ある結婚適齢期の草食男子を主人公に、「積極性を身につけるために必要なこと」を10回にわたってご紹介する本企画。2回目となる今回は、メールに頼らない会話術を、草食男子の主人公を通してご紹介します。

監修 : 結婚相談所シャルウィ 代表カウンセラー 伊藤小百合さん

1974年4月生まれ。アメリカ留学後に英会話講師、ホテルのフロント業を経て、人のお世話をする仕事に就きたいという思いが強くなり、2005年5月に結婚カウンセラーの資格を取得。2008年4月には神奈川県横浜市に結婚相談所「シャルウィ」を開設した。全国に1,000支部以上を持つ日本ブライダル連盟加盟。男性と女性の専任カウンセラーがそれぞれおり、お見合いやパーティー、オリジナルのセミナーなど様々な婚活方法で成婚までをプロデュースしている。ホームページは「結婚相談所シャルウィ」。

【Vol.2】メールで"会話"をしない


今朝も、だ。

「ごめん! 電車に乗り遅れて、10分くらい遅刻しそう。ホワイトボードの私の出社時間、書き直しておいて!」と、同僚の春子からのメール。週に2回はこのお願いメールが送られてくる。僕は使いっぱしり、か?

とはいえ、無視することもできず「了解」と返信し、ホワイトボードを書き直すため席を立つ。春子からの「ありがとう」というメールにはハートマーク。僕は勘違いなんてしないけど、女の子って軽くこういう絵文字使っちゃうんだよな。女って恐ろしい生き物だ。

翌日、春子からいつものお願いメールが送られてきた。いくらなんでも、腹が立ってきた。もちろん、使いっぱしり、ってことにではない。「今回はやっておくけど、社会人なんだし、ちゃんとしろよな」メールだからいいだろうと、少しキツイ言葉を返した。

ところがそれ以来、春子からのメールがピタっと来なくなった。避けられている……のか? いや、そもそもあっちが悪いんじゃないか。って、結局、春子に振り回されている僕って男としてどうなんだっ。そんなことをウジウジ考えているうちに1週間が経った。

■結婚カウンセラーからのアドバイス

メールには時間や場所を気にせず要件を送ることができるという利便さはありますが、メールでいくら"会話"をしても、互いの理解度は真に深まることはないというデメリットがあることをきちんと理解しておきましょう。いくらメールで「楽しかった」や「ごめんなさい」に絵文字を添えても、相手に真意は伝わらないもの。もちろん、その逆も然りです。メールは要件を伝えるもの、そして大事なことは目を見て話すことを徹底していくことは婚活をする上でも大事なこと。メールにどうしても頼ってしまいがちな消極的性格の持ち主は、ことさら心がけていただきたいものです。

こんな僕も、行動力の無さに嫌気がさして始めた「寄り道奨励週間」(ただの会社帰りの寄り道だけど……)は、ぼちぼち続いている。今夜は気を紛らわすためにも、バーに足を運んだ。職場の上司以外と入ったことのないバーだ。重いドアを開くと、場違いな雰囲気に後悔が押し寄せてくる。席についても、背筋が自然と丸くなる。ああ、ちょっと背伸びし過ぎたか……。そんな弱気も、カクテルを口にした途端、どこかへ飛んでいった。

お酒の力で少しだけ饒舌になった僕は、モテそうなイケメンのバーテンダーに、春子のことを相談してみる。バーテンダーは結構気のいい奴で、「その女性も2日続けて遅刻というのは、もしかしてプライベートで何か悩みがあるのかもしれませんね」と真剣に首をかしげる。そうなのだ、遅刻の理由も聞かずに、頭ごなしに責めるメールを送ってしまったことにも、後悔しているんだ。そして、「直接話してみてはいかがですか?」と言われて納得した。明日、僕から謝ってみようか。……百歩譲ってだ。

■結婚カウンセラーからのアドバイス

人間の表情には、たくさんのことを一瞬にして相手に伝える力があります。とはいえ、いきなり身近な人や気になる女性に試してみるのは勇気が要ること。それなら、いっそのこと自分とは違う世界にいる人とたわいもない会話をしてみてはどうでしょう。バーというのは、一見敷居が高いように思えますが、ちょっとした会話を楽しむにはもってこいの場所。お酒の力で緊張感もほぐれますし、バーテンダーの方に普段は打ち明けにくい話をしてみることで、物事を客観的に見つめなおし、心の整理をすることもできます。

翌日、僕が出社すると、春子はもう来ていた。恐る恐る声を掛けてみる。「お、おはよう。今日は早いんだな……じゃなくて、この前のことなんだけどさ。メールでキツイこと言って、ごめん」。春子は「え? 気にしてないよ。私が悪いんだし」と笑顔で返してきた。「あ~、良かった」。って、なんで僕がほっとしているんだ。「最近、貧血気味でね。昨日、会社帰りに病院へも行ったし、もう大丈夫」と春子。「また、遅刻する時はメールしてこいよ」。って、どこまで僕はお人よしなんだ。でも、話したことで気持ちが一気に晴れる。「いつもありがと! またよろしくね! 」という春子に、調子に乗るなよ、と思いながらも可愛く思えた。でも、女心って面倒臭いなぁ。

■結婚カウンセラーからのアドバイス

異性との会話で大事なのは、目を見て話すこと以外にも、会話の行間などから相手がどう考えているか気遣いながら、感情の意思疎通をすることです。言いにくいことや気恥ずかしいことを伝えるときは、前述したように誰かに話して、相手の対応をみることも有効ですが、携帯電話などの録音機能を利用するという手もあります。ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、伝えようと思っていることを言葉にしてレコーダーに吹き込み、その声を聞いてみましょう。自分は落ち着いているか、言いたいことは伝えられているか確認することが簡単にできるのでお薦めです。

(つづく)