的ではない。「デバイス&サービスカンパニー」を旗印に掲げた同社が、Surfaceの販売に過剰な注力を行っている理由がお分かり頂けるだろう。

さらに、コンシューマー視点でSurface 2/Surface Pro 2を見れば、それなりに魅力的なデバイスとして目に映るのは事実だ。特にアクセサリ類は、近接センサーを備えることでバックライトを自動点灯する「Type Cover(タイプカバー)2、」および「Touch Cover(タッチカバー)2」を筆頭に魅力的なものが多い。現在Surface Proを使っている筆者の食指も動きそうなものばかりである(図06)。

図06 Type Cover 2/Touch Cover 2/Power Coverは、近接センサーを内蔵してバックライトが点灯するという

加えて第1世代のSurface/Surface RTで利用できることを踏まえると、Surface本体はそのままに、カバーキーボードのみを買い換えるという選択肢も生まれてくる。発売時期および参考価格は未定だが、バッテリーを内蔵した「Power Cover(パワーカバー)」はバッテリー駆動時間が短いSurface Proの欠点を補うものとして注目アクセサリーに数えていいだろう。しかし、ノートPC型コンピューターのように、過度な発熱で手首が生暖かくならないか気になるところだ。

いずれにせよ、SurfaceというデバイスによるMicrosoftのチャレンジは第2幕を迎え、今後のパーソナルコンピューターおよびタブレット市場の攻略を着々と推し進めている。DOS時代やWindows時代のように当初は後れを取りながらも、いつの間にかトップシェアの地位を築いてきたようにタブレット市場の覇者となるのだろうか。今後の動向に注目したい。