2010年5月23日~6月6日に開催された全仏オープンテニスで優勝を果たした、ラファエル・ナダル選手(スペイン)。絶大な人気を誇るカリスマプレーヤーの腕には、試合中に約5,000万円という超高級時計が装着されていた――!? その模様を、仏・ローランギャロスにわたり取材してきた。

ラファエル・ナダル(Rafael Nadal Parera)選手
1986年6月3日生まれ。スペイン・マヨルカ島出身の男子プロテニス選手。2005~08年の全仏オープン男子シングルスで大会4連覇を達成し、08年北京五輪の男子シングルス金メダルを獲得。同年ウィンブルドン、09年全豪でも優勝。6月7日発表の世界ランキングでは、ロジャー・フェデラー(スイス)に代わって約1年ぶりに1位に復帰した。ナダル選手(左)と並ぶのは、リシャール・ミルのオーナー、リシャール・ミル氏

見た目はずっしり感のあるリシャール・ミル「RM027」は、NECが開発したカーボンナノチューブを採用した、ギネス級の超軽量トゥールビヨン(重力補正装置付きウォッチ)。ケース本体は約13g(ストラップ装着時約20g)。13gとは、1円玉わずか13枚分に相当する。また、RM027はグラム単価当たりでも世界一(1g=約250万円!)の高級ウォッチといえる。さらに恐るべき点は、日常使用でも激しいスポーツもOKという耐久性の高さ。

リシャール・ミル「RM027」。今年1月にスイスで開催された国際高級時計見本市(SIHH)に極秘で登場し、最新鋭の素材、技術を駆使し、高級時計の常識を覆す軽さ、耐久性で話題に。国内で5本のみ受注し、価格は4,935万円(予価)。世界50本限定販売で、入荷時期未定

一般的にトゥールビヨンというコンプリケーション(複雑時計)は、繊細な扱いが要求されるものである。ところがトゥールビヨンを含むリシャール・ミル全般の高級ウォッチは、「万一床に落としても壊れず、日常使用に耐える」とされている。それを公式に実証したのが、本作RM027だ。

4,935万円の時計で全7試合をプレー

筆者がフランスに降り立った2010年5月29日午後、テニスの4大世界大会の1つ、全仏オープンのメインコートに、ナダル選手がRM027を右腕に装着して登場。レイトン・ヒューイット選手(オーストラリア)と対戦し、見事6-3、6-4、6-3で圧勝した。

約5,000万円という超高級時計を腕に装着し、プレッシャーはなかったのだろうか? 6月6日の決勝まで全7試合、RM027を装着してプレーしたという

その間、ナダル選手の腕に装着されたRM027は、正確に時を刻み続けていた。奇跡を見た思いだ。ラケットは左手に持つが、強烈なバックハンドは両腕で打ち返す――。今回の試みにより、RM027は最高時速200kmを超えると言われる、テニスプレーの衝撃にも耐えうることが証明されたのだ。試合後、何事もなかったように時計を刻むRM027を、ナダル選手は腕からはずして見せてくれた。

RM027の主な仕様は、キャリバーRM027:手巻きトゥールビヨン・ムーブメント、パワーリザーブ:約48時間、ムーヴメント素材:チタンとリタル合金を併用、可変慣性フリースプラング・テンプ採用、サイズ:縦48mm×横39.70mm×11.85mm、ストラップ無しの重量:約13g