ユーザー層に合わせ機能も細分、コミュニティは今後活性化


――矢継ぎ早に続々と新サービスが投入されていますが、それを知らないユーザーもかなりいるのではないでしょうか。動画が見られる、コメントが書けるという以外の機能を、もっと使ってもらいたいとは思いませんか。

夏野 ユーザーインタフェースの部分はまだまだ良くしていかないといけないでしょうね。ただ、「ニコニコ生放送」のようにドーンと打ち出す新しい機能はありますけど、もともとすごく使いこなしている人だけが使えばいい機能もあります。すべての人がすべての機能を使いこなすということはあり得ませんから。

ひろゆき 再生するだけといっても、例えばタグ付けとか、マイリストとかはかなり使われています。「ニコニコ大百科」も、有名なタグはだいたいフォローできていると思います。ユーザー生放送も好評で。

夏野 ユーザー生放送はすごく好調で、ヘビーユーザーはそういう機能をどんどん使いこなしてます。逆にこれから入って来られる1,000万人の方で、ユーザー生放送をいきなり自分でやりますという人はあんまりいないかもしれません。でも公式動画を見るとか、ニコニコチャンネルにコメントを付けるとかだけでも相当面白いですから。

――「コミュニティ」機能は、活発に使われてきたと思いますか。

ひろゆき まだまだこれからですね。これまでは、コミュニティに入った後にコミュニケーションをする必然性があまりなかったんですよ。最初は掲示板もなかったし、今は掲示板ができたけど書き込んでもなかなか他の人に伝わらない。ただ、生放送が始まったので、あとメール通知とかの機能が入ればコミュニティも活発に使われるようになるんじゃないかなとは思ってるんですけど。当初はコミュニティ機能のスタート時からもう少したくさん機能が入る予定だったんですけど、開発リソース不足で遅れていまして。

今後コミュニティに追加していく機能は、動画を見る人よりも作る人の使い勝手を意識したものにしていこうかとも思っています。「俺は映像やるよ」「僕は音やるよ」と協力しあって動画を作れる。制作スキルはなくても「じゃあ俺がコメント管理やりますよ」と言って管理面を手伝うこともできる。コミュニティは、そういう共同作業ができるスペースという位置づけになっていくのかなと。見る人は今まで通り、動画を見てコメントを書いて面白かった、というだけでも全然かまわないと思います。

ニコニコ動画出身のクリエイターやアーティストが増えてますが、これはドワンゴ的メリットはあまりないんですけど、僕的には面白いことだし、必要なことだと思ってるんですよね。人が大勢集まってみんながやりとりをしていたら、必ず面白いものが生まれるはずなんですけど、一時期流行った2ちゃんねるやブログの書籍化も一段落して、あとは携帯小説か、mixiからちょっと出ているくらいしかない。何でコミュニティをやってるほかのサービスからはもっと出ないんだろう、と思うことが最近よくあります。

――これまでWebサービスのビジネスモデルでは、「うちのサイトのユーザーはこれだけセグメント化できてます」と言って、細分化されたユーザー属性を売り物にすることが多かったように思いますが、新サービスの「ニコニコ広場」は、むしろその逆を行く考え方ですね。

夏野 ギュッと集める感じですね。まぁ、ヒマしてるときとか、人恋しいときとかにみんながいつも集まっているところがほしいという、それだけのことですけどね。

ひろゆき ニコ動は(特定の狭い関心分野の中で盛り上がる)タコツボ的な場をいっぱい作ってきましたからね。だからその一方で、広く浅くの人を集めてしまうところも作ろうと。これも、いろいろな方向性をやってみるという中のひとつですね。

夏野 ニコ動はユーザーによって世界観が決まってしまっていたというか、「自分はアニメが好きだからアニメ関連の動画ばっかり見る」といって自分の居場所を見つけると、他で何をやってるのかわからなくなってしまう。せっかく自分の好きな内容の生放送をやっているかもしれないのに、気付かなくなってしまう。それに気付いてもらうという場でもあるんです。

ひろゆき ただ、広場もコミュニティと一緒で今はまだ理念が先行している状態で、機能の実装が足りないままのリリースなので、最初はそんなに盛り上がらないかなと、僕は思ってますけど(笑)。