3月19日、日本ユニバ震災支援チームのボランティア参加希望者向け説明会が開催された。これは、特定非営利活動法人日本ユニバーサルデザイン研究機構のプロジェクトとして開始されたもので、有志で集まったスタッフが東北関東大震災向けの支援物資収集と輸送、人員の手配などを行っている。

長期に及び活動を継続するために

今回の震災は阪神淡路や新潟県中越地震などこれまでに日本が経験したものより被害地域が広範囲に及んでいるため、2,000カ所以上あるという避難所の隅々まで物資を届けることが困難な上、被害によって自治体の機能が失われ正確な状況を把握できないエリアもある。

一方、被災地を支援したい思いはあるが何をしていいのか分からないという人は全国に数多いだろう。そうした人に対して、今は急いで現地へ行くべきでない、というのが過去の震災における教訓であり、これはもちろん正しい判断だ。危険のある地域に個人で入るリスクは大きく、また物資が不足する場所に人が行くことは現地の負担にもなる。だが、今現在、人の手や物資の輸送が求められていることもまた事実だ。

ここで必要になるのは、ニーズとソースのマッチング。つまり、正確な情報を得て、適切な形で結びつけるコーディネートの能力だ。それは要請されたモノをただ送ることではなく、物資提供者・プロジェクト参加者・物資を受け取る被災者全員がお互いを信頼し、尊重することで成り立つ。このことが現地との結びつきを作り、スムーズな輸送やフレキシブルな対応、また今後長期に及ぶであろう活動を継続的に支える動脈になっていくのだ。同チームでは、この点を常に念頭に置いた活動を行っている。

チームリーダー・上野清彦氏。「必要とされる物資・人材をコーディネートしていく事が重要になる」

情報発信等を行う森啓太郎氏。「日本がソーシャルの力で変わるべき時。ぜひ支援の輪を広げて欲しい」

活動初期、何があっても最優先は「物資輸送」

同チームがネット上で広く知られるようになったのは、皮肉にも協力を呼びかけるサイトが"炎上"したことがきっかけだった。地震発生から数日が経ち、義援金詐欺などのニュースも聞かれるようになる中、チームの活動に疑いを持つ発言が広まったのだ。これについて、同チームで情報公開を担当する森氏は、「炎上が起きた事については、我々の対応が至らなかったと思い反省しています。我々に対して疑問を持たれた方々も、実際に詐欺が発生する中で警告を込めて発言されたことだったと思います。その教訓として、現在はFacebookとTwitter(@jpuniva)で定期的な情報発信を行っています」と述べている。

当時、10名弱のスタッフが一刻も早い物資輸送に必死で取り組む中、十分な情報提供やコメント対応ができる状況ではなかったことも一因だった。その後ネット上では、同団体が実在し、実際に物資を届ける活動を行っていることが伝えられ、その訴えに賛同した人の間で支援の輪が広がっていく形となった。

これにより多くの寄付金が寄せられたが、同時に大量の物資提供が集中したことが一層の労力を必要とする状況を招いた。人手を足そうにも、プロジェクト参加希望者からのメールが個別に対応できない数に上っていたため、19日に希望者向けの説明会を開催する形となったのだ。当日は約120名の希望者が集まり、現地へのドライバーや、物資の受け付け・仕分け、電話・メール対応、情報発信などの分野別に登録が行われた。今後は活動に応じて必要とされる登録者が順次プロジェクトへ参加する形となる。

活動初期、同チームが手配したヘリで緊急の支援物資を気仙沼市の孤立被災地へ届けた

物資提供希望の際は、事前の受け入れ確認がスムーズな仕分け・発送につながる

プロジェクトの今後と、私達にできること

新たな参加者が加わったことで、同チームではより正確な情報収集・発信や、適切な輸送を行うための仕組みづくりにも取り組み始めている。だが、例えばオンライン上で物資・人員をマッチングする等のシステム的な事がすぐに可能になるわけではない。物資の収集・仕分け状況や、現地からの情報が刻々と変化し、輸送ルートも新たに開拓されていくなど、活動を始めて10日程度ではまだフローが流動的でシステム化しにくい。その上、現場では予想のつかない事態の連続のため、システマティックに進められないことの方がむしろ"普通"だ。また、諸般の事情で拠点の移転も検討中されているなど、全力で走りながら体制作りに試行錯誤している状態だ。

同チームからの情報提供はFacebook及びTwitter(@jpuniva)を中心に行われているので、最新情報の確認にはこれらを利用してほしいとのことだ。メールは数千通/1日を二人で捌いており、全てに返信することは難しい。問い合わせや物資提供の申し出にすぐ回答が来ない場合があるが、1~2日は焦らず待機するくらいの気長さを持って臨みたい。活動は来週も3カ月後も継続されているのだ。現状ではFacebookが最も早くレスポンスを得られる。また、電話は回線が少ない上に現地との緊急連絡にも使用されているので、特に昼間は遠慮したほうが良いだろう。

チームの活動は今後数カ月、さらに形を変えながら数年に渡って続くことになるだろう。その時に必要とされる物資や人材も必ずあるはずだ。長期にわたる活動を継続的に支えていけるような支援の輪を、ぜひ今のうちから広めていきたい。そして同チームだけでなく「自治体の活動や他の市民団体など、どんな形でもいいので一人でも震災支援に参加する人を増やして欲しい」(森氏)というのが、今の現場の切実な声だ。

現地で活動するチームが撮影。現在の"緊急"支援から今後の"復興"支援に向け、多くの人の長期的な協力が必要だ

参考:記事執筆時点での活動と物資受け付け状況

同チームでは新たなプロジェクトとして、各避難所に直接電話をし、人数・必要な物資・Google Person Finderへの登録の有無を確認している。この情報を公開し、支援活動を行っている自治体や他の団体の取り組みにも活用してほしいと考えている。

記事執筆時点で、物資提供は以下の品目について行われている。小ロットでの提供も可能だが、送付・持ち込みの前に必ずFacebookまたはTwitter(@jpuniva)で「品目」「数量」を伝え、受け付け状況を確認してほしい。

受付中の物資

・食料(1カ月以上日持ちするもの)
・水(ペットボトルなどに入っている未開封のもの)
・おむつ
・医薬品
・ラップ

送付先

〒 132-0001 江戸川区新堀2-13-1江戸川第2倉庫(KADE2)
京葉アドバンス物流会社 「日本ユニバ物資受付窓口」宛