ハイアール アクア セールスが、3月から5月にかけて、ドラム式洗濯乾燥機および冷蔵庫の新製品を相次いで投入している。旧三洋電機の洗濯機、冷蔵庫事業を分離し、発足からまもなく1年半を経過しようとしているハイアール アクア セールスが、さらに日本に根ざした展開を進めるための戦略的製品群ともいえよう。

同社は、ドラム式洗濯乾燥機「AQW-DJ6100」を5月下旬から発売。さらに、冷蔵庫では355リットルのAQR-361Bを4月下旬から、264リットルのAQR-261Bを3月下旬からそれぞれ発売している。

ドラム式洗濯乾燥機「AQW-DJ6100」

ドラム式洗濯乾燥機のAQW-DJ6100は、2012年に発売されて好評だったAQW-DJ6000の後継機。同社独自の「洗濯板状のバッフル」を搭載。3つの洗濯板状のバッフルが付いたドラムによって洗濯板を使ったように洗濯するため、頑固な泥汚れまでしっかり落とす。また、洗いだけでは落ち切らない襟や袖のしつこい皮脂汚れを、すすぎ工程でもオゾンの力で分解することで、黄ばみを抑える「オゾンすすぎ」を搭載。

洗濯板状のバッフルが頑固な泥汚れまでしっかり落とす

操作性に配慮したパネル

さらに、家庭では水洗いできないような洗濯物でも空気オゾンで洗う「エアウォッシュα」の搭載に加え、「アクアループダイレクト」および「ecoモード」による省エネ機能を採用。新たに、すすぎ時にオゾン水でドラムを洗うことで除菌し、黒カビの発生を抑える「自動おそうじ」機能を搭載している。

すすぎ時にオゾン水の水量を増やしドラムを洗う「自動おそうじ」機能

容量は、洗濯・脱水で9.0kg、乾燥で6.0kg、当初月産台数は5,000台を計画している。

ハイアール アクア セールス 洗濯機企画課・水谷明弘課長

ハイアール アクア セールス 洗濯機企画課・水谷明弘課長は、「ななめドラムでは、どうしてもドラムが汚れやすくなる。そこで、最終すすぎのオゾン水量を最大4リットル増やし、水位を25mm上昇させ、オゾンがステンレス槽を洗浄する仕組みとした。オゾンだからこそできる機能である」と語る。

きれいに洗濯するためにドラム槽そのものも清潔にしておきたい、という日本人が求める付加価値を実現した製品だ。

4月下旬に発売された冷蔵庫のAQR-361B、および3月下旬に発売されたAQR-261Bも、同じく日本人のニーズに合致したモノづくりが特徴といえる。

4月下旬に発売した冷蔵庫のAQR-361B(左)、および3月下旬に発売したAQR-261B(右)

ハイアール アクア セールス 冷蔵庫企画課・伊勢戸明子課長

同製品は、三洋電機時代から10年以上に渡り人気を博してきた製品をメジャーバージョンアップしたもの。「量販店からは、デザインを変えないで欲しいという要望があり、これまでは、なかなか大きな変更ができなかった」(ハイアール アクア セールス 冷蔵庫企画課・伊勢戸明子課長)という製品である。

そこで、新製品では、基本的な考え方を維持しながらも、設計を全面的に変更したという。

例えばAQR-261Bは、142cmという高さを継承。「もともとは背が低い日本人女性にあわせて製品化したものだったが、ここにきくシニア層からも、この高さが使いやすいという声をたくさんいただいている」と、高さにこだわった理由を語る。また、上部にオーブンレンジが設置できる耐熱100度のテーブルを配置するといった点も同製品が従来から実現してきた機能のひとつだ。その一方で、LEDによる庫内灯や、節約ecoモードといった機能を搭載。ドアハンドルは、支点を開ける方向にずらした新デザインによって、少ない力でドアを開けられるように改良した。

新たに採用したドアハンドル。支点の位置を変えて少ない力で開けられるようにした

こちらは従来製品のドアハンドル

大きな変更のひとつは、ドアポケットの改良だ。これまでは、缶やペットボトルが5本しか収納できなかったが、これを6本入るようにした。また、卵をパックのまま収納するのか、個々に取り出して収納するのかといったように使用者それぞれに異なる用途に対応するため、トレイを工夫。トレイを立たせた状態ではパックのまま収納、寝かせた状態では個々に卵を収納する。また、どちらの利用シーンでもチューブの調味料を立てて収納できるようにした。

伊勢戸氏は「10数年以上前は、1本ごとに購入しても複数本購入しても価格差があまりなかった。しかし、今では6本パックで購入した方が安い、あるいはスーパーでまとめて購入するといったケースが増加。6本収納できることに大きな意味が出てきた」と語る。

ドアポケットは缶やペットボトルが6本収納できるように変更

トレイを置いて卵を個々に収納。チューブも収納できる

トレイを立てると卵をパックのまま収納できる

AQR-361Bの野菜室にはペッドボトルを4本立てて収納できる

これは、AQR-361Bでも同様のコンセプトで改良が加えられている。

「購入時には省エネ性能やサイズを重視するが、購入後に大切だと思っている点は、収納のしやすさや使いやすさ。新製品では、省エネ性能とともに、収納のしやすさや使いやすさを重視して製品化した」のだという。

日本のユーザーの使い勝手の変化を捉えた製品づくりを行っている。

ハイアール アクア セールス 商品統括部・森田昌治統括長

ハイアール アクア セールスの設立が2012年1月。それ以来、約1年半を経過しようとしている。ハイアール アクア セールス 商品統括部・森田昌治統括長は、「この1年半においては、ブランド認知度を高めることに取り組んできた」と語る。

イメージキャラクターに小泉今日子さんを起用。第1弾のテレビCMとして、2012年2月16日~3月31日まで全国で8,400本を放映。第2弾では6月21日~7月8日まで全国7地区で1400本、さらに12月1日~16日まで7地区で1,500本のテレビCMをそれぞれ展開。「当社がターゲットとするハイセンスファミリーについては62%の認知度となり、目標としていた60%を超えた」という。

こうした認知度を高めるための積極施策が功を奏して、2012年度のシェアは、全自動洗濯機では約14%のシェアを獲得。400リットル以下の冷蔵庫では約18%のシェアを獲得した。

森田氏は「2013年度は消費税増税の影響もあり、前年実績を上回る年間500万台の規模が想定される。また、冷蔵庫市場も同様に年間462万台の市場が見込まれる。だが、いずれも2014年度以降はその反動で市場が減少する。アクアブランドの製品は、市場の流れには影響されず、2014年度以降も継続的に成長し、シェアを拡大したいと考えている」と、今後の青写真を描く。

それを推し進めるための戦略として「そのためには、日本のお客様に満足していただける商品を作る必要があり、本当に求める機能はなにか、メーカーが機能を押しつけていないか、といったことを検証していかなくてはならない。単に、基本性能が高い、省エネ性能が高いというだけでなく、その先にある、操作性、静音性、設定のしやすさといった使い勝手の部分までを含めて、利用者がストレスに思うことを改良し、それを付加価値として提案していきたい」と森田氏は説明する。

同社のショールームには、小泉今日子さんのサイン入り製品も展示されている

2014年度以降、洗濯機、冷蔵庫の市場が減少するとみられるなかで、同社が描いているのは成長戦略。これまでの製品群に加えて、冷蔵庫においては、これまで手つかずだった400リットル以上の製品投入も見込まれる。また、冷蔵庫や洗濯機以外の製品群への展開も今後の検討材料になるだろう。

「ハイアールグループとして、グローバル製品を投入できるという強みもあるが、アクアというブランドを冠す限り、日本のユーザーにとっての使いやすさや付加価値を提供していく。その点はブレずに、アクアならではの製品を開発を継続していく」と、森田氏は語る。

「Life is Precious.」をスローガンに、「人生を大切に生きる人のためのブランド」であることを目指したアクアは、2年目以降も日本のユーザーニーズを捉えた製品づくりにこだわる姿勢をみせている。