CSの洋画専門チャンネル「ザ・シネマ」は、12月に「世界三大ファンタジー特集」と題して、大作ファンタジー映画を放送する。

ラインナップは『ナルニア国物語 / 第1章:ライオンと魔女』『ロード・オブ・ザ・リング』『ロード・オブ・ザ・リング / 二つの塔』『ロード・オブ・ザ・リング / 王の帰還』『ゲド / 戦いのはじまり (前編)』『ゲド / 戦いのはじまり (後編)』『リンガーズ ~ロード・オブ・ザ・ファンズ~』という7作品。

『ナルニア国物語』『ロード・オブ・ザ・リング』『ゲド戦記』という傑作ファンタジーの映像化作品を1カ月にまとめて放送するのは、今回が日本初の試み。なかでも祝日となる12月23日には、朝9時から翌日深夜3時までの、18時間半にも及ぶ一挙放送が敢行される。字幕版での放送はもちろん、吹き替え版の放送も行われるので、吹き替えを楽しみたい場合や、家族で見る際にはそちらも活用したい。各作品複数回のリピート放送が行われるので、詳しい放送スケジュールは、チャンネル公式サイトの番組表で確認してほしい。

今回のナビゲート特番の司会を務める池澤春菜。アニメでは『ケロロ軍曹』『マリア様がみてる』といった作品で活躍中

今回のファンタジー特集にあたり、特別番組『世界三大ファンタジースペシャル すべてのファンタジーは、この三つの物語から始まった!』が制作され、番組のナビゲーターを務める女優・声優の池澤春菜が、プレス向けに会見を行った。

文学一家に生まれたこともあり、いまでも年に読む本はおよそ500冊という愛書家の池澤。今回放送される三大ファンタジー作品についても、思い入れたっぷりに語ってくれた。特別番組では語りきれなかったアウトテイクとして、以下にそのコメントを紹介しておきたい。


■特番の司会にあたって
今回ファンタジー特集の案内役を務めさせていただくことになりました。もともとこの3本の作品は小学校低学年ぐらいから繰り返し読んでまして、この3本がなかったら多感な子供時代を無事に過ごせたかどうかわからないぐらい大きな影響を受けた作品です。そんな壮大な世界がいまの技術で映像として見ることができるのはすばらしいことだと思います。まだ作品をご存知ない方には「こんなにすごいんだよ! 」とちょっと嫌がられるほどに(笑)、熱く伝えたいなと思っております。

今回放送される『ナルニア国物語 / 第1章 : ライオンと魔女』。今年も第2章が劇場公開されるなど、現在も映像化が続々と進行中の作品。
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■『ナルニア国物語』について
『ナルニア国物語』に関しては作者のC・S・ルイスさんがキリスト教の世界観をベースにして描いているので、3つの作品のなかでは一番わかりやすい勧善懲悪ものなんですね。全編を通して作者の「人間は基本的に善なんだ」というまっすぐな思いがあるのが私は大好きで、私にとっての幸せなものや暖かいもの、そんなものが全部詰まっている作品です。動物たちがしゃべったりとか、木が動き出したりするので、「あの犬、本当はしゃべるんじゃないかしら?」と新しい目で世界を見ることができる作品だと思います。好きなキャラクターは大人になってからのカスピアンですね。あと実は恥ずかしいんですが、吹き替え版の声優オーディションに応募したんです。一般の人たちが電話でセリフを吹き込む形式で、私はルーシーのセリフをブルブル震えながら吹き込んだんですが玉砕しました。選ばれたのはみんな子役さんだったので、たぶん大人が入っちゃいけない世界だったんだと思います(笑)。


■『ロード・オブ・ザ・リング』(=『指環物語』)について
私は活字中毒なので、まず本の分厚さに「こんなにいっぱいある!」とときめきました。読んでも読んでも終わらない、注釈や世界観といった補講の部分がすごくあるので、とにかくそのボリューム感が幸せでした。子ども心にもわからないぐらいの深いお話だったので、だんだん読んでいくうちに世界の成り立ちや歴史が頭に入ってきて、だんだん自分のなかに作品の舞台の中つ国ができていく様子が楽しかったです。じつは私の初恋の人は原作の馳夫(はせお)さん、アラゴルンなんです。そのせいでその後もちょっと浮世離れした人に魅かれるようになってしまいました(笑)。実写のアラゴルンもかっこいいですね。甘いタイプの二枚目じゃないところがいいです。ほかにもガンダルフとガンダルフの馬(=飛蔭)にも萌えてました(笑)。

映画『ロード・オブ・ザ・リング』3部作を一挙放送。ファンタジー小説の名作を最新の技術で映像化するきっかけとなった、まさに記念碑的作品だ
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ちょっと変わり種のプログラムはこちら。全世界の『指環物語』ファンのディープな世界を追ったドキュメンタリー『リンガーズ ~ロード・オブ・ザ・ファンズ~』


原作の『ゲド戦記』を噛み砕いて娯楽性を強めた『ゲド / 戦いのはじまり』。アメリカのSci-Fiチャンネルで2004年に放送されたテレビ向けムービー
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■『ゲド戦記』について
『ゲド戦記』は作者のフェミニズム性だったりとか、美しくないもののなかにも美しいものがある、そういう善と悪が交じり合ったなかから自分の道をそれぞれが探していかなきゃいけない複雑さを描いている作品なので、子どものときは読んでも本当の深いところまで理解できなかったと思うんです。作品では何十年にも渡る物語なので、最初の第1巻の青年ゲドを読んでいた者としては、第3巻の熟年のゲドを見るのはちょっと寂しかったりもするんですけど、「ひとりの人間がこういうふうに変わっていくんだ」ということを描いてくれる物語って少ないと思うんですよね。それを子どものときに読むことで、「大人になっていくってこういうことなのかな」というのがちょっとわかった気がします。好きなキャラクターは第2巻の『こわれた腕輪』のころのちょっとダメ親父なゲドですね。


■視聴者に向けて
架空のファンタジー世界に抵抗がある人もいるかもしれませんが、外国の文化に接するのとそんなに変わらないと思うので、食わず嫌いをせずに見ていただければと思います。子どもはもちろんですが、むしろ大人にこそ見ていただきたいですね。例えば原作の『指環物語』を読もうと思ったらお正月休みを丸々使っちゃうほどですけど、映画なら2~3時間ずつ見ることができるので、まずは映画から入って、そこからじっくり原作に取り組むのもアリなんじゃないかと思います。話題作ばかりなので、このなかのどれかを見たことがある人は多いと思いますが、全部見た方は少ないと思うんですね。今回はフルコースでご用意したので、年末年始のお休みを使って、それぞれの世界観にどっぷりと浸っていただければと思います。

池澤春菜が司会を務める特別番組『世界三大ファンタジースペシャル すべてのファンタジーは、この三つの物語から始まった!』は、12月1日より放送スタート。12月から1月にかけての特集期間中に何度もリピート放送されるので、こちらも公式サイトの番組表で放送スケジュールをチェックしてほしい。またザ・シネマの公式ブログでは池澤本人による特別寄稿も読むことができるので、そちらも要チェック。今年の年末年始は壮大な三大ファンタジーの世界に旅立ってみてはいかがだろうか。