毛乳頭細胞の一次繊毛。白い線は細胞の輪郭

サラヴィオ化粧品は、単離培養した毛乳頭細胞の一次繊毛(せんもう)の観察・定量化に成功。9月1日・2日に開催された第27回日本皮膚外科学会総会・学術集会において、その研究成果を発表した。

同研究では、繊毛マーカーとしてアセチル化チューブリンを免疫染色。1つの細胞に1本の繊毛が存在することを確認した。その一次繊毛の長さ(繊毛長)を定量的解析し、繊毛長をミクロのオーダーで算出。さらにリチウムイオンを加えることで繊毛長を約3倍に伸ばすことと、繊毛形成に不可欠な遺伝子をoffにすることで、繊毛自体をほぼ消失させることにも成功したという。

また、この一次繊毛の長さを制御した実験系を駆使することで、毛乳頭細胞をとりまく細胞間には、一次繊毛を介したシグナル伝達機構が存在することも発見した。

毛乳頭細胞の一次繊毛を介した細胞活性化機構

また、リチウムイオンを加え、繊毛長を3倍に伸ばしたまま毛乳頭細胞を培養して上澄み液をケラチノサイトに加えたところ、細胞増殖活性に有意な上昇が認められた。これは、繊毛の伸長に依存して何らかのシグナルが放出され、それがケラチノサイトの細胞分裂増強作用をもたらしたことを示唆するものだという。

ケラチノサイトの細胞増殖活性。対照はリチウムイオン(Li)がない状況

さらに、繊毛を伸長させた状態で、DHT(男性ホルモン代謝産物)を加えたところ、毛乳頭細胞を培養した場合の上澄み液に、線維芽細胞の細胞分裂増強作用が認められた。その一方、繊毛形成を阻害する線維芽細胞の増殖は抑制されたとのこと。

毛乳頭細胞は、発毛シグナルの司令塔と言われ、常にヘアケア研究の中心的存在となっている。毛髪のヘアサイクル(成長期 - 退行期 - 休止期)は、毛包細胞間のシグナル伝達によって支配されている。そして、毛乳頭細胞におけるシグナルの送受信に深く関与しているのが繊毛であると考えられている。今回の一次繊毛を介したシグナル伝達機構の発見は、育毛理論に新たな展開となることが期待される。