既報のとおり、Windows 7向けInternet Explorer 11リリースプレビューが公開された。同デベロッパープレビューから数えると約2カ月ぶりの登場となるが、JavaScriptエンジンの改善など目を見張る箇所は多い。そこで今週はInternet Explorer 11リリースプレビューをインストールし、JavaScriptのベンチマークを行いながら、その概要をレポートする。

群を抜いて高速化したJavaScriptエンジン

Windows OSは既にWindows 8.1が最新版だが、デスクトップ環境を求めるユーザーにとって、Windows 7はまだまだ大事なプラットホームである。同OSはメインストリームサポートは2015年1月13日まで、延長サポートは2020年1月14日と、ある程度長く使い続けることができるため、Windows XPから移行するOSの1つとして数えている方も少なくない。そんなWindows 7にInternet Explorer 11リリースプレビューが公開された(図01)。

図01 公開されたInternet Explorer 11リリースプレビュー for Windows 7

2013年7月25日(現地時間)にInternet Explorer 11デベロッパープレビュー for Windows 7を公開したのは記憶に新しいが、そもそもデベロッパープレビューとリリースプレビューの違いとは何だろうか。最近のMicrosoftは以前のアルファ版/ベータ版といった呼称を用いず、デベロッパー/リリース/パブリックプレビューなど、対象となるユーザーを明確にした呼称を用いている。そのため、7月にリリースしたデベロッパープレビューはWebデザイナーやWebアプリケーション開発者向けと呼んでも差し支えないだろう。

そこから約2カ月後の2013年9月18日(現地時間)に公開されたInternet Explorer 11リリースプレビューが対象とするのは、前述したデザイナーや開発者であることに変わりはないが、最新機能に興味を持つユーザーも対象に含まれる。Internet ExplorerグループプログラムマネージャであるSandeep Singhal(サンディープ・シンガル)氏やRob Mauceri(ロブ・モーセリー)氏は、「他のWebブラウザーよりも30パーセントも速いパフォーマンスを実現した」「JavaScriptエンジンの改善により、Internet Explorer 11デベロッパープレビュー for Windows 7よりから5パーセント、Internet Explorer 10よりも9パーセントも高速化した」と、「IEBlog」の記事で述べていた。

しかし疑問に残るのが、本当にそれだけのパフォーマンス改善が行われているのか。そこで「IEBlog」と同じくJavaScriptのベンチマークを行うSunSpider 1.0.1を利用し、仮想マシン上のWindows 7上でInternet Explorer 10/同11リリースプレビュー/Mozilla Firefox 24/Google Chorome 29によるベンチマークを3回実行。その平均値をグラフ化したのが図03だ(図02~03)。

図02 ベンチマークは仮想マシン上で各Webブラウザーを最大化し、SunSpider 1.0.1を実行している

図03 各Webブラウザーのベンチマーク結果

ご覧のとおりInternet Explorer 11リリースプレビューのベンチマーク結果は平均111ミリ秒と、他のWebブラウザーと比べても圧倒的に速い。Singhal氏らが述べていた「JavaScriptエンジンの高速化」は過度な誇張ではなかった。そもそも同Webブラウザーが搭載するJavaScriptエンジン"Chakra(チャクラ)"は、事前にJavaScriptコードのコンパイルし、実行速度を高速化させるJITコンパイラをInternet Explorer 9時代から実装している。

Internet Explorerのバージョンを重ねるごとにChakraの改善も平行して行われ、パフォーマンスの向上を目指してきた。Internet Explorer 11では、そのJITコンパイラが担う範囲を拡大することで、JavaScriptエンジンが必要とする計算時間の短縮にもつながり、全体的な高速化を実現したと、Singhal氏らは述べている。Microsoftが提示したベンチマーク結果とは異なり、Internet Explorer 10の結果が伸び悩んだが、いずれにせよInternet Explorer 11リリースプレビューのChakraが高速化しているのは確実だ(図04)。

図04 Microsoftが測定したベンチマーク結果(公式ブログより)

この他にもCSS3で定義されているPointer Eventsをサポートし、入力デバイスに左右されない快適なWebブラウジングを実現し、動画ファイル再生時に含まれる字幕(キャプション)の表示カスタマイズを可能にしている。また、Web開発者向けツールはコンソールやデバッガを強化し、CSSのプロパティ値を編集した際の結果を確認できるDOMエクスプローラーや、メモリリークの原因を探し出すメモリ消費グラフなど、機能改良や拡充が図られたという(図05~06)。

図05 動画の字幕に用いるフォントや表示サイズのカスタマイズが可能(公式ブログより)

図06 [F12]キーで起動する開発者ツール。機能の改善や拡充が行われた

9月20日の時点では、既に日本語化したサイトが用意されており、FAQもすべて日本語化されている。その内容をかいつまむと、Windows 7 Service Pack 1以上を対応OSとし、上書きインストールとなるため、既存のInternet Explorer 10と共存することはできない。また、アンインストール時は、「プログラムと機能」の<インストールされた更新プログラム>から、「Internet Explorer 11」「Internet Explorer 11 ja-JP Language Pack」を削除しなければならない(図07~08)。

図07 日本語化されたInternet Explorer 11リリースプレビューのページ

図08 <更新プログラムのアンインストール>から、Internet Explorer 11リリースプレビューのアンインストールが可能

各ソフトウェアのリリースプレビューに対するお約束だが、「ソフトウェアのインストールは一度で済む方がよく、インストールし直すことは避けたい」「ソフトウェアが常に期待どおりに動作しないとストレスを感じる」方へのインストールは推奨されていない。また、前述したようにInternet Explorer 11リリースプレビューは上書きインストールとなるため、「Internet Explorer 10 を使い続けたい」方も対象外。なお、「Web閲覧時にスクリーンリーダーやスクリーン拡大鏡などの支援技術プログラムを使用している」方もインストールを避けるべきとFAQには記載されている。これはWindows 7の障がい者向け各ツールがInternet Explorer 11で正常に動作しない部分があるためだろうと推測する。

いずれにせよ、あと数ヶ月内には正式版がリリースされると思われるが、あくまでもプレビュー版であることを踏まえ、トラブルが発生しても自身で対応できる方は試してみると面白いだろう。

阿久津良和(Cactus