劇的な所要時間の短縮は革命を生む~Parallel Computing

続いてファン氏は、Parallel Computingの話題に移る。

GPGPUにフォーカスし始めたNVIDIAは、2006年にCUDAプラットフォームを発表。その後、上位、下位のグレードを問わず、ほぼ全てのNVIDA製GPUにCUDAの実行ポテンシャルを盛り込んだ。デスクトップPC、ノートPCの区別なく、NVIDIA製GPUであればCUDAアプリケーションの開発が行え、CUDAアプリケーションを走らせることが出来るようにしたのだ。その甲斐あって、現在では1億8,000万個以上のCUDA対応GPUが出荷されたとしており、世界中には9,000人以上のCUDAアプリケーション開発者を生み、いまやCUDAを使ったParalle Computingの授業を行っている大学は世界中の200以上にもなったという。

ファン氏は、世界でもNVIDIAが唯一、Parallel Computing向けの技術開発に数十億を投資している企業であり、この部分においてNVIDIAがトップリーダーであると主張する。

このParallel Computingとは、簡単に言えばGPGPUのメインテーマである、大量のデータに対して並列演算を施し、その結果から、人間にとって価値の高い意味を見出そうとするコンピュータサイエンスだ。これまではスーパーコンピュータでなければ短時間で処理できなかったこのテーマを、普段使っているPCで実現できるようにしたのがGPGPUであり、NVIDIAはこれをCUDAプラットフォームとして提供してきたわけだ。

では、このParallel Computingの進化、高速化は、人々に何をもたらすのだろうか。

ファン氏は、二つのたとえを提示する。

「もし、サンフランシスコからニューヨークまで数時間ではなく3分で行けたなら?」

「もし、米が6カ月でなく2日で育てられて収穫できたなら?」

前者は人間の生活スタイルを変え、輸送の概念が変革し、経済にも大きな影響を与えるだろう。後者は飢餓問題を解決するだろうし、米をエネルギーとした新たな産業を生むかも知れない。

Parallel Computingにおいても同様のことが言えるのだという。

米ジョンズ・ホプキンス大学が研究している河川の洪水時の堤防決壊予測シミュレーションは、Core 2 Duoベースで実行した場合、結果が得られるまでに24日を要するが、これがCUDAベースに実装してGeForce GTX 260で実行させるとわずか4時間でシミュレーションが終了したという。パフォーマンス向上率にして144倍。このパフォーマンスならば充分に災害予測に役立てることが出来る。

パーティクルベースの河川洪水予測シミュレーション

また、米TechniScan社が開発した超音波人体スキャンシステムは、3方向からの超音波照射を360度に対して行って超高品位な人体内映像化を行うものだが、これまでは4CPUクラスタのシステムで数時間かかっていたものが、2基のTESLAベースのシステムに置き換えたことで、わずか30分未満で結果が得られるようになったとという。パフォーマンス向上率にして8倍。これならば、受診したその日に医療的診断を患者に伝えることができ、それは早期治療へと結びつく。X線方式では人体への安全性の問題があって長時間照射が難しいため、現在、この超音波式は高い注目を集めているのだそうだ。

女性の胸のガンの早期発見は難しいとされるが、TechniScanのシステムでは高確率で早期発見が可能だという

この流れをうけて、ファン氏は、次世代アーキテクチャのGPU、開発コードネーム「FERMI」を発表した。