欧米ではホリデーシーズンを狙った秋の携帯電話/タブレット新製品の発表ラッシュが一段落ついた感じだが、日本ではまだ大手各社らによる年内でのスマートフォン新製品発表を控えており、その動向に注視しているユーザーも多いだろう。今回は、米国で開催された携帯電話カンファレンス「CTIA Enterprise & Applications 2010」と併設イベントである「MobileFocus」での展示内容や新製品を紹介し、海外での携帯トレンドを少し紹介していこう。ひょっとしたら、中には気に入って購入したくなる製品もあるかもしれない。

もともと携帯電話のトレンドは欧州が牽引していたこともあり、世界最大の携帯電話イベントは毎年2月にスペインのバルセロナで開催されている「Mobile World Congress (MWC)」となっている。本流ではないものの、米国でも業界団体のCTIA(Cellular Telephone Industries Association)が開催するイベントが毎年春と秋の2回あり、春は「CTIA Wireless」の名称で携帯電話一般の話題を、秋は毎年テーマを絞った状態でカンファレンスを実施している。昨年の場合、秋のCTIAは「CTIA IT & Entertainment」となっており、ゲームやメディア配信など、よりエンターテイメントな方向性を打ち出していた。今年は冒頭にあるようにビジネスでの携帯利用やアプリ開発にテーマを絞っており、各セッションの内容もそうしたアプリ開発系の話題が多くなっている。

CTIA自体、本来はこのイベントに合わせて新製品などがリリースされるケースは少ないのだが、世界でも最大の市場である米国で開かれる数少ないモバイル系カンファレンスということもあり、米国系携帯キャリアが戦略を説明したり、あるいは端末メーカー各社が米国での端末投入計画やサービスについてプレゼンテーションを行うというのも珍しくない。また最近はiPhoneやAndroidといった米国製モバイルOSが世界市場を席巻しており、さらにMotorola、Palm(HP)、Research In Motion(RIM)といった北米系メーカーも息を吹き返しつつあり、カンファレンスの規模に反してバルセロナのMWC以外では比較的大きな発表が行われる場にもなっている。今回は、このCTIA IT & Entertainment 2010での展示会の様子と、同イベントに併設されて行われている新製品プレビュー会の「MobileFocus」の展示内容を簡単に紹介していこう。

話題のGalaxy Tabが目立つ展示スペース

「MiFi」で一躍メジャーになったNovatel Wirelessのブース。もちろんメイン展示はMiFiだ

今回のCTIAではテーマに沿う形でアプリ開発系の展示が多くなっている。とはいえ、展示スペースの多くはAT&TのようなキャリアやSamsungのような大手メーカーのブースで占められており、どちらかといえば製品やサービスに関する展示が目立つ感じだ。まず入り口正面に位置していたのは米Novatel Wirelessのブースで、USBモデルやWi-Fiルータを多数展示していた。同社最大のヒット作は日本でもすでにメジャーとなった「MiFi」で、このWi-Fiルータはモバイル機器やPCを持ち歩くガジェットギークには非常によく利用されている。昨年筆者がCTIAのデモブースでNovatelの関係者から「年内(2009年内)にも日本への進出計画がある」と聞いたときはその将来性を疑問視していたが、予想をいい意味で裏切る形でメジャーな存在となり、筆者のまわりでも日本からやってきた複数のITメーカー関係者やライター諸氏が米西海岸で売っているMiFiをことごとく買い占めていったほどだ。これはデータ通信に関して潜在的な需要が多いことを意味すると考えている。

端末メーカー別に見ると、最も目立って巨大だったのがSamsungとFordのブースだ。Fordは今回のCTIAのメインスポンサーでもある。Fordは展示会場のみならずCTIA会場中にコンパクトカーやファッションカーを配置し、その最新の携帯機能を取り込んだ車載システムをアピールしている。同社は家電展示会のCESでもMicrosoftと共同で「Sync」のプロモーションを行っており、車載システムのスマート化に非常に熱心だ。一方のSamsungはタブレットの「Galaxy Tab」を前面にプッシュしており、スマートフォンの「Galaxy S」と組み合わせたさまざまなソリューションを紹介する形の展示を行っていた。適材適所という感じだが、Galaxy Tabでのいくつかのデモを見る限り、まだアプリ側がタブレット向けのサイズに最適化されていないケースが多く、本格的なタブレットの普及は来年以降になりそうだと感じた。

Fordのブース。携帯と連動したタッチパネル付き車載システムのデモを行っている。米国の自動車メーカーでも最もこうしたITの採用に積極的なのが同社だ

SamsungブースはGalaxy Tabを前面プッシュ。Galaxy Sとの組み合わせによる各種ソリューションを展示

北米系携帯メーカーの雄であるMotorolaの展示内容はどちらかといえばアプリ開発者向けのものだったが、展示コーナーにはしっかりと発表したばかりのAndroid端末「Bravo」「Citrus」「Flipout」などが展示されていた。比較的ハイエンドを狙ったDroidに対し、これら新機種は本体サイズやキーボードの有無、価格などでバリエーションを増やしたもので、ミッドレンジ以下の層の開拓を狙ったものとみられる。

CTIAに合わせてMotorolaから発表された新Android端末群。サイズやキーボードの有無、価格によって差別化されており、ラインナップの拡充でDroidシリーズが狙っていたハイエンド以外の層も開拓する

このほか気になったのはClearwireのブースで、同社が提供するWiMAXサービス「Clear」の提供地域拡大がアナウンスされていた。これまでラスベガスやポートランドなど、どちらかといえばユーザーが少ないエリア中心だったClearだが、今回のサービス拡大ではニューヨークやサンフランシスコなどの大都市圏も含まれるため、日本からWiMAX端末を持ち込んでローミング利用するユーザーにとっても大きなメリットとなるだろう。

Clearwireでは米国のWiMAXサービス拡大についてアナウンス。今年中にニューヨークやサンフランシスコなど大都市圏が一気に追加され、日本からの旅行者にとっても使いやすくなりそうだ