人だかりで目立ってはいたが、ニコニコステージ自体はそれほど大きくもない

歌い手として活躍するぽこた(左)と、芸人顔負けのトークで盛り上げるHamar@キラー

ニコニコステージを離れればそこはごく普通の文化祭

当たり前だがニコニコステージにまったく興味を示さない人も多い

その後も、ニコニコステージではニコニコユーザーではなく、電通大の学生を主役にした企画が行われていた。例えば学校自慢コーナーでは電通大のサークルが多数登壇し、アカペラや大道芸、英語劇、空手の板割り、クラシックギターの演奏などを披露してアピール、また学校ぐるり紹介コーナーではニコニコユーザーの「ドグマ風見」と「ガッチマン」がマイクを持って校内を回り、まるでテレビのバラエティ番組のような雰囲気で展示物の紹介を行った。ニコニコ動画のことを知らずにこの光景を見たなら、テレビ番組の中継が行われていると勘違いしただろう。

人気踊り手の転少女(ころすけ)、めろちん、Ry☆が露店めぐり

ドグマ風見とガッチマンは校内を回ってロボット展示を中心に紹介

人間の動きを判別し、姿勢に合わせた映像を流してくれる出し物

大迫力のフィギュア展示も

写真部による展示会

さらに、校内のメインステージで開催された調布祭の名物イベント「女装ミスコン」では、決勝戦の審査員としてニコニコユーザーの「ぽこた」が参加したものの、イベントそのものにニコニコ動画が絡むことはなく、ニコニコステージからの実況中継が行われていた。

名物イベントの女装ミスコンは異様な盛り上がり

エンディングでは出演者によるパフォーマンスも

調布祭のラストでは、メインステージに場を移し、出演したニコニコユーザーや調布祭の実行委員会のメンバーなどが集まって盛大なエンディングが行われた。ここで初めてニコニコユーザーの歌や演奏、ダンスといったパフォーマンスが披露され、一瞬ではあるが、かつてのニコニコ大会議に近い雰囲気が出ていたように思う。

さて、今回の一連のイベント取材で感じた"方向性の変化"についてだが、一言でいうと"ユーザーを主役にしなくなった"ということだ。

これまで、ニコニコ大会議やニコニコダンスマスター、ナマケットといった大きな公式イベントの主役は、常にユーザーであった。ドワンゴがイベントを企画し、ニコニコ動画で活躍するユーザーに声をかけ、出演してパフォーマンスを披露してもらう。公式イベントにおいて、ニコニコユーザーは主役であり"ゲスト"だったのだ。しかし、ニコニコ町会議・ニコニコ文化祭でのニコニコユーザーは完全に運営サイドに立っていた。歌やダンスはあくまでオマケとして披露するにとどめ、主役である夏祭りや文化祭を盛りたてる役に徹していた。人気ユーザーのパフォーマンスが見たいファンには物足りなかったかもしれないが、いい意味で肩の力の抜けたイベントだったと思う。

もちろん、これまでにもそうしたポジションにユーザーを据えたイベントがなかったわけではないし、もともとそういうコンセプトの企画だからといってしまえばそれまでなのだが、とはいえ夏から秋の終わりにかけて日本全国を回るという、大会議クラスの公式イベントとしては、これまでになかったパターンだ。

これができるようになったのは、ユーザーと運営との距離が6年かけて近づいたことと、以前のようにドワンゴがユーザーの売り出しに力を注がなくなったことで企画内容に幅が出たからではないか。なにしろドワンゴがわざわざプッシュしなくても、ニコニコ動画で人気を得たユーザーには、放っておいても企業が声をかけるのだ。数年前と違い、「ニコニコ動画で人気」というキャッチコピーは、それなりのバロメーターとして機能している。

肩の力が抜けたといえば、ニコニコ生放送についても同じことがいえる。一時期、ドワンゴは積極的にユーザーを盛り立て、ニコ動ならではの番組やコンテンツ製作に尽力していた。しかし、現在の公式生放送のラインナップを見ると、オリジナル番組よりはむしろ、"生放送のプラットフォーム"として外部に提供しているケースの方が目立っている。

党首討論会を開催するなど、新興メディアとしていくところまでいったニコニコ動画・生放送は、そろそろ次のフェーズに進むのかもしれない。