病気になって不安に思う要因の一つが治療費

病気になって一番心配なのは病院でしっかりとした治療をしてもらえるかどうかということですが、次に不安になるのはどの程度の治療費がかかるのかということです。

もちろん、健康保険に加入していることから病院で支払う治療費は3割負担ですみます。加えて、高額療養費制度によって健康保険から戻ってくるお金や民間の生命保険からの給付金なども予定されますので、いたずらに不安を募らせる必要はありません。

しかし、病気によっては治療が長引くことも十分に考えられます。そこで、実際に病気になった人の例をもとに、入院するまで、また入院してからの経過、治療の日数や費用などを紹介していきます。

がんの治療にはお金がかかるイメージがある

まずがんです。病気の費用について詳しくないという人でも、がんの治療にはお金がかかるというイメージを持っている人は多いのではないでしょうか。実際にどの程度のお金がかかるのか、乳癌になったAさんという42歳の会社員の女性のケースを例に説明していきます。Aさんは会社員の夫と母親の3人暮らしです。

そもそも、乳癌とは日本人女性の20人に1人はかかる病気で、20代後半ごろから増加し、40代の半ばから50歳前後にピークを迎え、その後は徐々に減少するそうです。

欧米と比較して患者の数は少ないものの年々罹患率が高くなっていて、日本人女性がかかるガンとしては1位という状況です。

日本の医療は進歩しており、早期であれば手術などによってほとんど根治することができると言われております。乳癌の治療方法は、ガンの種類や発生部位、進行度、患者の年齢、そして閉経の有無などを考慮して決定されます。原則として、外科手術となりますが、放射線治療やホルモン治療など様々です。

初めてマンモグラフィ検査を受ける

Aさんは乳癌の検査に行かなくてはという思いはずっとあったのですが、忙しいということもあり、これまで検査を受けたことがありませんでした。しかし、ここ数年の間に叔母や従姉妹が立て続けに乳癌になったということで、母親から検査へ行くようにすすめられていました。

そして2008年の秋、仕事でパソコンを開いたらピンクリボンのキャンペーンに連動してピンク一色になっていたポータルサイトのトップ画面を見て気持ちが固まり、近所の乳腺科があるクリニックを訪れたそうです。乳癌の検査といえばマンモグラフィですが、この検査の最中に影があると言われて細胞診までやることになりました。通常であれば1カ月程度かかる検査を1日で体験したそうです。

検査を受けてから結果が出るまでの1週間、どんな思いでいたのでしょうか。本人曰く、「まるでジェットコースターに乗っているかのような気分」とのこと。自分でも、インターネットや書籍で乳癌についての情報を収集し、これから自分にどんなことが起きるのかを徹底的に調べたそうです。

1日約4万円の差額ベッド代

結局、Aさんは乳癌と告知されました。手術は大学病院で行うことになりましたが、入院するときに問題となったのが差額ベッドです。Aさんの叔母さんが入院しているときにお見舞いして感じたことが、同じ病気でも病状は人によって異なるのに無神経な人がいるということ。それでなくても精神的にも肉体的にも大変な時に、大部屋で病気以外のストレスを感じたくなかったので個室を希望したそうです。そして入ったのが1日約4万円という部屋。これにはAさんも想定外だったようです。大学病院の差額ベッドの料金表を見るともっと安い部屋もあったのですが、診療科によって選べることができる範囲は限られ、空き状況などの結果、1日約4万円の部屋になったそうです。

手術のための入院は8日と短期間ですみましたが、その後補助療法の一つとして放射線治療のため毎日同じ時間に連続28日間通院、その後は3カ月に1回ホルモン治療のため4回通院しました。

がん治療にお金がかかるということは本当だった

費用は図表でまとめていますが、診断が確定するまでと入院前までにかかった費用は約5万円、そして差額ベッド代などを含む入院費が約46万円、術後の検診費用が約1万4,000円、28回分の放射線治療が約18万5,000円、4回分のホルモン療法の費用が約15万円。総額にして約86万円の費用がかかりました。

入院費はもちろん高額ですが、退院後の放射線治療やホルモン療法の費用が意外とかかることがわかりました。ガン治療にお金がかかるということは本当のようです。

Aさんは2つの医療保険に入っていたこと、また健康保険からの還付金によって黒字となっていますが、今後も検査費用や注射、そして薬の費用などがかかるそうです。

病気にかかる費用は同じ病気でもケース・バイ・ケースということもあり一概には言えませんし、病気が異なればなおのことです。Aさんのように実際に病気を経験した人の話によると、大腸ポリープの場合で約10万4,000円、甲状腺乳頭癌で約40万円、帝王切開では約45万円かかったという例があります。

いずれにしても、何の病気でもある程度のお金はかかります。現在、病気に備えることができるだけの貯蓄があるのかどうか、ない場合は保険でカバーするのか、事前に考えておく必要がありそうです。