―― なんと、2年もですか!

斉藤氏「りゅうずをねじ込み式にしたくなかったんです。大の月と小の月(31日の月と30日の月)を調整する程度ならともかく、スマートアクセスの場合、りゅうず操作が通常操作に組み込まれているため、使用頻度が高い。だから、りゅうずのロックとリリースも感覚的に行えるようにしたかった。それなら、ロックとリリースのライン位置を見なくても、"カチッ"と感覚としてロックされたのが分かりますよね」

「GW-A1000D」(写真左)と「GW-A1000」(写真右)のりゅうず。ロック位置のラインが赤いのが「GW-A1000」

カシオ計算機 時計事業部 外装設計部 辻彩子氏

辻氏「りゅうずを押しながら回し入れるとロックされて、さらに回していくと一定の位置でツメの引っかかりが解除される、という案は当初からあったんです。でも、それをどうやって実現するかで本当に苦労しました。課題は、斉藤の話にあったクリック感です。

最初は、1つの部品でバネ性を使って、ロック機構とクリックの仕組みの両方を実現しようと考えていました。しかし、パーツの大きさが限られることで、クリック感が出ない、バネがヘタってしまうという2つの問題が発生してしまったので、2つのパーツに分けて、なおかつバネを作用させる向きを変えました。

また、クリック感=ロックの保持力ですから、クリックがヘタってしまうと、りゅうずのロックが外れやすくなってしまいます。気が付いたらロックが外れているといったトラブルがないようにと考えると、非常に難しかったですね。部内のメンバーやG-SHOCK開発陣内で意見を聞いたり、部品メーカーの協力のもと機構と素材を変えながら、何度も試作と検証を繰り返しました」

スマートアクセスのりゅうず内には、このような金属パーツや板バネが内蔵されており、ロック機構にクリック感を与えている

辻氏「できてしまえば、あぁ、そうだよね、この構造だよねって思うんです。でも、それを導き出すのには本当に苦労しました…。バネの調整ひとつとっても、ロックの強度が強すぎるとリリースに強い力が必要になります。使っていて指が痛くなるような時計は、ユーザーは使ってくれませんよね。かといって、ロック強度が弱いとすぐに外れてしまう。

一見うまく行きそうなアイディアも、実際に試作すると耐久性がダメとか。いっときは、これはもうダメかなとも思いました。普通にねじ込み式にするしかないかな、と。

本当に何とかしたいとは考えていたんですが、開発期限も迫っていて、どうしようと思いました。製品化のスケジュールは決まっているので、それまでに生産を始めないといけないわけですから。

アイディアが形になるまでは何もしていないのと一緒ですからね。形になって、評価して、テストして、改造(修正)してを繰り返して、耐久性や使いやすさが一定の基準を満たして初めてOKです」

GW-A1000の時字(ときじ)はすべてがリング状に繋がっており、蓄光塗装が施されている。衝撃に対する保持力が強く、立体的に光るので夜間視認性も高い

―― 厳しいですよね。こんな小さなパーツだけど、そこまで苦労しているんですね。こういった機会にお話を伺わなければ、ただ既製のパーツを組み込んだだけだろうと思ってしまいます。

斉藤氏「GW-A1000は企画段階から"ベストなG-SHOCK"というテーマを背負っていましたが、その実現がここまで大変だとは思いませんでした。でも、スマートアクセスは、GW-A1000の大きな看板です。これをしっかり使えるようにするには、りゅうずロックは妥協できないマストなインタフェース。ホームタイムやアラームの時刻を変えるとき、ワールドタイムの都市を設定するときなど頻繁に使う部分です。TRIPLE G RESISTを活用する人がどれほどいるか分かりませんが、スマートアクセスは間違いなく使いますから。

それだけに、現在の形にたどり着いたときはスタッフみんなが感動しましたね。あぁ、そうそう、これをやりたかったんだよ!って。長い時間はかかりましたが、こうしてみなさまにお届けできて本当に良かったと思います」

「GW-A1000D」(写真左)と「GW-A1000」(写真右)それぞれのボリューム感が良く分かる

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