レノボ・ジャパンは10月5日、「Lenovo JAPAN Partner Council 2010」と題したビジネスパートナー向けイベントを開催した。主に、ハードウェアベンダーとしての同社が、SIなどパートナー事業者向けにビジネス戦略を説明するイベントだが、同社の今後の製品展開の見通しや最新製品などの情報も知ることができた。

シェア成長率で世界トップに

レノボ・ジャパンの代表取締役社長、ロードリック・ラピン氏

まずはレノボ・ジャパンの代表取締役社長、ロードリック・ラピン氏が登壇、同社PCのマーケットシェアの現状の説明があった。それによると、レノボは2010年Q2の最新の数字で世界市場において10.2%のシェアを獲得しており、これは同社過去最高の数字だとされた。さらに、市場全体の平均成長率と比べた場合でも同社の成長率は極めて高く、市場の低迷からいちはやく回復し、「成長率では世界でナンバーワン」(同氏)という業績が残せたことをアピールした。

過去最高のシェアを獲得。成長率も市場平均を大きく上回る

日本市場においても、2008年頃に一時期の低迷期を経たものの、その後に急回復を実現し、2009年~2010年度にかけての業績では、日本で最も早く成長したPCメーカーであったことが報告された。また、判明している2010年Q1/Q2の成長度合いから見て、日本市場における同社の業績が今後もさらに成長するだろうという見込みから、ラピン氏は、「日本市場への投資を拡大する」と宣言するなど、さらなる日本市場重視の姿勢を明確にした。

日本市場でも成長率の伸びは顕著。今後も日本市場を重視すると説明された

あわせて、日本がレノボの製品開発においても引き続き重要な拠点に位置付けられていることも強調。同社の主力製品であるThinkPadが、日本の大和事業所で開発されているのは広く知られている。その大和事業所に対して、横浜みなとみらいに新規施設を設けて移転するなど、投資を拡大していることを紹介。レノボでは、製品開発において、競合メーカーなどのように、低コストで合理化されたPCにシフトする選択肢もあったそうだが、それを良しとせず、大和事業所を中心とした従来路線を堅持した結果として、今回の好業績に繋がったと説明する。ちなみに、ThinkPadは今月に累計販売台数6,000万台を達成するというマイルストーンを打ち立てている。

日本での研究開発は、ものづくりの強みの源泉として、今後も大きなウェイトを占める

今後の製品展開の紹介もあった。レノボと言えばThinkPadを中心としたノートPCのイメージが強いが、デスクトップPCの製品展開にも積極的に取り組む姿勢であり、特にビジネス市場に対するオールインワン型のデスクトップPCの展開では大きな期待を抱いていることが語られた。日本市場ではコンシューマ向けがメインのオールインワンだが、レノボは最近でも「ThinkCentre M90z」など、意欲的な製品をビジネス向けに積極提案している。

デスクトップ、特にビジネス向けオールインワン型の市場には期待が大きく、積極的な製品展開を計画。写真右は先日投入された「ThinkCentre M90z」

ノートPCの最新製品である、「ThinkPad Edge 11"」の紹介もあった。会場内には実機の展示も

また、従来の"PC"とは異なる製品ラインナップの拡大も、現在のレノボのチャレンジとなっている。中国市場向けには、今年のCESで発表され話題となったスマートフォンの「Le Phone」があり、他の市場向けの展開も検討されている。ほか、クラウドコンピューティングの成長から端末需要が高まると見られる「Slate PC」について、レノボでも来年にでも製品投入の計画があることが紹介されていた。

スマートフォンなど、従来の"PC"とは異なる製品ラインナップの拡大。来年にはスレートPCも投入される

イベントには、インテルの営業本部 本部長の大塚桂一氏も駆けつけた。製品開発における連携など、レノボとの密接な関係の構築が確認された

イベントには特別ゲストも

イベントでは、F1のボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのドライバーであるジェンソン・バトン氏と、同チームのプリンシパル・エンジニアである今井弘氏を招いたトークセッションも催された。同チームはレノボとパートナー契約を結んでおり、チームを支えるシステム機器として、レノボのPCやワークステーションが導入されているという関わりがある。今季好調なボーダフォン・マクラーレン・メルセデスであるが、それを力強く支えているのが、実はレノボの製品なのだという。

F1のボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのドライバーであるジェンソン・バトン氏

F1のボーダフォン・マクラーレン・メルセデスのプリンシパル・エンジニアである今井弘氏

レノボがボーダフォン・マクラーレン・メルセデスに提供しているコンピュータ・ハードウェアの台数は2,100台にもなるそうだ。うち600台がクライアントPCで、それらはThinkPad T410やW510、X201 Tabletといった、一般ユーザーにも馴染み深い製品となっている。ゲストの今井弘氏も、普段のチームオペレーションで利用しているというW510を会場に持参してきており、「手放せない、頼りになる相棒」と評価していた。

今井氏は、ThinkPadの気に入っている点を、特に処理能力の高さと堅牢性を話している。実際に、レノボのハードウェアの導入で開発速度が1/3にまで短縮されたという実績や、砂塵舞う砂漠から寒冷地、スコールもある熱帯まで世界中を転戦する過酷なF1においても、同氏のThinkPadが「一度も壊れたことが無い」というエピソードが語られた。ちなみにレノボによれば、チームに提供しているThinkPadなどのコンピュータ・ハードウェアは、特別にカスタマイズされたものでは無く、すべて一般に市販されているものと同一スペックであるという。同社はそれについて、「そもそもThinkPadは、大和事業所の有名な"拷問テスト"をクリアできる信頼性を備えている」と製品への自信を語っていた。

チームで運用されているThink製品の様子を紹介したビデオが流されていた。バトン氏とチームを組むドライバーのルイス・ハミルトン氏も出演

そしてドライバーのバトン氏は、F1で勝つためには、「チームで戦うこと」が最も重要であると話す。エンジニアなどチームメートとの情報交換や、情報共有は欠かすことができず、新たに導入されたレノボのシステムがそれを円滑にし、確かにチームの勝利に貢献していることを説明した。なお、今週末は鈴鹿でのF1日本グランプリが控えているというタイミングだが、バトン氏は、「鈴鹿を世界でもトップのサーキット。そして恋人は東京に住んでいて、日本は私の第2の故郷。鈴鹿で勝つことは私にとって大きな意味がある。日本GPでの目標はもちろん"勝利"」と意気込みを語っていた。