11月の薄型テレビの販売台数は、600万台達したとのことだ。この年末に薄型テレビを導入したという人は多いに違いない。テレビが大画面になる→迫力のある画面になると、次に気になって来るのが、そのサウンドだ。テレビの薄型化、狭フレーム化によって、テレビのなかでスピーカーキャビネットとして使用できる容積は、減少しており、全ての製品がというわけではないが、やはり、画面の迫力にマッチしたサウンドをテレビだけで実現するのは難しくなってきている。

テレビを中心として、本格的なシアターシステムを組もうとすると、最低でも5.1ch分のスピーカーとAVアンプが必要というのが相場だ(もちろん、それだけでなく、スピーカーケーブルやスピーカースタンドなども必要になる)。しかし、そこまで本格的ではなくても、テレビで見る映画や音楽などの臨場感をアップさせたいという方は多いのではないだろうか。そういったニーズにぴったりなのが、フロントサラウンドシステムだ。今回、ソニーが11月に発売した2.1chのフロントサラウンドシステム「HT-FS3」のレビューをお届けしよう。価格はオープンで、12月17日現在、ソニーストアでの市場価格は22,800円。

フロントスピーカーとサブウーファーのシンプルな構成で、迫力サラウンドが楽しめるフロントサラウンドシステム

フロントスピーカーのコンパクトな2.1chならではの設置性の高さ

HT-FS3は、サブウーファーと2本のフロントスピーカーから構成されるシンプルなシステムだ。5.1chのシステムに比べれば、もちろん、セッティングは簡単だ。しかし、比較的手軽なフロントサラウンドであっても、スピーカーをどこにどうやって置くかというのは問題になる。HT-FS3のフロントスピーカーのサイズは、約102(W)×163(H)×77(D)mm。このサイズにより、既存のテレビ設置スペースに、それほど無理なく置くことが可能となっている。筆者の場合、20V型のテレビとBDレコーダーとを幅120cmのチェストの上に設置しているのだが、テレビの横に両方のスピーカーを設置して、まだ少し余裕があるといった感じである。一般的なテレビラックを使用している場合でも、横幅に200mm少々の余裕があれば設置できる。ブラウン管時代のテレビ台は、21型用、25型用など、きっちりとテレビのサイズに合わせたものが多かったのだが、最近では、テレビのサイズのバリエーションが増えてきている影響で、テレビ台のサイズは、テレビにきっちりということは少ない。なんとか置けるというケースも多いのではないだろうか。

なお、同社では、このフロントスピーカーに対応したブラケットやスタンドなどは用意していないが、フロントスピーカーの背面に、フックにひっかける部分が用意されているのに加え、ねじ穴が用意されている。このねじ穴はφ4mmのねじに対応する。TH-FS3のフロントスピーカーは、わりと広い指向性を持っており、必ずしも、画面の上下中央にスピーカーを設置する必要はないのだが、テレビの設置方法やテレビ台のサイズなどによっては、これらを利用するケースもあるだろう。

HT-FS3のフロントスピーカー。とにかくコンパクト

フロントスピーカーの背面。フックにとり付けるための穴とねじ穴が用意されている

テレビとレコーダーがある環境にHT-FS3をプラスする

設置のあとは、機器の接続だ。HT-FS3側の接続は、付属のケーブルでサブウーファーとフロントスピーカーとを接続するだけだ。サブウーファー側は、色分けされた専用コネクタでの接続。フロントスピーカー側は、バネで押さえるタイプのコネクタだ。FM/AMチューナーも搭載しているので、必要な場合はアンテナ線を取り付ける。

サブウーファーの背面のHDMI部分

続いて、テレビやレコーダーなどとの接続ということになる。サブウーファーには、HDMI出力が1系統あり、これとテレビのHDMI入力とを接続する。HT-FS3には、3系統のHDMI入力があり、BD、DVD、SAT/CATVにアサインされているので、接続するのがBDならば、一番左にあるBDのHDMI端子にBDレコーダーからのHDMI出力を接続する。これだけでは、テレビに内蔵されたチューナーからの音をHT-FS3で鳴らすことができないので、テレビのデジタル音声出力とHT-FS3のデジタル音声入力端子とを光デジタル音声ケーブルで接続する。使用するのは、角形コネクタタイプの光デジタル音声ケーブルだ(HT-FS3はARCには対応していないので、この接続は必ず必要になる)。つまり、現在、テレビとレコーダーをすでにHDMI接続で使用しているユーザーの場合、HDMIケーブル1本と光デジタル音声ケーブルを1本追加で用意すれば、HT-FS3をシステムに組み込むことが可能になるわけだ。しかし、この場合、ケーブルの長さには気を付ける必要がある。サブウーファーは床面に設置するケースがほとんどだろう。それに対して、レコーダーは、テレビラックの中など、いずれにせよ、テレビの近くに設置されているケースが多いはずだ。テレビとレコーダーを接続しているHDMIケーブルは、1m、あるいはそれよりも短いものが使用されているというケースが多いのではないだろうか。それだと、状況によっては、床面に置いたサブウーファーにまで届かないケースもある。

これらの接続のみで、BDレコーダーの映像は、HT-FS3を通してテレビに送られることになる。なお、HT-FS3が起動している場合には、音声信号はテレビには送られずに、HT-FS3から出力される。HT-FS3は、HDMI パススルーに対応しているので、HT-FS3がスタンバイ状態でも、HDMI入力からの信号を、レコーダー→HT-FS3→テレビと、送ることができる。この場合は、音声信号もテレビ側に送られる(深夜などで、テレビの音声をヘッドホンで聞くというような場合は、HT-FS3にはヘッドホン端子が装備されていないので、HT-FD3をスタンバイ状態にする必要がある)。ここで注意が必要なのは、HT-FS3が搭載しているパワーセーブ機能だ。パワーセーブ機能がオンになっていると、HT-FS3はスタンバイ時に、接続先のテレビの状態を検知する。テレビがオフになっている場合には、信号を通す必要がないと判断してHDMI部分もオフに、テレビがオンになっている場合には、HT-FS3がスタンバイ状態でも、HDMI部分のみ動作し続ける。テレビが動作しているかどうかの判断は、CECを使って行われている。そのため、テレビがCECに対応したモデルならば問題なく動作するが、CEC対応以前のモデルの場合、テレビの電源が入っていても検知できないため、HT-FS3をスタンバイ状態にすると、HDMI部分もオフになってしまう。これを回避するには、パワーセーブをオフにする必要がある。リモコン「アンプメニュー」ボタンを押し、上下キーで「SET HDMI」まで移動して「決定」ボタン、続いて上下キーで「POWER SAVE」まで移動して「決定」ボタン。これでパワーセーブはオフになり、CEC非対応のテレビでも、スタンバイ時にHDMIの信号を流すことができるようになる。なお、HDMIが生きているといっても、HT-FS3がスタンバイとなっている状態では、HDMI入力を切り換えることはできない。スタンバイ直前に選択されていた入力が使用されることになる。

テレビ単体とは次元の違う臨場感

5.1chのシステムだと、ここから音場設定に入るのだが、HT-FS3では、フロントスピーカーが決め打ちとなっているため、そういった設定は必要ない。すぐに聞き始めることが可能だ。まずは、音楽ライブのDVDを聴いてみた(KRAFTWERKのminimum maximum)。試聴したDVDでは、DVDのメニュー部分は2chのサウンドで、本編はDTSの5.1ch。メニューから本編に移動すると、HT-FS3の液晶画面も、2.0chから5.1chに切り替わる。なお、DTSやDolby Digitalといったサウンドフォーマットの違いは表示されない。

表示部分には、通常は入力端子名が表示されている。入力信号のフォーマットが切り替わると、一時的に2.0ch→5.1chのように表示される。またボリュームや機能の設定もここで確認する。OSD機能は搭載していないので、サブウーファーは机の下などのあまり視認性の悪い場所には設置しない方がよいだろう

さて、そのサウンドだが、サブウーファーの効果が大きいのだろう。テレビ単体で再生している場合とは、とくに低域の再生能力にかなりの差がある。というよりも、まったく別物だ。また、元気なサウンドというのとはちょっと違うのだが、ハリのある中域とクリアな高域は、映画などのサウンドを想定しているせいだろうか。ボーカルもよい雰囲気だ。パワーは、普通の家で使用する分には十分だ。というよりも、ボリュームは、MIN(0)からMAX(50)で調整可能だが、最大音量はおろか、半分の音量でも鳴らすことができる家は限られるだろう。8畳程のスペースで使用したところでは、だいたい10位で丁度よい感じだ。

さらに、サウンドフィールドを変更すると、違った効果が楽しめる。音楽DVDを聞いている場合、サウンドフィールドにMUSICを選ぶと、音楽を構成する音が、比較的リスナーに近い範囲から聞こえてきて、さらに横への拡がり感も感じられるといった感じだ。それに対して、LIVEを選択した場合には、音楽は、ある程度離れた前方から聞こえてくるような感じになり、横方向への拡がりも少なくなる。

続いて、BSデジタル放送で録画した5.1chサウンドの映画を再生してみた。あまり極端にサラウンドチャンネルのレベルを高くしていないのが好印象だ。あくまでも環境音といったレベルで、自然に聞くことができる(映画の内容にもよるのだろうが)。ここでも、サウンドフィールドを変更すると、大きな違いが現れる。NEWSとMOVIEは、台詞の聞きやすさを優先するためだろうと思うが、センターchの音が(2.1chシステムなので実際には存在しないのだが)強調されたような感じで、なかでも、NEWSにすると、センター以外の音がばっさり切られたような感じになる。比較的オールマイティに使えそうなのが、STANDARD、MUSIC、SPORTS、MOVIEといったところだろうか。ただ、左右や後ろへの音の回り方なども異なるので、この辺りは、再生しているタイトルのジャンルにこだわらずに、自分の気に入ったものを選択すればよいだろう。サウンドフィールドの切り替えは、リモコンの「サウンドフィールド」ボタンを1回押すと、現在のサウンドフィールド名が表示され、2度目に押すと、次のサウンドフィールドに切り替わるというようになっている。このシステムでは、サウンドフィールドの切り替えは、比較的多用するボタンだ。できれば、ダイレクトでサウンドフィールドを選択できれば、もっと使いやすいのではないかという印象を持った。

なお、これらのサウンドフィールドは、使用しているテレビが同社のブラビアで、テレビ番組、またはテレビ番組を録画したタイトルを再生している場合、EPGの情報に応じて自動で切り換えることが可能だ(「アンプメニュー」ボタン→「SET HDMI」→「SOUND.FIELD」で「AUTO」を選択する。出荷時の設定ではそうなっているようだ)。

この時点までHT-FS3を置いていた場所は、最初に設置したチェストの上で壁を背にしており、左右ともそれなりに空いた環境だ。ここで、設置位置を部屋のコーナーに移動してみた。左側は壁で右側はカーテンとなっている。ところが、左右で音の反射や吸収がかなり違うと思われる場所であるにもかかわらず、移動前と移動後で、とくに気が付くような変化は現れなかった。これは、おそらく「S-Force PROフロントサラウンド」が直接音のみでサラウンド再生を実現しているのが影響しているのだろう。

幅75cmのテーブルに、20V型テレビとレコーダー、フロントスピーカー×2を設置。幅にはまだ若干の余裕がある

HT-FS3に付属するリモコン。レコーダーやテレビの基本機能は操作可能だが、「RM-PLZ430D」のような学習リモコンを使ってしまえば1つにまとめることが可能だ

手軽にテレビのサウンドの臨場感をアップさせるシステム

5.1chのデジタル放送を録画する場合、レコーダーによっては、高いビットレートだと5.1ch、低いビットレートだと2chといったように、ビットレートによって音声信号が変化する製品もある。テレビとレコーダーだけの組み合わせで使用しているという人の場合、番組を録画する際に、音声chのことはほとんど気にしていないという人も多いのではないだろうか。しかし、HT-FS3を導入すると、番組を録画する際に確実に音声chの設定にも気を配るようになるだろう。

HT-FS3にも限界はある。とくに拡張性は乏しい。とりあえずHT-FS3を導入して、将来的には、何かを追加してさらにステップアップ、ということはできない。HT-FS3は、とにかく、これだけで完結するサラウンドシステムだ。テレビサイドに設置するだけで、サウンドの臨場感を大幅に向上させる。