2月27日、都内で映画『スター・トレック』の監督、主演俳優によるプレゼンテーションが行われた。『スター・トレック』と聞いてテレビシリーズ5作品、映画も全部見たスタトレマニアとしては黙っちゃいられない。担当さんに無理矢理ネジ込んでもらって潜入してきましたよ。

スター・トレック映画としては11作目となるこの作品、ファンの間では「ST11」なんて呼ばれているが、これまでの映画と決定的に違うのが、テレビ版オリジナルキャストを一新して、日本では「宇宙大作戦」のタイトルで放送されたオリジナルシリーズの物語以前を描いているところ。まあ「宇宙大作戦」の放映は40年以上も前のことで、オリジナル出演者も何人かは鬼籍に入ってるし、さすがにもう無理って話もあるが。

監督のJ.J.エイブラムス

監督のJ.J.エイブラムスは『LOST』『エイリアス』といった人気テレビドラマのプロデュースや監督、脚本、そして『クローバーフィールド』『M:i:III』の監督で知られる人物。スター・トレックのファンではないことを公言し、監督をするにあたっても「新しいスター・トレックでファンを広げたい」と語っている。ファンとしてはヒジョーに心配なわけですよ。オレらのスター・トレックが台無しにされるんじゃないかって。

とはいえ、「中の人」が中心になって作ってきたこれまでの映画が、興行的にはビミョーなのが多かったのも事実。スター・トレック映画を作るっていうのは、ある意味「火中の栗を拾う」みたいなところもあるワケ。ぶっちゃけ「目的はカネか? 話題集めか?」と勘ぐりつつプレゼンに。

プレゼンは監督自ら実際のシーンを披露しながら映画のコンセプトや撮影の裏話を語るスタイル。自身がスター・トレックにそれほど興味持っていなかったことをあらためてカミングアウトし、「だからこそ、僕のような人間ものめり込んで楽しめる映画にしたかった」とのこと。そのためのエッセンスが「アクション、サスペンス、濃密な人間ドラマ」だそうな。

監督と一緒に来日したのは、主演のカーク船長役、クリス・パインと、今回はヒロイン的立場? のエンタープライズ号通信士ウフーラ役、ゾーイ・サルダナの2人。撮影の苦労談として、パインはアクションが大変だった点を挙げ、サルダナはロミュラン語の通訳シーンと丈の短いスカートに苦労したとのこと(笑)。しかしウフーラ(オイラ的には「ウラ中尉」と言った方がしっくり来る)がお色気担当というのは違和感あるなあ。

『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』などで知られるクリス・パイン(28)

ただ、確かにメインの出演者が全体的に若いこともあって、今回の『スター・トレック』には何というか「花」がある。とくにアクションシーンは、これまでのスタトレ映画によくあった「オッサンどうしの殴り合い」レベルとは別次元だ。

そして監督は最も苦労した点として、これまでの続編映画とは違う「自分たちのスター・トレック」を作りつつ、ジーン・ロッデンベリー(『スター・トレック』の生みの親であるプロデューサー)のスピリッツを汲んだ作品に仕上げたかったところを挙げた。今回の映画の共同脚本家の一人は超『スター・トレック』ファンで、もう一人はまあ知っている程度、そしてプロデューサーは『スター・トレック』をまったく見たことがない。この3人+エイブラムス監督のチームが、絶妙のバランスを生み出しているそうな。目論見どおりに仕上がっているかは今回のプレゼンを見ただけじゃ何とも言えないけど、「結構いいかも」と思ってしまった。昔からのファンにも気は遣ってくれてるみたい。

右の女性がゾーイ・サルダナ(30)。『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』にも出演していた

最後に、今回のプレゼン上映で見つけたファン向けの小ネタをいくつかご紹介しよう。

  • カークが立ち寄ったバーで注文したカクテルが「カーデシア・サンライズ」

カーデシアっていうのは、時代設定的にはかなり後になるテレビシリーズ「Deep Space Nine」に登場する惑星系。惑星連邦黎明期の時代に知られてたのかな?

  • スールーの特技がフェンシング(笑)

日本では「ミスター・カトー」として知られる日系の操舵士。 元ネタは「宇宙大作戦」の「魔の宇宙病」のエピソードだが、別に特技ってわけじゃないだろ!?

  • チェコフがロシア訛りすぎる件について

チェコフも同じくエンタープライズ号乗員でロシア系のちょっと頼りない男。しかしコンピュータも音声認識できないほど訛ってるって(笑)、ロミュラン語より難解かよ?!

  • パイク船長がカッコイイ!

物語はカークがエンタープライズ号船長になるまでの成長物語なので、大半の部分はカークの先代のクリストファー・パイクが船長を務めている。パイクを演じるのはブルース・グリーンウッド。ちょうどCSテレビで「13デイズ」(1962年のキューバ危機を描いた映画、グリーンウッドはケネディ大統領役)を見たところだったので、その印象も混ざってるかもしれないが、ガキばっかりのエンタープライズ号の中で唯一「大人」の雰囲気をもつ頼もしい役どころ。ちょうどパイクとカークとの関係が「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長と古代進みたい。ちなみにJ.J.エイブラムスは「映画を作る際に日本のアニメからもインスピレーションを得た」そうで、このあたりに生きているのかもね。


「新しいスター・トレック像」を掲げながらも「変えたくない部分は守った」と語る監督の本気度を信じるか? オイラは信じたい。『スター・トレック』観たことない人も基礎知識なしで楽しめそうだし、昔からのスタトレファン向けの小ネタは上記のように仕込み済み。食わず嫌いせず観に行ってもいいんじゃないかな。

貴重な劇中写真!

『スター・トレック』は5月29日(金)より丸の内ルーブル他全国ロードショー。

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